第3章 嫌な予感
【桜木】
朝。
今日の講義は3限から。つまりは午後からである。
今は9時半。まだ4時間ほど暇がある。
いつもよりスッキリ寝れた気がする。
桜木は大体毎日の時間に起きる。
特に規則正しい生活をしているという自覚はないが、昔からの癖だ。
このあとコンビニまで行き朝飯を調達し、TVを見ながらそれを頬張るのが桜木の日課だ。
俺はコンビニへ自転車を進める。
それにしても寒い。
今日は午後から雨も降るんだっけか。
確かに今日は空の色が曇りっぽう気がする。
俺はおにぎりと野菜サラダの購入を手早く済ませると、すぐに自宅へと帰宅する。
リモコンのスイッチを押すと、ニュースをやっている。
他愛ないニュースばっかりだ。
寒いだの殺人事件だの自殺があっただの、そんなのばっかりだ。
朝飯を食い終わり、桜木はTVを消す。
俺はベットにゴロリとする。
やることがない。
大学のテストだってもう少し先だ。今からやる気は起きない。
俺はスマホを取り出し何か新しい記事がないかを確認する。
・・・・何もない。
「あーなにか面白いことねーかなー」
俺はもう一度TVをつける。
TV画面には芸人が映り、あれこれウケを狙っている。
ちっとも面白くない。
TVのチャンネルを変える。
結局もとのにニュース番組に戻ってきてしまった。
俺は理科のことを考えていた。
昨日の理科はどこかいつもと違う感じがしていた感じが…する…。
気のせいだろうか。
もしかしたら変わっていたのは俺のほうなのであろうか。
分からない。
そもそもどうして俺はこんなことを考えているのであろう。
分からない。
うーんスッキリしない。
「昨日亡くなられた○×会社の安井武さんは普段から勤務態度も真面目で・・・」
TVからどこかで聞いたことある名が聞こえた気がするが、気のせいだろう。
【翔平】
俺は理科のことが好きだった。
小学生で初めて理科と出会った時からずっと好きだった。
今は美紀と付き合っている。
付き合い始めたきっかけは美紀のほうから告白してきたからだ。
何か文句あるだろうか。
可愛い子が告白してきた。
可愛いと思ったから俺は美紀と付き合った。
何も矛盾するところはない。
だが俺の心にはずっとモヤモヤした気持ちがある。
いや、訂正しよう。それが何かも自分でもハッキリと分かっている。
それは冒頭で述べた。
だけど理科は俺のものには絶対にならない。
俺にはハッキリとわかる。
理科は桜木が好きだ。
いや、これくらいのこと俺でなくてもハッキリとわかるだろう。
【桜木】
「いや、気のせいではないぞ。」
桜木はハッとした。
「安井武」、その名前を俺はハッキリと覚えている。
昨日南北線の電車の中で俺が出会った人物だ。
正確には俺のスマホの画面を覗いていた人物。
そして自分の女房に浮かれていた人物でもある。
そこまで考えて俺は疑問に思った。
「あいつ自殺なんてしそうだったか?」
俺の記憶が正しければ、奴、安井武は今も言ったように自分の女房にデレデレであり、そのことに生きがいを見出してるように見えた。
そしてそのことを同僚に自慢もしていた。
そんな奴が昨日の今日でいきなり自殺なんてするだろうか。
昨日あのあとなんかあったのか?
女房と喧嘩したとか?
可能性としてはあり得るがなんか腑に落ちない。
桜木はしばらく考え込んだ挙句警察にこのことを話してみることにした。
突然かと思うかもしれない。
だがどうしても気になる。
いや、正確にはなんか嫌な予感がするのだ。
どうせまだ午後の授業まで時間もある。
桜木は110番するか直接警察署に行くか迷った挙句、警察署まで行くことにした。
結果から言おう。
これは間違った選択だった。