第5.5話 『襲撃後の襲撃前?!』
第5.5話 『 襲撃後の襲撃前?! 』
前回の襲撃から2日後・・・
襲撃から2日が過ぎ,次第に落ち着きを取り戻し始めた頃,
『北東の森より多数のゴブリンの群れ確認!半日中にはポーン村へ到達せり!』
突然そう報告が入ったのだった・・・。
「翔さん!聞きましたかっ?」
レナが血相を変えて翔の所にやってきた。
「ん?ああ,聞いたよ,ゴブリンが来るみたいだな・・・。」
だというのに翔は落ち着き払った様子でそう言った。
「何を落ち着いているんですか!半日で来るらしいんです,どうしましょう?」
「どうするもこうするも,村を守るなら戦うしかないだろう?」
質問に質問で返され,レナは一瞬言葉に詰まったが,
「それはそうですけどっ,この村の防衛隊の人達じゃとてもじゃないけど無理な量ですよ,100匹なんて・・・。」
「・・・まぁ,騒いでも変わることじゃないからな,それに俺達が戦えばなんとかなる数字だろ。」
確かに翔の言うことは最もなのだが,残念ながら頭に血が上ったレナには諦めているように聞えたようである。
「私達が?無理に決まってるでしょう,私達の力なんてゴブリンに通じるはずが無い!」
「いや,大丈夫だ,剣とかで傷つくなら魔法でも何とかなるはずだ。いざとなれば魔導具を使えば良いしな。」
「そんな簡単に言わないで下さい,私は魔導具を隠しているんですよ?」
「だが使わないとこの戦い,負けることになるかも知れない。」
「・・・」
無言になるレナ,さすがに自分の暮らしてきた村が襲われる,しかも勝てないかもしれないと言われては即決することは出来なかった。
「・・・まっ,いざとなったら50匹ぐらいなら俺が何とかするさっ,それをする力ぐらいはあるからな。」
「?!?!?!」
レナは驚いた,それはもう驚いた,まさかそんなことを翔が言い出すとは思っていなかったようである。
「まっ,残り50匹はレナたちにたちが相手することになるが,な。」
「・・・分かった,わ・・・。」
レナはまだ釈然としないようだが一応納得したようにそう返事をした。
「さて,と,じゃ筋トレにでも行って来ますかね。」
そういって翔は裏山へと消えていった・・・。
それから半日,正午・・・
『ゴブリン先鋒隊,確認!』
その報告が入った時,村中に衝撃が走った。
村の人々が錯乱し,一斉に村の南西,避難所となった広場へとながれこんでいく。
「みっ,皆さん!落ち着いて下さい!」
村長と思われる男がそう叫んでいるが残念ながら全く効果が無いようだった。
その頃,守衛隊本部では・・・
「隊長!ゴブリンの奴らがやってきました!出動を!」
一人の男が本部へと駆け込んでいた。
「ああ,分かっている,今用意をしているところだ。」
落ち着き払った様子でブラットは返答をした,のだが
「何をそんな落ち着いているんだ!奴らをどうにかしないと俺たちの村は無くなるんだぞ!」
どうやら男はブラットの落ち着き払った態度が気に入らなかったようである。
まぁ,普通の人間の正常な反応とも言えるのだが・・・。
「そういきり立つな,大体今見えているのは先鋒隊だろ?」
「そ,それがどうした!貴様らはこういうときのためにいるのだろう!さっさと片付けてこい!」
事実を突きつけられれば人間誰もが腹を立てるものである。
「・・・分かったよ,おい,みんな!行くぞ!」
ブラットは男を説得することを諦めた。
そこへ
「しつれいしま〜す,ブラットさんいますか〜?」
妙に間延びした声が本部に響き渡る。
「・・・レナ,もう少し何とかならないのか?」
声をかけた少女の横に立つ青年がそう言った。
「ん?何がです,翔さん?」
少女は意味が分からない,とでも言いたそうな顔で問いかけた。
「・・・もう良い。」
翔さんと呼ばれた青年は少女をとがめるのを諦めたようである。
そこへ
「あ,お二人さん,久しぶりだな。」
ブラットが声をかけた。
「あ,どうも。」
「こんにちは。」
2人は異口同音にそう言うと,
「私達から提案があるんです。」