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プロローグ

何故かわからないんですがはじめ11話程度までシリアス風味に仕上がってしまいました・・・。

今後コメディにする予定ですのであしからず・・・。

〜 プロローグ 〜


 



「♪〜♪〜〜〜♪」


鳥達の心地よい鳴き声が響く。


木々はわずかに揺れ,緩やかな流れに誘われ・・・。


窓からの太陽の光が,この部屋の雰囲気をどこかやわらかなものに醸し出しているのだった・・・。


夏休みが終わり9月,いまだ夏休み気分が抜けないクラスメイトたち。


そこには1人ウトウトと机に突っ伏し,眠っている少年の姿があった。


「――――――――」


何処からとも無く,この雰囲気をぶち壊すであろう声が聞えている。


否,ぶち壊す男の声が,である。


「うぅ〜ん・・・。」


眠そうに目を擦りながらその少年はマヌケなうめき声を上げた。


その姿を眺めながら肩を震わせている男が一人・・・。


「龍・崎・君!私の授業中に眠るとはいい度胸してますね・・・。」


・・・ちなみにここは私立陽青高等学校,1年4組の教室である・・・。


私立陽青高等学校,元商業高校であり,100年もの歴史を持つ祐所正しき学校である。


とはいえ,回りには住宅地が広がり,歩いて5分もすれば駅が見えてくるという普通の高校と大して違いは無いのであるが・・・。


少し異なるところは,この高校の文化祭,通称『妖精祭』は高校だけでなく,商店街などの周辺をも巻き込んだ一大イベントとなっていることだろう。


「っわ,先生!すみません!ついウトウトと・・・。」


こういうとき当然のように友人達は見て見ぬ振りである。


そしてその判断は絶対的に正しい。


嘆かわしいことではあるのだが・・・。


ちなみにこの少年,龍崎 翔 (りゅうざき しょう) という。


スッと伸びる眉,目は黒と言うよりも漆黒,肩まで伸びた髪は後ろで無造作に纏めている。


俗に言う美男子と言うやつである。


しかし何処にでもいる美男子と言うわけではない,この少年只者ならぬ雰囲気を醸し出している,・・・のだが,残念ながら本人にその自覚はない。


いつも寝ている割に学力は上の上を維持し続けている。


授業中に昼寝をすることを何よりの至福とする,少し変わった少年でもあった。


「・・・後で職員室まできなさい。」


先生と呼ばれた中年の男はあきれたようにこう言い放った。


ここまでの説明を聞いているとこの教師が無能であるかのように聞えるかもしれないが,そのようなことは無く,腕利きと評判で生徒達からの支持も熱い模範とも言うべき教師である。


普通の生徒には注意して終わりであるはずだった・・・,のだが,さすがに連続10回も自分の授業で寝られてはそうも言ってられないようである。


「せ,先生,それだけは勘弁してください・・・,寝る時間が・・・。」


性懲りも無く翔はこの教師にとっての禁句を言ってのけた。


クラスメイトたちに緊張が走る,翔の周辺の生徒はその逆の方へ身体をそむけ,それ以外の生徒は我関せずというように顔を背ける。


バン!


クラスメイトたちが弾かれたかのように翔と教師のほうへ振り向いた。


(・・・なんだ,この教師。テストでいい結果を残してんだからいいじゃねえか。)


翔は思う。


それが顔に出たのかは定かではないが,教師の顔が照れでは無く,憤怒で赤く染まっていった。


翔は本当に理由が分からないと言ったように顔を傾げる。


(いつもは「テストでいい結果を出せ!」と言ってるくせに,いい結果を出している者には「人の話をしっかりと聞いていなさい。」と言う,一体なんだってんだ)


理解する必要のみにしか興味の無かった翔にこの教師の気持ちが分かるわけが無かったのである。


「龍崎君!君は私を馬鹿にしているんですか!」


教師の方もこの生徒の優秀さを理解していたので,下手に手出しするわけには行かなかったのである。


そしてその状態のまま授業が終わるのが常だったため,クラスメイトたちは今までになかったこの状況に面食らっていた。


・・・そこへ


キーンコーンカーンコーン,キーンコーn〜〜〜


チャイムが鳴り響いた。


(ふんっ,これ以上は無意味だな・・・。)


無言で翔が立ち上がり,無言で廊下へと歩いていった。


残された教師はと言うと,まさか翔がここまで完全に自分のことを無視するとは夢にも思っていなかったようで,怒鳴った体勢のまま固まっていた。


「センセー,授業早く終わってくれませんかー。」


と言う言葉が聞えるまでずっとそのままだった。


ちなみにこの声が掛かるまで5分間の時間が必要だったとか。


この教師はこの1年4組の生徒達からの評価を落とすこととなったのは又別の話である。

所かわって屋上・・・(学校の)


「ふぅ〜〜〜〜。」


1人屋上へ来た翔は,いきなり大きなため息をつく事で自分の感情を静めようとしていた。


(疲れたぁぁぁ〜〜〜,なんなんだよあの教師!全く,俺の至福の時をよくも〜〜〜〜!)


しかし,湧き出すのは先程の出来事。


全く正常になど成れるはずが無かった・・・。


木枯らしの吹く中翔は屋上入り口の上,即ち屋上唯一の建物の上に腰掛けながら1人,誰にと言うことも無く愚痴をこぼしていた・・・。


『ふむ,確かにな・・・』


「!!!」


何処からとも無く,雷の轟のような声があたりに響いた。


実際は翔の心に直接伝達されただけなので回りには聞えていないのだが・・・。


「だっ,誰だ!」


翔のこの反応は正しいものだと言えるだろう。


何処からとも無く知らぬ,しかも地から響くような声が聞えてきたら誰でも同じ反応を示していただろう・・・。


翔は身構えたが,その声の主は無言のままだった・・・,そのとき,


「やっ,やめてください!」


「おいお前,金持ってるんだろ,出せよ(笑)」


「い,いやです!何で渡さないといけないんですか!」


「今渡しとけば痛い目にあわなくても済むぜ(笑)」


「そうそう,身体に教えるしかないもんなぁ,口で言っても分からないんならさ。」


どうやら女子生徒が不良生徒に恐喝されているようだった・・・。


(うん?あれは確かうちのクラスの・・・。前明良が言ってた奴じゃないか。なかなか可愛い顔してるって聞いたけど,確かにこれなら頷けるな,確か名前は・・・井上,だったかな。)


この井上にとって絶体絶命のピンチに,翔は暢気にそんなことを考えていた・・・,そこへ・・・。


『助けないのか?』


「!!!」


翔は,声を立てないようにしながら極力小さな声でこういった。


「だ,誰なんだ・・・。」


『君の腕輪の宝玉とでも言えば分かるか?

そして私は第零級魔導具,【聖剣と魔剣】である。』


正直な所翔には何のことかさっぱり分からなかった。


魔導具?聖剣と魔剣?大体この腕輪は親父に貰った物なのにどうしてそんなものが入ってるんだ?などなど,疑問はあったが,


『それよりも,助けなくとも良いのか?』


この一言で質問をするタイミングを失ってしまった・・・。


翔はその腕輪を手にとって見たが特に変わった所があるようには思えなかった。


「そんなこと言ったって,俺が行ったってどうせやられるだけだよ。怪我するだけ損だしな・・・。」


知らず知らずのうちに本音が翔の口から漏れ始めた。


『そんなことは問題ではない・・・,助けるのかそれとも助けないか。』


「・・・」


(俺は,どうしたいんだ?助けたい?でもいまだこうやっているじゃないか,どうなってもいいと思っているからじゃないのか?)


翔の中で葛藤が始まる。

そこへ・・・


『時間が無い,どうするかは自分で決めるがいい・・・。』


(!!!そうだ!助けたいんじゃない!・・・,助けるんだぁぁ!)


翔が心の葛藤に打ち勝った時,


『それでこそ我らが選んだ主として相応しい・・・,心配するな,力は我が与えよう・・・,宝玉に触れながらこう唱えるがよい,『強化』と』


腕輪の宝玉がこう言った。


「・・・『強化』」


翔が言われるがままそう言った瞬間,翔の身体を何かが包むような感覚を感じた。

これが『強化』の第1段階,身体能力の強化である。


「す,凄い!」


「目的を果たすが良い・・・。」




翔はその言葉を聞くと一陣の疾風となり,恐喝をしている2人の不良の目の前に現れた。


「!!!」


「大丈夫か?,井上。・・・・・恐喝とはなかなか卑怯なことしてますね,先輩。後輩の女子生徒にそれは無いんじゃないですか?大体,か弱い女子生徒相手に男が2人なんて情けない・・・。」


「ッだ,ッ誰だ,貴様は!」


『井上』と呼ばれた女子生徒は驚き立ちすくみ,恐喝を行っていた男子生徒達は敵意と畏怖の念を抱いていた・・・。


「そんなことはどうでもいいんです。その娘を放して去るか,ここで俺に潰されるか,好きな方を選ばせてあげます。」


なぜか丁寧口調な翔は,そういいながらさりげなく『井上 葵』を庇うように自分の後ろへと従えた。


「きっ,貴様ぁぁぁ!」

「俺達の邪魔をするなぁぁぁ!」


不良たちはあの程度の挑発に易々と乗り,翔へと殴りかかってきた。

それを翔は易々と(素人が見れば紙一重で)避けながら

(・・・何故俺はここまで落ち着いているんだろう・・・?)

自分の心境に小さな戸惑いを覚えた。

だがすぐにその考えを振り払い,


「やれやれ・・・,これだから頭の悪い奴は嫌なんだよ・・・,かかってこい,この右手だけで貴様らの相手をしてやろう・・・。」


翔は追い討ちのようにこう言い放った。


「!!―――――!!!」

「死にさらせぇぇぇ!!!」


不良たちは翔に向かってそれぞれが我武者羅に殴りかかってきた。

不良Aが翔の顔面を狙いながらすばやくパンチを繰り出す!

翔はそれを上体を捻るだけで交しカウンターで後頭部へ刀のような鋭い手刀を叩き込んだ。


「ガッ,ガハッ!」


それだけで不良Aは冷たいコンクリートを舐めることとなったのである。

それを見た不良Bが懐からナイフを取りだし逆手に構えながら翔と対峙する。

不良Bの持つナイフは少し反った刃をしており,斬るよりも刺すことに特化したものだった。(まぁ,ナイフと言うものはそういうものだが・・・。)

※(俗に言うククリナイフである)

この不良B,不良Aと違い場慣れしているようだった・・・。


(まぁ,だからって負ける要素は無いけどな・・・。)

翔が そう思った瞬間,


「ウオォォォ!」


不良Bが翔に向かって突撃してきた。

おそらくこのときの不良Bの頭の中ではエンドルフィンが大量に放出されていることだろう・・・。

不良Bが必殺を確信して繰り出した刺突はしかし翔にとどくことは無かった。

代わりと言ってはなんだが不良Bの持っていたナイフは翔によって蹴り飛ばされ,刃先は折れ,使い物にならなくなっていた。

そして翔はその反動で地を蹴り,不良Bの鳩尾に掌底を打ち込み,浮いた身体に自分の身体に流れる気(魔力や存在の力とも言う)を練った上段蹴りを繰り出した。

上段蹴りは翔の思った通りの軌道を描き不良Bの鎖骨に直撃した。


ビギッ!


不良Bの鎖骨辺りから鈍い,それでいて乾いたような音が聞え,


「ぐわぁぁぁ!」


それに続いて不良Bの悲鳴が屋上に轟いた・・・。

もともとケンカなれしている翔,ましてや例の双剣の力まで使われてはこの不良たちが勝つ道理は無かったのである。


「さて,と,終わったか。」


そういうと翔は何事も無かったかのように去っていった・・・。


【〜葵side〜】


(まったく・・・。なぜこんな時にからまれてしまうんでしょう・・・。大切な用事があったというのに・・・。そう,龍崎君に・・・。)


この心の声は 井上 葵 のものである。

こうきくと落ち着いているように思うかもしれないが,実際は大ピンチなのであった。


「おいおい,きいてんのかぁ?」


「そうだそうだ,さっさと金出した方が身のためだぜぃ。」


そう言ったのは軽そうでガラの悪そうな(ついでに頭も悪そうな)男が2人目前に立ちはだかっていた・・・。

と言ってもそこまで背の高くない男だったのだが,あいにく葵自体が身長の低かったのでこの表現がしっくりくるようである。


「おぉ〜い?」


そういいながら不良たちはゆっくりとしかし逃げ道を作らないように近づき,葵の肩に手を置おいた。


「やっ,やめてください!」


「おいお前,金持ってるんだろ,出せよ(笑)」


不良Aが楽しげに言う。

実際この男たちの中に罪悪感というものはほとんど無いだろう・・・。

小遣い稼ぎという理由で強盗という犯罪を見ない振りしているのである・・・。


「い,いやです!何で渡さないといけないんですか!」


葵は抵抗しようとするがそこはやはり男と女,限度がある。


(さすがに危ないかも・・・。こんな時に1人だなんて・・・。)


いまさら嘆いても後の祭りなのだが思わずにはいられない葵なのだった・・・。


「今渡しとけば痛い目にあわなくても済むぜ(笑)」


「そうそう,身体に教えるしかないもんなぁ,口で言っても分からないんならさ〜。」


2人はさらに愉快そうに笑いながら迫ってきた,そこへ・・・


「恐喝とはなかなか卑怯なことしてますね,先輩。後輩の女子生徒にそれは無いんじゃないですか?大体,か弱い女子生徒相手に男が2人なんて情けない・・・。」


何処からとも無く翔の,葵の想い人の声が聞えてきた・・・。


(!!!うっ,嘘っ!!!この声は!)


「〜〜〜〜〜〜〜」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜

〜〜」

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」


翔たちが何か言い争いをしているようだったが葵の意識は別の所へいってしまっていたようで全く頭の中に入ってこない。


(なっ,なんで龍崎君が・・・?いっ,今の聞かれてた?どっ,どうしようっ!)


バキッ!

ボコッ!

「グワァァ・・・」


遠くで何かの叫び声のようなものがきこえ我に返った。

そこには2人の不良たちが地べたにへばりつき,それに目もくれず去っていく翔の姿があった・・・。


【本ルート】


(まったく・・・。面倒なことしちまったなぁ・・・。まぁ,人を助けて悪い気持ちはしないけど。)


と,翔が自己満足に浸っていると・・・


「りゅ,龍崎くん・・・,あのっ,さ,さっきはありがとう・・・。」


横にはあの不良に絡まれていた同級生,正確には 井上 葵の姿があった。


「ぅん?ああ,気にしなくていいよ。でも気をつけなよ,貴女みたいに可愛いと狙われやすいんだろうね♪」


まったく暢気にそんなことを言う翔だった・・・が。


「なぁ〜にを言ってるんだよ,翔。」


「ああ,明良か,なんだよ。」


いきなり声を掛けて来たのは 夏目 明良 翔の親友にしてライバルである。


「まったく,部活にも出ないで何をやってるのかと思えば,ナンパですか翔クン?」


(!!!なっ,なにをっ!)


予断だがこの反応は葵である。


「バーカ,そんなんじゃねーよ。」


翔は軽く受け流す。


「じゃ,俺は行くわ!あんまり井上さんを困らせるなよ,翔!」


そういいながら,明良は道場のほうへと走っていった・・・。


「まったく・・・,大きなお世話だってーの,で?なんだっけ?」


翔は話を戻そうと葵へと向き直った,が,


「かっ,可愛いなんてっ!な,ナンパだったの?そんな馬鹿な。」


本人は心の中で思っているつもりなのだろうが,しっかりと声に出ていた・・・。


「・・・お〜い,井上さ〜ん?だいじょうぶかい?」


「あっ,はいっ!大丈夫ですですっ!」


「っぷ,面白いね〜,井上さんって。」


「そっそんなこと無いですよ!あっ,そうだ,立ち話もなんですから歩きませんかっ?」


立ち話はダメで歩けばいいなんてかなりむちゃくちゃな理論である。


「アハハハ,やっぱりおもしれ〜。」


そういいながら学校を後にする翔たちだった・・・。



場所は変わって井上宅前・・・。


「あっ,そうだ,上がっていきません?お茶ぐらいは出せますよ?」


やっと積極的になりだした彼女を珍しげにみやると,


「やっぱり変わってるね〜,普通簡単に男を家に入れないはずなんだけど?」


翔の言うことは最もである,2人は高校生,間違えが起こってもなんらおかしくない(?)状況なのである。


「そ,そうでしょうかっ?/////」


と葵が言った瞬間,


『何かが来る・・・,気をつけろ・・・。』


何処からとも無く雷鳴のような声が頭に響く・・・。


「!!!井上!伏せろ!!!」


そう翔が言った瞬間,


カッ!!!


目前の空に閃光が走る!


2人はまぶしさのあまり目をつぶり地べたに伏せたのだった。


否,実際は2人の姿が消えていったので,2人の意識では,であるが。


その閃光がやんだ時,2人の姿は何処にも無かった・・・。


 



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