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少年兵士とカエルに乗ったナイト様

作者: テン

 ある所に、星を七回塵に変える兵器を持つ眉毛のない少年兵士と、カエルに乗った小さなナイト様がいました。

「なあ少年、夜ってどんな感じなんだい?」

 ナイト様がカエルの咽喉を撫でながら聞きます。

「目を瞑ったように真っ暗な世界がどこまでも拡がってるんだ」

 ナイト様は嬉しそうに目を閉じます。

「なんだかつまらないな」

「星が見えないからね」

「星とはなんだい?」

 少年兵士はすっと地面を指差します。

「目を開けて見て」

「星とは地面のことか。なんだかつまらないな」

「つまらなくないよ。僕等には土の塊にしか見えないけど、とおい遠い人達にはこれが光って見えるんだよ」

「ほう。それはそれは」

 くああ、とカエルが眠たそうに欠伸をします。

「もう本当は夜なのかな」

「ふむ、今日もしっかりと私を追いかけてきてるのか」

 ナイト様は太陽を見つめます。

 太陽はニコニコとナイト様に微笑みます。

 太陽はある日ナイト様に恋をしてしまい、それ以降ずうっとナイト様を追っかけています。なのでナイト様は夜を知りません。

「ナイト様。僕の兵器で追い払いましょうか?」

「あれをおてんと様と言って崇める人たちがいるんだろう? そんなことをしたら可哀そうだ」

 そして今日もナイト様は夜を知らずに過ごします。

「少年。眠くはないかい?」

「眠たいな。眠たいけど眩しくて仕方ないよ」

「眉毛がないからか?」

「うるさいな。関係ないよ」

 ごろんと地面に転がります。

「私が見張っててあげよう」

 ナイト様が剣を持つと、けろけろとカエルが鳴きます。

「我が愛獣ロシナンテよ、お前も眠るか」

 げこげこと、相槌をうつと瞼を閉じ、小さく丸まってしまいました。

「ナイト様は今日も寝ないの?」

「夜は寝るものだと聞いてたのだが、その夜が来ないのだから寝る必要がない」

「ふああ、大変だね」

 腕で目を押え、少年兵士は寝てしまいました。

「ああ。淋しい朝が来たよ」

 ナイト様は針の大きさの剣を持って、コオロギを蹴散らします。

「むむ、むむむ」

 季節外れの蛍が、ナイト様の前に現れます。

「なぜお前は光らないんだ」

 夜がこないからですと、蛍は泣きます。

「お前は光るために生まれてきたのだろう。このままじゃ死のうにも死ねないじゃないか」

 役目をはたして死にたいと蛍は嘆きます。

「夜の国に行け。私が居ないところは全てが夜のはずだ」

 ナイト様の話を聞いた蛍は勇んで飛び立とうとします。

「お前は速そうだ。太陽に追いつかれない様に、俺を夜の国に連れて行ってはくれないか」

 わかりました。蛍はそう言い、自分の身体よりも大きいナイト様を一生懸命運びます。

 しかし、どこまでいっても追いつかれてしまいます。

 蛍は疲れ、甘い水を求めて川に落っこちてしまいます。

「むむ、ロシナンテ。ロシナンテ!」

 ナイト様はカエルの名前を呼びます。しかし、ナイト様が居ないところでは太陽が出ておらず。季節も変わりカエルは冬眠していました。

 結局、ナイト様は溺れてしまいました。

 しばらくして少年兵士は川辺でぐったりと倒れているナイト様を見つけました。

「大丈夫? ナイト様」

「すごく眠たいんだ。夜が来たのかな」

「そう、ならスヤスヤと眠るといいよ」

 夜が来たと、ナイト様はだんだん呼吸が小さくなっていきます。

「星が見たい」

 小さな声でナイト様が言うので、少年はナイト様と蛍を手に置き、手のひらを重ね合わせて小さな夜の空間を作り出します。

 蛍も夜が来たと思い、その身を光らせます。

「少年、星だ。星だよ」

「そうだよ。ナイト様」

「ああ、良い気分だ。おやすみ、少年」

 そう言うと、ナイト様は少年兵士の手のひらで静かに眠りにつきました。

「おやすみなさいナイト様」


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