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終焉の種  作者: 犬井猫朗
序章 十五年前
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 …………赤い。


 窓はなく家具や壁紙、何もかも赤色に統一された部屋。


 普通の感性を持った者が一日でもこの部屋にいた ら気が狂ってしまうかもしれない。


 否、確実に発狂しているだろう。


 だが、この部屋の主――赤髪の青年は平気な顔をし 椅子の上に佇んでいた。



「………………ゲヘェ♪」



 青年は不気味に燃える“半透明の玉”を掴み、怪しく笑っている。


 “それ”は夜の墓場に浮かぶ火の玉にも似ていて、淡く蒼い炎を放っていた。


 だが、蒼い炎は普通の炎とは異なる。


 炎に触れる青年の手に、焼かれている様子などなく平然としていた。


 青年は知っていた、“これ”がなんなのか。


 例え知らぬとしても、自分を傷つけるモノは希少だ。


 それだけの自負はある。


 故に躊躇なく掴む。



「珍しいね、人間の魂か。

………まあ、だいぶ弱ってるみたいだけど。

このままだと持って数分ってところかな……」



 蒼炎は魂から漏れる生命力。


 当然、魂が持つ生命力は有限だ。


 無くなれば、無論消滅。


 だからこそ器が失くなった魂は、冥界へ連れられ其処で管理される。


 それが全ての世の理。


 だがこれは、どういう訳か此処に迷い込んでき た。


 この世界に踏みいるには、青年の力かこの世界 の“理”そのものが喚ぶしかない。


 だが、喚べるモノには少なくはない条件がある。


 青年に魂を喚ぶことは出来ない、ということはこの世界の理が喚んだとしか考えられない。


 あるいは………。


 “あいつ”の顔が一瞬浮かんだが、すぐに振り払う。



 この世界は常に何かを喚んでいるのだが。


 青年の知る限り、魂が喚ばれたのは初めての事。


 それほどのイレギュラーが起きている。


 だが、その理由を考える必要はない。


 世界そのものの真意など誰も知り得ないのだか ら。


 今は、他に考える事がある。


 この世界は喚ぶだけよんで後は放置。


 此処には幾多のモノが散らばっている。


 冥界にいけない魂はただ消滅するのを待つだけ。


 それに、魂だけでなく青年にも時間はない。


 魂は言わずもがな、このまま放置すれば消滅して しまう。


 青年もこの部屋を喚ぶのに力を使っている。


 “あいつ”は気づいている筈。


 今にでも現れてもおかしくはない。



「どうしょっかぁ……」



 別にこれが消滅しても何も困りはしないが。


 此をただ消滅させてしまうのは、勿体ない


 どうせ消えてしまうのなら、何か利用出来ないも のか。


 ただ流暢に考えている暇はない。




――――もうすぐ、あいつが………?!




「………ゲヘェ♪」



 青年は良いことを思い付いたとばかり、口元を上 へ上へと吊り上げていく。



「………君も運がいいね♪ 僕が助けてあげるよ♪ゲ ヘェ ヘェェ」



――――パチンッ!



 魂を左手に持ちかえると、右手の親指と人差し指 を擦り鳴らした。


 クロスした親指と人差し指の先、その空間に小さ な黒い孔が空く。


 その孔から真っ黒な液体がドロッと溢れ出てきた。


 まるで、奈落の底から溢れる漆黒の闇。



「……安心していいよ。

別に悪い話じゃない…… 君はもう一度生きられるんだ。

所謂、転生というやつさ♪」



 何でもないように軽い言葉でいう。


 青年には喚ぶことは出来ないが、放つことならば なんとか出来る。



「君からは魔力の匂いすら感じない……恐らく君は 地球の人間だろ」



 溢れた“黒液”は、何かを探しているかのように空中 をさ迷う。


 不気味に蠢き狙いを定める、街灯に群がる虫の様に魂に纏わり憑いた。



「だとしたら君も嬉しいだろう。

君に行ってもらう世界はアルレール。

魔法が存在するファンタジーな世界だ」



 地球人なら誰もが夢見るであろう魔法という至高の存在。


 地球で語られる幻想が存在する世界がアルレールなのだ。



「…………………それと、これを君に渡す」



 青年は懐から何かを取り出した。


 指に摘ままれているのは、小さな、しかし不気味な力に満ちた、ナニか。


 乾いた血の様な濃い赤色の“粒”。


 何処か禍々しさすら感じる“それ”を魂に触れさせた。



「これは確実に、君の力になるだろう。

良くも悪くもね……ゲヘゲヘへェ♪」



 触れた粒は、比喩でも何でもなく、本当に魂に沈みこんでいった。


呑み込まれたといってもいい。



――――ドクンッ!



 一瞬、心臓が鼓動するかの様に、魂が脈動した。



「……おっ、そろそろ時間みたいだな、さよーなら♪」



 纏わり憑いていた“黒液”が魂を全て覆い隠した。


 次の瞬間、跡形もなく霧散する。


 其処には魂も黒液もない、虚空となっていた。



「………ぎりぎり間に合ったみたいだね♪ゲヘェ

さて、僕も見つからないうちに行くとしますか………」




 そう言うと、青年の姿が部屋から一瞬で消えた。

















 誰も居なくなった赤い部屋。




 ――――――バチィッ!




 ノイズの様な音が響き、部屋自体が大きくんだ。




「………………“鳴”貴方は――――――――――」




 姿は見えない、凛とした女性の声が赤い部屋にて紡がれていた。





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