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2.ハギラ 01

 こんにちは、葵枝燕でございます。

 『きみとてをつなぐ』、第二話でございます。

 今回の語り手は、前回予告したとおり、ハギラさんです。

 えー、あとがきにて若干暴走してますが、ただの漫画・アニメ好きの戯れ言だと思って、スルーしていただければと思います。

 それでは、第二話開幕です。

 親仁(おやじ)殿(どの)が彼女を拾ってきたとき、俺以外にも同じような顔をしている者はいた。人は多く、それなのに、それ故に、食糧が足りなくなるということは日常茶飯事だったのだ。このうえ、また人を増やすなど、理解できる者はいなかった。それでも、親仁殿に拾ってもらったのは皆同じだった。だからこそ、普段から親仁殿に意見できる者はおらず、俺達は結果的に彼女を新たな家族として迎え入れるしかなかった。

 俺達――盗賊団の家族として、だ。

 いや、盗賊団というと聞こえが悪い。俺達は、他人の命を奪うことも、他人の財産を奪い取ることも、したことはなかったのだ。人里離れた洞窟を住処(すみか)にし、近くの川で魚を捕り、森の中で果実を採り、ときには獣を狩ったりして生活していた。それも全て、親仁殿の方針に従ってのことだった。しかし、人里に住む人間にとって、洞窟を住処にする俺達は盗賊と変わらないらしかった。そして、俺達の人相の悪さが、それに拍車をかけていた。

 そんな俺達の一員に加わることになった彼女は、進んで俺達に関わろうとはしてこなかった。部屋の(すみ)で独り、膝を抱え込んでいる姿ばかりが印象的だった。彼女に自ら進んで話しかけるのは、親仁殿くらいだった。

 それでも時が流れて、俺達も彼女を受け入れ始めた。彼女も俺達と関わるようになった。親仁殿を「おとうさん」と呼ぶようにもなっていた。そう、俺達は彼女を家族だと思えるようになっていたのだ。


 これは何だ? どうして、こんなに血の(にお)いに溢れているんだ?

「何だよ、これ……」

 思わずそう呟く。誰もが()(まみ)れで、恐らく息はないのだろう。半分の視界の中で、誰よりも血に濡れている彼女が見える。

「レイ……一体、どうしたんだよ」

 ぼんやりとした眼差しが俺を見つめる。どんよりとした、どこまでも(よど)んだ色をしていた。

「レイ……?」

「私がこれをやったの」

 小さな声だったが、それは確かにレイから発せられたものだった。その言葉の真意を、俺は(つか)みかねる。

「何言ってるんだよ」

 レイの言う〝これ〟が、目の前の事物を指すのなら、俺はそれを現実として受け止められない。レイは、数秒前まで生きていた魚を(さば)くことにすら(ちゅう)(ちょ)するような女だった。そんなレイが、人間の男達を殺した? そんなことを信じろという方が、俺には無理な話だった。

「私が、みんなを殺したの」

 レイは、目と同じくらいに淀んだ暗い声で告げる。

「冗談、だよな?」

 レイが嘘を言っていないことは、わかっていた。それでも、そう問わずにはいられなかったのだ。それは、〝信じられない〟のではなく、〝信じたくなかった〟からなのかもしれない。

「冗談なんかで、言うと思うの?」

 暗い瞳で、暗い声で、レイは俺を見続ける。その目に俺は映っていない。

 これは、目の前にいるのは、本当にレイなのか?

「ねえ、ハギラ。私を憎む?」

 どこか楽しそうにレイは言う。先ほどまでの暗い声が、嘘だったかのように明るい声音で。

「恨む? 呪う?」

 どこまでも、どこまでも楽しそうに。それはまるで、楽しい遊びを思いついた(おさな)()に似ていた。

「そうしたいなら、そうしていいよ。ハギラには、その資格があるのだから」

「勝手なことを言うな」

 俺が誰を憎もうと、恨もうと、呪おうと、そんなことはレイが決めることではない。それを決めるのは、誰でもない俺自身のはずだ。

「今は私を(ゆる)せても、いつかは赦せなくなる日が来る。どうしようもなく私を(いと)うときが、必ず来る。だって私は、ハギラから大切な人達を奪い取った張本人だもの」

 レイが静かに立ち上がる。大量の血に濡れた姿のまま、俺の立つ方へと足を踏み出した。

「ハギラ」

 歩みを止めず、レイは俺の(かたわ)らを過ぎ去ろうとする。思わずレイへと手を伸ばしていた。

「殺したければ、そうしてもいいのだから」

 耳を(かす)めたその声は、凛としているくせに(かな)しげな音を持っていた。それに気付いて、(とっ)()に振り向く。このままレイを行かせてしまったら、二度と逢えないのではないかと予感が走った。けれど、彼女の姿は木々の隙間に見え隠れして、やがて認識すらできなくなってしまった。

 殺したければそうしていい? 本気で、そう思っていたのだろうか。だとしたら、あの声音は何だったのか。俺に殺されることを、レイは望んでいるのだろうか。

 言葉が脳内に浮かんでは消えていく。(あて)をなくした手は、相手へと差し出す恰好(かっこう)のままで動きを止めていた。

 『きみとてをつなぐ』第2回、今回はハギラさんが主役です。

 さて、今回の主人公・ハギラさんについて、少々語らせていただきます。

 ハギラさんは、複数の名前を持っていたと記憶しています。実に簡単な理由ですが、データが消える度に名前を変えていたためです。つまり、本当のところどういう名前だったのか、それは私も憶えていません。ただ、濁点の付く名前であり、「ハギラ」というのもその一つであったことは確かです。

 そして、あまりはっきりとは書けませんでしたが、彼は隻眼さんです。昔、刀で斬られたために開くことができません。眼帯はしていません。眼帯って、個人的にはすきかもというかキャラ的においしいというかなんですけど(もちろん、二次元限定ですがね。イケメンは外せませんし、イケヴォだとなお良しです。……これは、おかしい発言でしょうか)、彼は刀傷むき出しでいきますね。

 次回は、再びレイちゃん目線でお送りします。

 それでは、次回もよろしくです。

 読んでいただき、ありがとうございました。

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