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第8話 『初 陣』

第8話 『 初 陣 』



〜 レナside 〜


(翔さんが虚空に向かって手のひらを向ける・・・。

これは彼独特の魔法の唱え方・・・。

とても珍しい,でも私の好きな唱え方・・・。)


翔に魔法を唱えるように言われたレナだったが呆然と翔の方を見ながらそんなことを考えていた。

確かにこの世界では目標に手を向けながら魔法を唱える魔術師はいない。

手を向けることによって攻撃範囲が制限されるからだ。

実際,翔はゲームやマンガの真似をしているだけなのだが当然,レナはその事実を知らない。


「おい,レナ!早く唱えろ!」


レナの様子に気づいたのか,翔がレナにそう言った。


「は,はい!」


自分の失態に気づいたレナが,少し顔を赤くしながらそう答えた。

翔は少し怪訝な様子でレナを見たが,すぐに気を取り直したようだった。


(と,とりあえず何か唱えないと!)


「炎の精霊よ,その力をもって,我が敵を討て!」


レナは自分が混乱していることを感じながら,しかししっかりと詠唱を終えた。


ファイヤーボール!


レナの詠唱によって無数の火の玉がゴブリン達に襲いかかった・・・。

その様子はどこか



〜 本ルート 〜


レナが1度目の詠唱を始めた時,


(いったい何があったんだろうな・・・。)


翔はこんな時にそんなことを考えていたとか。


全くといって良いほど緊張感を持っていない翔だった。


(さて,と。始めるか。)


翔はそう考えると,2度目の詠唱へと移ったのだった。


「大気に満ちあふれる数多の精霊達よ!寄り集まりて神の力となり,彼の者を撃て!」


ライトニングストーム!


雷系中級魔法,「ライトニングストーム」その威力の強さから使えるものが少ないとされている魔法である。


無数の光の筋がゴブリンたちを襲う。


(ねえ,せっかく闇華があるんだから使ってみたら?)


(ん?・・・ああ,そうだな。)


そう光華と会話を交すと,翔は詠唱を止め一番大きな群れへと斬り込んで行った・・・。





〜 レナ side 〜


ズガァァ―ンッ !


また私の放った無数の火球が,周囲の酸素を巻き込みながらゴブリンの群れへと突っ込んだ。

もうこれで5発目・・・。

初め約50匹いたゴブリン達もその半数へと数を減らしていた。


「あっ,そろそろ限界かも・・・。」


私にも欠点はある・・・。

確かに魔法を使うことは出来るが,魔法力は決して多いほうではないのである。

私はそんなことを考えながら翔さんの方へと視線を巡らせた。


龍崎 翔 と名乗った青年は今も中級魔法を連発している。

『中級魔法』・・・それは名前こそ『中級』とされているが,その魔法は実際物理攻撃魔法の中では最高ランクの威力を誇る。

上級と呼ばれるそれは,ほとんどが神話の中で神々が使ったとされる魔法の事を指す・・・。

つまり今翔さんが使っている魔法は,本来なら連発することなど到底不可能な代物だということに他ならない。

しかし翔さんは何の苦もなさそうにそれを連発している・・・。

恥ずかしながら翔さんよりも私のほうが先に魔法力が底をつくことになりそうだった・・・。




〜 本ルート 〜


(・・・後20匹前後か,このままでも何とかならない数字ではないな。)


翔は自分の魔法量とレナの魔法量に対して大きな差は無いと考えていた。

実際はとんでもない話である。

魔導具の与える恩恵に『魔力』があるのは前に説明したと思う。

しかし,実際にいくつもの確認例がある『第3級魔導具』と今まで1つしか確認されてない(翔のを入れれば2つ目であるが)『第零級魔導具』との魔力の差が同じなわけが無いのである。

しかし翔はその知識をもっているはずがない。

だからこそこのような思い込みをしているのだろうが・・・。


(・・・ねぇ,翔)


(!?・・・ん?)


突然の闇華の問いかけに翔は一瞬驚いた表情を見せたが,すぐに聞き返した。


(・・・あの娘,魔力が尽きかけてる。)


(!!!なっ,なんだって!?)


(・・・だから,魔力が尽きかけてる,魔法の使いすぎで。)


これには翔も驚きを隠せない。

自分は大丈夫なのに何故?

という疑問が頭の中にあることだろう。


(っそ,そういえば・・・,前に『光華』に言われた覚えがある・・・。)


魔法はね,魔法力って言う力を使うの。そして魔導具って言うのは精神力を使うのよ。

まぁ,貴方の場合はどちらも並外れた量があるみたいだからあまり気にしなくてもいいけど。


(・・・思い出した?)


(ああ・・・,思い出した。だがそうだとするともうレナは戦闘には参加できないな・・・。)


(・・・何か心配なことでも?)


(いや,どうやってこいつらを倒そうかと考えてるんだ。)


(・・・・・・私を使ったらいいでしょう?この程度の敵,一瞬で殲滅できるわよ。)


(マジッ?まだ20匹ぐらい残ってるぜ?)


(・・・・・・貴方は私を馬鹿にしてるの?何故私が『魔剣』と呼ばれるのか見せてあげるわ。)


何故か闇華はやる気満々のようだった。


(・・・分かった,じゃあ頼むよ。)


実際闇華を振るうのは翔本人なので,はたから見るとかなり滑稽なものがあるのだが,翔自身は気づいていない。

まったく,残念なことである。


「翔さん!もう魔法力が・・・。」


ちょうどその時,レナが自身の限界を嘆くように翔へとそう告げた。

その表情には不安と,申し訳なさが同居しているようだった。


「分かった,じゃあレナは休憩していてくれ。俺が奴らを殲滅する。」


「え?で,でも・・・」


「じゃ,あとはゆっくり休んでいなよ!」


レナが何かを言おうとしていたが翔はそれにかまわず,ゴブリンの群れへと駆けていった・・・。

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