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救世主と精霊王  作者: 小林あきら
第一章 ギルド
23/40

催眠



 フェレットの案内で辿り着いた部屋のドアを、ゆっくり開ける。

 中を伺うと、ベッドに横たわった少年が見えた。他には誰もいないらしい。


 毒を飲んで倒れた毒味役……客観的に見たら彼が犯人だとは思わないだろう。現に、誰も警戒していないのか、見張りも付いていない。


 部屋の中に滑り込みベッドに近付くと、少年がパチリと目を開け、怪訝そうにこちらを見た。


「あー。えっと、気分はどう?」

「……見ての通り、最悪だよ」

「そ、そっか~」

「何の用だ?言っとくが、俺が倒れた時にお前が魔法を使ったことは分かってんだからな」

「あ、やっぱバレてた?」


 肩を竦めてみせれば、少年はギュッと眉を寄せる。


「……お前、闇魔法使いなのか?」

「違うよ。闇属性は持ってるけどね。そう言う君はどうなのさ」

「どうって――」

「毒入りじゃないって、嘘ついてた。神子様暗殺しようとしたの、君でしょ」


 沈黙が流れる。しばらくお互いに睨み合っていたが、やがて少年がふと視線を反らし、諦めたように吐息を零した。


「ここで嘘ついてもどうせバレるからな。そうだよ、おれが神子を毒殺しようとした」


 額に腕を乗せ、表情を隠した少年が「で?」と続ける。


「だったらどうする?自首しろって?」

「え、してくれんの?」

「……するわけないじゃん」


 ですよね~。

 ベッド脇の椅子に腰かけ、少年を見下ろす。


「まあ、それはいったん置いといて。ちょっと、君に訊きたいことがあって」

「訊きたいこと?」

「今回の暗殺、誰かの指示?」


 はっ!と少年が鼻で嗤う。


「それこそ、言うわけないだろ?拷問されたって吐かねえよ」

「あ、今嘘ついた」

「……拷問されたら吐くが、お前ごときじゃ言わねえってことだよ」

「そっかぁ。じゃあ、やっぱ催眠するしかないか~」

「おい、待て。今なんて言った?催眠?」


 カッと目を見開いた少年が、逃げるように身動ぎする。


「正気か?闇魔法使いだって洗脳の類は滅多に使わねえんだぞ!コントロールミスって洗脳通り越して精神やられちまう奴が多い――って、ま、待て。こっち来んな!!」

「うん。初めて試すんだけど、大丈夫!優しくするから!」

「や、やめろ……!手をワキワキさせんな!と、止まれ!!いったん冷静になれ!」

「はいはい、怖くないよ~。すーぐ終わるからねぇ~。……ぐへへへっ」


 ベッドの上から逃げようとする少年の肩をガッシリと掴み、その体に覆いかぶさるように乗り上げ、ニマニマと笑う私。


 後にフェレットは語った。『チセは、紛う事なく変態である』と。


『牢屋へ道連れは勘弁だな……。仕方ない、殺すか』

「え、何。いきなり物騒じゃん」

『物騒なのはお前だ。死にたくなけりゃ、その犯罪行為を今すぐやめろ』

「いやいや、犯罪者はこいつ!……ってか、催眠ってどうやればいいんだ?」


 少年を逃さないように上に乗っかったまま、ふむと腕を組む。

 あんまり、闇属性の魔法って使ったこと無いから、イメージ化が難しいんだよなぁ。催眠、催眠か~。


 と、そこで私は、あることを思い出した。

 アルと初めて出会った日。意識不明だったアルに、回復魔法をかけてやれと言ったギルの言葉を。


 ――元気にな~れっておまじないかける感覚で魔法使えばイケる、たぶん。


「それだ!!」

『っ……だから、いきなり大声出すなっつってんだろー、がっ!』

「いだっ痛い……!目つぶしやめて!」


 要は、それっぽい掛け声とかモーションで、魔法を発動させればいいのだ。

 私は、自分の下でぐったりとしている少年に向けて、掌を突き出した。


「あ、あなたはだんだん、眠くな~る」

「……」


 少年が半目でこちらを見上げる。眠いからではない。「何してんだコイツ」という呆れを含んだ半目である。


 しかし、私は本気だった。


「あなたはだんだん、眠くな~る」

「……」

「私が3秒数えたら、あなたは眠りに落ち~る。3、2……」

「ふざけてんのか?いい加減にどかねえと、マジで攻撃魔法を――――」

「1」


 パタリ、と。少年の抵抗が止まった。

 一気に弛緩した少年の身体が、ベッドに沈む。目は固く閉じられ、一向に開く気配はない。


「え、成功?」

『みてーだな』


 ツンツンと少年の頬をつついたり、ぺちぺち叩いたり、頭を撫でくり回したりしてみたが、全然起きない。


「よし」

『よし、じゃねえよ。無駄に触んな、変質者』

「へ、変質者!?」


 ――と、そこで私はやっと、自分が幼気な少年の上に馬乗りになっていることに気付いた。


「Oh……」

『申し開きは』

「ありません……」


 いそいそと少年の上から退き、椅子に座り直す。

 そして、再び掌を少年に向ける。


「あなたは、私の質問に答えたくな~る。正直に答えたくな~る」

『……なあ、語尾伸ばす必要あるか?』

「ちょっと黙ってて!集中してんだから!……あなたは、3秒後に起き上が~る」


 3、2、1――――。

 パチリ、と少年の目が開いた。焦点が定まらないようで、こちらの方を見ようとはせず、ぼうっと天井を見上げている。


「えっと、あなたの名前は何ですか?」

「……ロミオ」


 嘘センサーは……引っかからない。成功だ。しっかり催眠がかかっている。

 ――さて、ここからが本題だ。


「えーっと。あ、そうだ!ロミオは、もう事情聴取を受けた?」


 ふるふると首を横に振るロミオ。

 ……となると、これからオーダン達がこの部屋に来るかもしれないのか。あまり悠長にもしてられないな。


「ロミオは、ボンドから来たの?」


 ロミオがこくりと頷く。


「ロミオ、今回の暗殺を指示したのは誰?」

「……組織の、ボス」

「そのボスは、何で神子を殺そうとしたの?」

「……知らない」

「ボンドの闇魔法使い達は、神殿を恨んでいるの?」

「知らない」


 そこも、“知らない” か……。少なくともロミオ自身に、神殿に対する個人的な恨み辛みはないということか。

 恐らくロミオは「組織」の末端。上から依頼されたことを忠実にこなすだけの、下っ端と言ったところなのだろう。


 ふぅ、まあそう簡単にはいかないよね。神殿を潰そうとしている主犯格について何か探れればと思ったんだけど、これ以上ロミオを問い詰めても目ぼしい情報は手に入らなそうだ。


「そう言えば、ロミオは何で闇魔法使いになったの?」


 せっかくなら、と単なる興味で聞いてみれば、ロミオは暫く沈黙した後、するすると言葉を紡いだ。


「ボンドのスラム街で育った。親は知らない。闇属性の魔法が使える。から、小さい頃に拾われた。組織の連中に」


 催眠の影響か、ぶつ切りに語られた内容に、思わず眉が寄る。

 ロミオは、小さい頃から闇魔法使いの組織で働いていたのか。


 ふと、神子のことを思い出す。生まれた瞬間から神子だったと答えた彼女と、小さい頃から闇魔法使いの巣窟で育った彼。

 ただ育った環境が違っただけ。ただ持って生まれた属性が違っただけ。それだけなのに。

 片方は神子に、片方は闇魔法使いとなって、こうして敵対している。


「闇魔法使いじゃなくて、もっと別の道を進みたいって、思ったことはないの?」


 気付けば、神子にした質問を、そっくりそのままロミオにもぶつけていた。


 しばらくの沈黙。ややあと、ロミオは淡々とした声で答えた。


「ない。夢や希望は、持つだけ無駄」

「……」



『チセ、急いだ方が良い。足音が近づいてきてるぜ』


 ピンと背筋を伸ばして扉の方を見るフェレット。私は椅子から立ち上がり、一つ大きく深呼吸をする。


「よし」


 ロミオへ掌を向け、また一呼吸。


「――――あなたは、私がこの部屋に来てから出て行くまでの間に起こったことを、全て忘れ~る」

『その語尾伸ばすのやめろ。無性に腹立つ』

「うるさいなぁ、急げって言うんだったら邪魔しないで!……あなたは、事情聴取で本当のことしか言えなくな~る」


 ……これでひとまず、今回の毒殺未遂の犯人特定はされるだろう。

 

「あなたはだんだん、眠くな~る。私がこの部屋を出たら、あなたは目覚め~る」


 ゆっくりと腕を下ろす。ふぅ、これで大丈夫かな。

 すやすやと眠るロミオを確認してから、私はこっそりと部屋を後にした。


 その後、何食わぬ顔で神子の部屋に戻り、ネアゴには「少年の所に行ってみたけど、毒のせいで眠ってたから結局何も訊けなかった」と説明しておいた。




 翌日、オーダンから無事犯人が捕まったとの報告を受け、始終恐縮しっぱなしの町長に見送られながら、私達は屋敷を後にした。


 犯人について、詳しい内容が語られることはなかった。ただ、この町の警備兵に引き渡したため、処罰はそちらで決まるとだけ聞かされた。


 これで一件落着。……しかし、私達の護衛任務はまだ後1日残っている。

 休む暇もなく、私達は最後のイベント――神子がこの町を出立する際に行われる「お見送りパレード」に向けて準備を進めていた。


 本当は町長の屋敷で神子のドレスアップを整える予定だったんだけど、捕まったとは言え暗殺者が潜り込んでいた屋敷の使用人に準備を任せるのは危険との判断で、仕方なく私達で準備を進めることになったのだ。


「えーっと、パレードを終えたらそのまま次の町に出発するんだよね?」


 宿に戻って来て早々、神子にメイクを施し、髪を結い上げ……と忙しいネアゴを見守りながら、予定を確認する。


「ええ。一昨日と同じ警護体制よ」

「一昨日と同じとなると、私は神子様の隣りに座ってればいい感じですか?」

「ただ座ってるだけじゃ駄目よ。多くの人に神子様の姿を晒すことになるパレード中は狙われやすくもある。だから、神子様の一番近くにいる貴女が、もしもの時の最後の砦なの。しっかり護衛を果たしてちょうだい」

「いえっさー!」


 やたらヒラヒラした服やら、キラキラした装飾品やらを運びながら、ビシッと敬礼する。

 いよいよ最終イベントだ。……これが終われば家に帰れる。


 思えば、転生後の外泊は今回が初めて。たった3日間で、私はすっかりホームシックになっていた。

 はぁ、ギルは元気かな……いや、元気だろうな。むしろ、ガキ共がいなくて気楽だぜ!とか思ってそう。



「はい、可愛くできましたよ、神子様」

「ああ、ありがとう」


 私が意識を飛ばしている間に、神子のメイクが終わったようだ。

 最後に服の着付けを手伝って、装飾品を付ければ準備完了。


「わぁ、とても可愛いですよ!神子様!」

「ふふ、君に言われると悪い気はしないな」


 シャラリと装飾を鳴らしながら微笑む神子は、本当にお世辞抜きで綺麗だった。これぞまさに神子って感じ。全身から清廉さが滲み出ている。


「はい、それとあなたもこれに着替えて」

「え、私も?」


 ネアゴから渡された白い布を広げる。シンプルな神官衣に……、これはヴェール?


「神子様の隣りに誰とも知らない子供が座ってたら不思議に思われるでしょう?神官のフリをしてれば目立たないから、カモフラージュ用よ」

「なるほど。……このヴェールは?」

「騒がれたくないなら、かぶっておきなさい」

「? 騒がれるってどういう――――」


 ……ああ、そうだった。私、はちゃめちゃに美少女なんだった。


 言葉を切り、大人しく着替え始めた私を横目に、ネアゴはテキパキと化粧道具を片付ける。


「ちょっと大きい」

「あら、ほんと?一番小さいサイズなんだけど……。詰めなきゃダメそうね」

「それなら、私がやろう」


 忙しそうに動き回るネアゴを制し、神子が裁縫道具を手に取る。


「え、神子様?」

「私も神官衣を着ていたからな、勝手が分かる。任せておけ」


 そう言うなり、慣れた手つきで裾上げをし始める神子。私は大人しくされるがままになりながら、するすると衣に糸が通っていく様子を眺める。


「できたぞ」

「おお、すごい!ピッタリになりました!」


 クルリと回って見せれば、神子も満足げに頷く。

 これにヴェールを被れば、黒子ならぬ白子の完成である。


「……これはこれで、愛いな」

「なんだか、マスコットみたいですね」


 「わーい、お仕着せだー」とクルクル回る私を生温かい目で見つめる神子とネアゴ。私はそんな二人の様子には気づかず、ソファに寝転んでいるフェレットの所へ駆け寄った。


「ねえ、見て見て。私のパレード衣装」

『……綿毛茸みてーだな』

「え、可愛いってこと!?」

『曲解が過ぎんぞ、おい』


 思考回路どうなってんだ……と嘆息するフェレットを、ひょいっと抱き上げる。


 着飾った神子と、白子の私。二人が並ぶ姿を見つめ、うんうんと頷いたネアゴは、最後に部屋をぐるりと見回す。


「よし、準備は万端ね。それじゃ、行きましょうか」




 外に出ると、騎士たちはすでに配置についており、その中にアルやトムの姿も見えた。


「神子様、こちらへ」


 オーダンのエスコートで馬車に乗り込んだ神子。その後に私も続く。今回乗る馬車には天井がない、オープンカーのような馬車だ。パレード用の特別仕様なのだろう。


「これより、出立式を始める!行進中も決して警戒を怠らぬように!」

「「「「はっ!!」」」」


 オーダンの掛け声にあわせて、馬車はゴトゴトと進み始めた。






 ――――結果、パレードはこちらの緊張を差し置いて、滞りなく終わった。


 興奮と歓声の止まない本通りから人通りのない道に出て、ようやくふぅと肩の力を抜く。


「は~、神子様って本当に慕われてんのねー」


 神子に向かって一生懸命手を振る人々の笑顔を思い出し、感嘆の声を上げると、神子は苦笑して首を横に振る。


「肩書は立派だが、私自身は大した人間ではないよ」

「いやいや。命狙われながら他国のために浄化巡礼しつつ、接待や広報までこなすなんて、大した人間じゃなきゃできないっすよ」


 たった3日の付き合いだが、神子と言う役割がどれだけ大変なものかは骨身に染みて実感できた。

 私も前世ではブラック企業で働いていたこともあったが、神子業はさらにその上をいくものがあった。少なくとも私は、接待先で命を狙われたことなんてない。


「神子ってすごい仕事ですね」


 しみじみとそう言えば、神子はキョトンとした後、徐々に肩を震わせ始めた。


「? 神子様?」

「っははは!ふふっ、すごい()()か。そんな風に言われたのは初めてだ」


 口を押えて笑いを漏らす神子にキョトンとしていると、ふぅと一つ息を吐いた神子が、空を見上げる。


「先日、神子以外になりたいと思ったことはないか、と聞いたな」

「あ、はい」

「……あるさ。特にこうして巡礼していると、しょっちゅう思うよ」


 ポツリと落とされた声は、周りで鳴り響く馬の足音に掻き消されてしまう程、小さかった。

 しかし、隣りに座っていた私の耳には、しっかり届いた。


「でもな、私はこの仕事に誇りも持っている。だから “浄化” を使える限り、私は神子で()()()()と思うよ」


 空からこちらへ視線を移した神子の、その真っ直ぐな瞳に、暫し見惚れる。


 そして同時に、「夢や希望は、持つだけ無駄」と語ったロミオの陰った瞳を思い出して、ズキリと胸が痛んだ。


「……やっぱり、神子様は立派ですよ」


 夕日に赤く染まった景色を眺め、目を細める。

 ――願わくば、罪を暴かれた闇魔法使いが、もう二度とその手を汚さないようにと、去り行く町に思いを馳せながら。






 無事に次の町に到着した私達は、後任のギルド組へと神子を託す。


「おう!!神子様は任せろぉっ!!」


 地に響くような低い爆音で叫んだ大男に、迷惑そうに顔を顰める女性と、苦笑を浮かべる魔術士らしき男性。これまた楽しそうなメンツである。


 私は、神殿騎士の一行に向かって頭を下げる。


「旅のご無事を、お祈り申し上げます」

「ああ、元気でな」

「また、どこかで会いましょう」


 ニカッと笑うオーダンと、ウィンクするネアゴに頷き、神子の方に向き直る。


「道中、どうかお気を付けて」

「うん。ありがとう」


 すっと背筋を伸ばして、オーダン達について行く神子様の背中を見送る。その背中が、何だか最初に見た時より細く、儚げに見えた。











「たっだいまぁあああああ!!」

「うるせえ」


 家の玄関を開けた瞬間に全力で叫んだ私の頭に、容赦のないチョップが命中した。言わずもがな、ギルである。


 私は、ジンジンと痛む頭を抱えながら床をゴロゴロと転げ回る。


「うわあああああ!疲れたんだよぉおおお!イイ子でいるの疲れたんだよぉおおおおお!はぁあああ、やっぱ我が家が一番だ。私、しばらく森から出たくない」

「じゃあ、しばらくは僕だけでランク上げ行ってくるね」


 すたすたと私の横を通り過ぎたアルは、さらりとそう言うと、「食事の用意手伝います」とキッチンに歩いて行く。


「え?アル一人でギルドの仕事するってこと?そんな、一緒に走ろうって言ったじゃん。ゴールテープ一緒に切ろうって言ったじゃん!」

「おい、お前もいつまでも寝転がってないで手伝え。……まったく、帰って来た途端に煩い奴だ」


 溜息を吐くギルの背中にぴょんっと飛びついて、後ろから鍋の中身を覗く。


「わ~!キノコスープだ!かつて私とギルが愛の共同作業をした――」

「記憶を捏造するな」

「ぶふっ」


 顔面を拳で強打され、ズルズルとギルの背中から降りる。


「姉さん、手伝わないならフェレットと風呂入って来て」

「皆が私に冷たい……」


 すんすんと鼻を鳴らしながらも、口元は緩く笑みを描く。久し振りだなぁ、この感じ。


 アルの言葉に甘えて「ではお先に」と風呂に入った私は、フェレットの背中をわしゃわしゃと無心で泡だらけにしながら、溜息を吐く。


「だめだ。疲れた。何も考えられない」

『じゃあ、黙っとけ。少しは口を休めろ』

「え、やだ。私そんなにうるさい?」

『自覚なかったのか……』


 呆れるフェレットにバシャンとお湯をぶっかけて泡を流し、湯船につかる。元々、日本担当の死神だったらしいギルの家には湯舟がある。いやあ、日本人の鑑。お風呂最高。


「ふわぁあああ。しみるぅう」

『ジジくせえな』

「せめて、ババくせえって言って」


 軽口を叩きながら、ブクブクとお湯に沈み、目を閉じる。……うん、本当に疲れた。

 今日だけは世界滅亡とか闇魔法使いとか神殿とか――全部忘れて、ただ休もう。



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