第6.5話 『レナの独白』
第6.5話 『 レナの独白 』
2人は道を歩く・・・。
言葉は無く,意思を示す行動も無い。
村の門をくぐる。
ある生物を殺す為・・・。
村を守る為・・・。
たとえその行動が自分のためにならなかったとしても・・・。
2人は歩く・・・。
門をくぐり,戦いやすそうな場所を見つけた2人は倒木へと腰掛けていた。
「あの・・・,やっぱり,驚きました?」
「・・・まぁ,な。」
翔の言う『驚いた』というのはそれを自分に気づかせなかったことに対してである。
「・・・私も直接怖がられているって言われたことは無いんですよ・・・,でもなにかおかしいと思っていたんです・・・。」
それはレナの独白だった。
今まで過ごしてきた村の人々に畏怖や恐怖を抱かれていたことが彼女にとって重荷となっているようだった。
「まぁ,気にすることじゃ無いんじゃないか?人なんて自分と違う所があれば畏怖を感じるものだからな・・・。」
レナはまさか翔にそんなことを言われると思っていなかったのだろう,心底驚いたような顔でこう言った。
「・・・そう,です,か。」
いつしかレナの声は震え,俯いていた。
「・・・まぁ,俺もレナほどではないが少しは経験あるからな・・・。」
これも翔から聞くとは思っていなかったのだろう,レナはまたしても驚いたようにそう言い,
(聞くべきじゃないんでしょうけど・・・,知りたい。)
レナは好奇心に勝てなかった様にこう言った。
「・・・一体何があったんです?」
「ははは,誰にも話したく無かったんだけど・・・,レナの話も聞いたからな,教えてあげるよ。」
「自惚れるわけじゃないけど俺は結構女性に縁があってね・・・,そのことで学校中の男たちに無視された事があった。
まぁ,簡単に言うと苛められてたんだろうね,いきなり呼び出されて殴られたこともあったよ・・・。」
レナは初めて聞く翔の身の上話に興味深々な様子でその話に聞き入っていた。
「それからしばらくして,さすがに腹が立ってね・・・,ケンカしたんだよ。結果から言えば勝ったんだけど,10人全員病院送りにしちゃって・・・。
それから畏怖と恐怖の目で見られるようになったんだ・・・。」
翔もレナと同じく独白するかのように話した。
「だけど1人だけそうしない人がいてね,今は親友なんだけどその時は全く知らなかったんだ・・・。だからレナよりはマシだったかな・・・。」
余談だが,翔の言う『そうしなかった人』というのは最近出番の無い(当然といえば当然だが)夏目 明良 である。
「・・・そうだったんですか。」
「レナにはそんな人がいなかったんだろ?俺がその友人になってやるよ。」
翔にとっては少し恥ずかしい,程度の言葉だったのだろう・・・。
しかしレナがこの言葉によってどれほど救われたか,翔は気づいていない。
「あ,ありがとう,ございます・・・。」
「おう。///」
翔も今頃恥ずかしくなってきたようで,少し顔をレナから反らした。
なんといってもレナは特S級の美少女なのである,この反応は当然だと言えるだろう。
「さて,と,来たみたいだな。」
「あ,そうみたいですね。翔さん」
「ん?」
「ありがとうございます♪」
「あはは,いいよ。あ,じゃあさ,1つ手伝ってくれる?」
「いいですよ」
レナは即答した,自分の『友達が欲しい』という願いがかなったのだから翔の願いも聞かなくては不公平だと思ったのだろう。
「あはは,内容を聞かなくてもいいのかい?」
「ふふふ,大丈夫です。」
「そっか,じゃ,とりあえずこいつらを倒さないとね。」
翔はそういうとゴブリンの群れへと身体を向けたのだった・・・。