第9話 『魔剣 〜 闇華 〜 の力』
第9話 『 魔剣 〜 闇華 〜 の力 』
翔は駆ける,無数のゴブリンへと向かって。
それは人間の常識を超えた速度。
しかしゴブリン達は驚きもせず逃げもせず,翔へと歩を進めていくのだった・・・。
(・・・あのさ)
ゴブリンとの距離が100メートルをきったその時,翔が闇華へと声を掛けた。
(・・・ん?)
(正直20体前後のゴブリンを俺一人で倒せると思うか?)
正直な所,翔はレナにああ言ったものの自分の力でその全てを倒せるのか,不安で仕方が無かったのだった。
ついさっきまで普通の高校生をしていた翔にとって,当然の反応であるといえば当然なのだが。
(・・・貴方が途轍もないミスをしない限り楽に勝てる相手。)
翔の本音はしかしすぐさま闇華に一蹴された。
(何故そう言いきれる?)
(・・・いい?私は魔導具,それも第零級の。そんな私を持つ者がたった20体のゴブリンにやられるわけが無い。)
ゴブリンとの距離,50メートル。
(・・・・・)
翔はそう断言され,次の言葉を失ったようである。
大人しくゴブリンへと向かって駆けて行った。
・
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(・・・で,どうするんだ?)
ゴブリンの群の前へ立ちはだかると,翔は面倒くさそうな口調でそう言った。
(・・・好きなようにやったらいい,って言うかこの群に向かって私を振ればことは足りると思う。)
闇華言葉に翔は怪訝な顔でこう言った。
(・・・どういうことだ?)
(・・・やってみたらわかる,振る前にこう唱えて『起刃』と。)
「・・・『起刃』」
翔が怪訝な様子でそう唱えたその時!
ブ,ブゥゥゥゥン
翔が持つその身長程もある大剣が薄く光りだした。
その光はきれいな,幻想的なものなのだが,何故か見るものを不安にするのだった・・・。
「こ,これは?」
翔は闇華の突然の変化に驚いたようで,声に出してそう言った。
もっとも,それを不審に思う者はこの場には居ないのだが・・・。
ゴブリンたちにとって人間は破壊する,いや,殺す対象でしかないのだろう,翔のその様子を見ても全身をやめる事は無かった。
(・・・いいから振りなさい,それで全てが分かる。)
(・・・分かったよ。)
翔はどこか釈然としない様子だったが,いわれた通り,大剣に力を込めるのだった。
・・・もっとも力とは『魔法力』のことなのだが。
「いくぞ!」
翔はその大剣を両手で構え,ゴブリンではなく,自分自身に言い聞かせるかのようにそう言った。
その大剣の光は構えることにより,次第に眩い光へと変わっていった。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
ズッガッァァァァァァン!
翔がその大剣を横薙ぎに振るった瞬間!
信じられないような地響きとともに地面が割れ,空気が揺れた。
辺りには土埃が舞い,1メートル先も目視できない程だった。
「・・・・・・」
そんな中,たった一人驚愕の表情でたっている者がいた・・・。
この現象を起こした張本人,龍崎 翔 である。
とはいっても翔本人,その現象に驚きを隠せないようだったが。
「・・・いったいなんなんだ,この破壊力は・・・。」
(・・・だから言ったでしょう,私の力なら一瞬で片付くと。)
「いったい何なんだ?あの破壊力,地形が変わっちまったじゃないか。」
と翔は一部的の外れた事を言い,しかし表情は真剣そのものでこう言った。
「あの光はなんなんだ?」
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・
〜 レナside 〜
翔さんに此処に居ろって言われてしまいました・・・。
その気持ちは嬉しいんですけど,大丈夫でしょうか?
あの数を一人で相手にするのは王国の騎士でも難しいはずです・・・。
出来たとしても必ず長期戦になる・・・。
(・・・仕方があるまい・・・,レナに出来るのはここまでだ。)
わっ,びっくりしました,だって『効銃(補助)』(以下『補』)から話し掛けられることなんて今までほとんど無かったもので・・・。
(レナはまさかあの男を信じておらぬのか?)
(そ,そんなこと無いにきまってるでしょう!)
そんなこと絶対にありません・・・。
私は信じています。
(ならば心配などしなくてもいい,奴は出来ると言った,それを信じよ・・・。)
(・・・そうですね。)
そんなこと,私も分かってるんです・・・。
でも,翔さんが頑張ってるのに私だけ休んでるなんて・・・,自分の無力さが嫌になります・・・。
(大丈夫だ,それに奴の魔導具は・・・,否,これは言う必要は無い,か・・・。)
?
『補』がこんな歯切れの悪い言い方をするなんて・・・,何があったんでしょうか?
(ね,『攻』に変わってくれません?)
あ,ちなみに今しゃべってるのは『補』ね,彼は補助系の力を持ってるの。
『攻』って言うのは攻撃系の力を持ってるの。
『攻』は少し前にも出てきましたよね。
(・・・言いづらいんだがの・・・,今寝ておるみたいじゃ・・・。)
・・・まさか寝ているとは思いませんでした。
ではこの質問はまた今度にしましょう。
(有難うございます,ここで待つことにします。)
そう言うと,頭の中に在った『補』の意識が消えていくのが分かった。
そのときである。
ズッガッァァァァァァン!
翔さんのいた所で大きな音とともに岩が突き出てきました。
いったいなんなんでしょう?
それよりも,翔さんは大丈夫なんでしょうか?
結局私は居てもたっても居られず,翔さんの居る所・・・,正確には居た所付近へと掛けていくのだった・・・。