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第11回「聖歌の中に立つ神は」

 僕はプラムとチャンドリカを連れて塔に登った。

 報告にあった通り、アクスヴィル聖王国の旗がいくつも翻っているのが見える。


「街道を進軍してくる主軍。あれだけでも数が多いが、森の中を別働隊も動いていると見ていいだろう。騎兵もいるようだが、厄介なのは砲兵と魔法兵だね。攻城をメインに考えつつ、野戦にも対応できる布陣だ」


 多くの戦場において勝敗を決するのは、間接攻撃力であることが多い。これは何も戦争に限らず、小規模な戦闘においても同じだ。例えば、勇者たちをモンスターが取り囲んだとする。このモンスターが力で平押しするだけの脳みそ筋肉野郎だけなら、せいぜい一対一で耐え抜けばいい。

 しかし、前面の肉壁を囮にして、後方から魔法の援護があったとしたらどうだろう。空からは火の玉が降り注ぎ、大地からは氷の刃が突き出てくる。さらには力で押してくる者たちの能力も補助魔法で強化できる。恐るべき力と知恵の二重奏だ。

 この点において、アクスヴィル聖王国の軍は非常に脅威的であると評価を下すことができた。彼らは行軍も統制が取れていたし、いざという時にも落ち着いて対処を行うだろう。


「神、勝てるか」

「勝つとも、プラム」


 その上でなお、僕は負ける気がしなかった。


「でも、あんなにいるっすよ……」

「僕が本気を出せば、この城の周りの森林ごとまとめて吹き飛ばすことが可能だ。可能だが、それは上手くない。なぜなら、戦後が面倒になるからだ。僕の本気は最後の策として取っておかなければならないわけだが、理由はわかるかな」

「恐怖は人を支配もするが、団結もさせる。破壊神の誕生ともなれば、より一層、人類社会は排外的になり、付け入る隙を与えなくなるだろう。それは神が参戦していない戦場でも同じこと。人類が完全に団結してしまえば、王といえども苦戦することは必至だ」


 プラムの速やかで的確な回答に、僕は満足を覚えた。


「いい答えだ。そう、僕らは人間の『浅ましさ』を最大限に利用しなくてはならない。相手に結束させる理由を与えてはいけない。だから、ここでは、そして以降も、僕は裏方に徹する。チャンドリカ、君がこの勝負に勝つんだ」


 強い風が吹いた。

 それは自然の音とは異なる旋律を届けてきた。


「ああっ、聖歌が聞こえるっす」


 チャンドリカは震えていた。これまでに目にしたこともない大軍なのだろう。しょせん、これまでこの城に攻め寄せてきたのは、小領主が関の山だったに違いない。


「意気は軒昂、士気は上々。上手いことあしらわないと、一気に攻め滅ぼされてしまうね。でも、大丈夫だ。やつらの神はいつだって信じる者を見殺しにするが、僕は今ここにいる。ちょっとだけ勝つか、それなりに勝つか、完璧に勝つかだ。そして、僕は完璧に勝ちたい。何しろ、負けず嫌いなんでね」


 僕は迫る敵軍に背を向け、再び城内へと戻った。

 見物の時間は終わった。破壊の時間だ。

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