夫の趣味
夫は去年の夏から川釣りを始めた。まったくのビギナーではあるが、本人は楽しんでいるようだ。今年もようやく条件が整って、勇んで川に出かけた。
「どーだー! なかなかのサイズだろう? 今年の初釣果だが、去年のこの時期よりデカいぞ!」
夫はそういって意気揚々と帰ってきた。見るとなかなか丸々としたニジマスが二匹。
「久しぶりに天気も良かったしね。楽しかったんじゃない?」
「いやあ、良かった。本当はもっと釣れたはずなんだが、何度か途中でバレたんだ。絶対これより大きかったはずだ。三十センチはあったぞ」
よく逃がした魚は大きいというから実際はわからないが、持ち帰った魚は二十五センチはあった。引きが良すぎてバラしたというのだから勢いで話が大きくなっているわけでもないだろう。
釣りというのは釣りあげる喜びが一番だろうが、魚を呼び込む駆け引きや、引きを楽しむ喜びもあるという。今日は十分に堪能できたらしい。
「よかったねー」と話を切り上げようとすると、
「ちょっと待て、もうちょっと聞いてくれよ。ほらほら、写真もいっぱい撮ったんだからさあ……」
見るとスマートフォンに大量の川の風景写真が。
「これ……どれだけ撮ったの?」
「ん~。百五十枚くらいかなあ? いやあ、お前にどんなところで釣ってるか教えようと思って。ここ、新緑がきれいだろ? こっちは清流で……ああ、このアングル、いい感じで光が入ったのに! もう少しあっちに寄りたかった」
完全に目的がすり替わっとる。釣果は二匹だし。
夫の趣味は川釣りと写真撮影です……たぶん。
ちなみに夫は生きた魚に触れません(汗)
当然自分ではさばけません。意外とそういう釣り人、多いみたいです。
さばいた後は、写真自慢にもつき合わされます……。
【追記】「報告のほうが趣味になってるよね」と夫に言ったら、
「お前への報告は趣味じゃなくて、夫としての仕事なんだ」とかえってきました。
誰もそんな義務、与えてないぞ!