ふたたび
「あ」
久しぶりに聞いた自分の声。
若干違うような気もしたが、何回も確認してみたところ、やっぱり自分の声だった。
だが、陽気には喜べない。
辺りを見れば、ここは森の中。
現実に言葉が戻ってきたわけじゃない。ここは夢の世界。
あたしは自分の声を確認して、すぐさま湖へと向かう。似たような景色で方向感覚が掴めないが、湖の場所は何となく分かった。湖があたしを呼んでいるような感じがした。
湖の上にはあの女神が浮いていた。ゆっくりと瞑っていた目を開け、あたしを睨む。
あたしはにらみ返し、沈黙が続く。
この沈黙を破ろうにも、勢いできてしまったために、この後先のことを考えていなかった。何て言おうか、と考えていると女神が先に口を開いた。
「チャンスをあげましょう」
意味が分からず、あたしは繰り返した。「チャンス?」
「そうです。あなたは今後悔している。嘘をついてきたことを。罪を償いたいと。ですからチャンスを与えましょう」
「チャンス、って……? というより、あたしは嘘をつき続けたとか、してないんだけど。そいう言いがかり? はやめにしてもらえない? あたしは感情の赴くまま、ホニャララ教の知行合一? をやってるの。嘘をつく余裕なんてない」
溜まりに溜まっていたものが、次から次へと口から出てくる。
「だから、あたしから『言葉』を奪わないで。あんたが女神さまだろーが、ただのびしょびしょに濡れた普通の人間だろーが、男だろーが、どうでもいい。他に何でもするから、あたしから『言葉』を奪わないで」
感情を言葉にしたことで、今までせき止めていた感情もあふれだしてきていた。
目頭が熱くなる。
あたしの言葉を黙って聞いていた女は、ふぅ、と息を吐いた。
「そんなこと言われても駄目なものは駄目なのよ」
「どうしてよ!」
泣きじゃくり、こどものようだと思いながらも、訴え続ける。
「駄目なものは駄目なのです。理由はありません。そういうものなのです」
小さい頃にあった、大人に一般常識を説かれているような、そんな感覚。
「……不合理だ」
ぼそりと呟く。
「そんな不合理、あたしは認めない!」
「いいですよ。あなたが認めようが認めまいが、関係ありません」
直後、景色が歪んだ。視界がかすむ。
「猶予は一週間。それまでに変わっていないようなら、あなたは今のままです」
女の輪郭がゆっくりと湖に沈んでいく。
「まだ話は――」
言い終わる間もなく、あたしの意識は暗闇に引き込まれた。




