表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

手が届かないという美徳

作者: 彩乃


 

 

美味しそうだけど、食べたらまずかった。

 

宝くじが当たったのは夢だった。

 

壊れていると思っていた時計が意外と動いた。

 

勉強はしてみると意外と楽しかった。


謝ってみたら相手は気にしてなかった。

 

天気予報での雨は嘘だった。


イチゴは食べたらすっぱかった。

 


私の宗司との恋もそんなものだ。


 

初めてのキスはタバコの味だった。

最初はそれにさえも大人びたものを感じ、キュンと胸を弾ませた。


家は予想より汚かった。

最初は片付けてあげている事実さえ嬉しかった。


セックスは下手くそだった。

いつもカッコイイ宗司がどぎまぎしてるのが可愛かった。


今となっては、付き合う前の方がよっぽどかっこよく見えていたことに気づく。前はかっこよくない所も様々な方法でカバーしていた。

今となっては、私の中のその機能は使えなくなった。

もしかしたら、彼も私に同じことを思ってるのかもしれない。

こちらを不思議そうに見つめる宗司は少し疲れて私の隣に寝転んだ。

頭を撫でてやると嬉しそうに眠っていくのは悪くは無いものだ。


変わっていく価値観の中に私は溺れて流され続けている。

きっとこれからもそうなのだ。

 

けれどその価値観の中で、少し歪んでいるかもしれないけれど、確かに、大きな愛という積み木だけは崩されないで積み上がり続けてることに今は縋っておこう。


 

雲だって食べてみたらきっと不味いものだ。

けれど空が青くて綺麗な事実、その中に美しいコントラストとして雲が一役買ってることに変わりはないのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] たまたま新着で拝見しましたが、とても良かったと思います。 自分の心さえ、自分の愛情さえままならない、人生ってそんなものですよね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ