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覗かれるスマートフォン  作者: ブタブタくん
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第1章 安らぎと異変

ぜひ感想ください!

【桜木】


12月。


寒い寒い、それに加えて星空が綺麗な夜道を俺は歩いていた。


決して俺の歩いているところが田舎過ぎて星空が美しく見えるのではない。

周りには俺と同じ大学生と思われる人物が大勢歩いている。


そして暇を弄ばせた大学生達が各々仲間達とショッピングを楽しんだり、飲食を楽しんだり、ボーリングを楽しんだり、そんな場所である。


まあ、田舎ではないんだよ、ということをアピールしたかっただけであり、今の説明に他意は特にない。


俺の歩くこの街は、俺が大学に入学した時とこれっぽちも変わらない。

俺はスマホで音楽を聞きながら、静かにそしてゆっくりとこの街を歩いている。


俺、桜木は大学生、21歳。彼女いない歴年齢。


黒髪短髪、中肉中背で身長は人並み以上といったところであろうか。


他人からは顔は悪くはないと言われる。


しかしどうも女の子とは友達止まりで止まってしまうことが多い。

やたらとその辺のことに関しては縁がない。


まあ、人並みに、いやそれ以上には友達はいるとは…思う…。


女友達だって割といるっちゃいるのだ。


夜道とはどこか。

大学から駅までの道のりである。


もうすぐ俺の大嫌いなクリスマスなのもあって、街並みは俺そういった気心にも関係なくどこか陽気だ。


「おう、桜木!帰りか?!」


桜木は振り返る。翔平のようだ。

機嫌がとてもよい。

ように見えるが実際どうなのだろうか。


翔平はいつのあんな感じだ。

いつどんな時でも機嫌が良さそう…に見えるが実際彼と仲良くなってみると、彼は意外と思慮深かったりする。


「今日俺んちで鍋パするんだけどこないか?」


「んーどうしよ。」


俺は考える振りをする。


「家に弁当買ったの残ってるし今日は遠慮しとくわ」


「なんだよ~俺たちの中だろ~」


翔平は馴れ馴れしく肩を組んでくる。

全く暑苦しい奴だ。


「あっそうだ」


翔平はは思い出したように続け、


「理科も来るってよ」


俺の眉毛が少し動く。


「あと~美紀も来るってさ」


「まあそれはそうだろうな」


美紀は翔平の彼女だ。


「どうだ?やっぱやめとくか?」


「ん~どうしよ。やっぱ行こうかな。お前が女の子2人と鍋パとか許せん」


「そうこなくっちゃ。」


翔平はうんうん頷きながら、


「じゃああとで理科と買い出しに頼まれてくれないか?」


と言ってきた。


俺は少しだけわざとらしげに時間をあけ、


「いいだろ。しかし酒代はお前もちだ」


と言ってやった。


翔平ははいはい、と頷きながら、


「じゃあ先に俺んちに行くぞ」といい、俺は招聘を肩を並べ商店街を歩いた。


夜なのもあってやっぱり外はとても寒い。

意外と今晩鍋を食えるのは嬉しいかもしれない。


しかしカップルが多い中野郎2人でクリスマスの外を歩くのは流石に寂しいものがある。





翔平の家に到着した。翔平も俺も一人暮らしをしているが、場所はかなり離れている。

というのも俺は訳あってほんの少しだけ遠くから電車で通学しているからだ。


しかし桜木はそのことを後悔していた。

その一番大きな理由が通勤ラッシュだ。


桜木の利用している北南線は東京横浜を繋いでる線だけあって朝夜の通勤ラッシュが半端ない。

俺はいつものその電車の中が退屈だった。


座れはしないし本も開くことはできない。

できることといえばスマホで2chまとめサイトを巡回したりするだけ。


というかそれさえも厳しい。


というのも電車の中が混みすぎてスマホでネットサーフィンをしていると他の乗客がおれのそれを覗いてくるのである。


桜木はそれがたまらなく嫌いだった。




翔平の家に入る。


靴を脱ぎ奥へ進む。


もう何度も来たことのある家だ。間取りは分かっている。


「おいおい靴くらい揃えろよ」


翔平が後ろで言ってる。意外とこいつは几帳面だったりするんだよな、と思いつつ、


「悪い悪い」と適当に返す。


ドアを開ける。

暖かい空気に身が包まれる。

もう何度も見ている見慣れた部屋だ。


部屋の大きさは8畳といったところだろうか。

一人暮らしするには広い部類であるといっても差支えはないであろう。

入って一番奥の窓際にベッドがあり、そして部屋の真ん中には、こたつを兼ねたテーブルがある。


本棚も入って右のところに存在し、何やら難しそうなほうがたくさん詰まっている。

翔平はこうみえて色々知っていて博識だ。

昔から頭もいいのになんで俺や理科と同じ大学に進学したのか俺はずっと前から不思議だった。


昔翔平にその理由を訪ねたが、


「お前には関係ねーよ」


と言って教えてくれなかった。


部屋の真ん中のこたつには既に見慣れた女性が座っていた。


「おっ、桜木来たんだ~」


この子は美紀。先程も言ったが翔平の彼女だ。髪はショートで軽い茶髪。身長は160と言ったところだろうか。

性格は極めてサバサバしていてボーイッシュな側面もある。男にも人気が高かった。

翔平のやつ・・・羨ましすぎる・・・。


「おうよ。悪いな参加させてもらうぞ。」


俺も簡単に挨拶をする。


俺がこの子と会ったのは大学に入ってからだ。

大学に入学してまだ何もわからない俺の隣に同じ1年生としてたまたま座っていたのだ。


美紀はそんな俺に対して懇切丁寧に色色と教えてくれた。

単位の取り方、サークルの噂、バイトの紹介まで色々と。


だから俺は彼女に頭が上がらない。

今もこうして仲良くさせてもらってる。


「なんで?どっかで桜木とあったの?聞いてなかったけど」


「あぁ、さっきそこで偶然会ったんだ。まあいいだろ?」


「大歓迎だよ!外寒かったでしょ~。イケメン君と飲めるなら私も嬉しい!今日はいっぱい飲むぞ~!」


美紀は俺に体をこすりつける。

やばい・・いい匂いがする・・・。

っていうかもう酔ってたりする・・・?


コホン、と翔平は咳をし、辺りを見回すと


「あれ、理科はどこだ?」


と尋ねた。

そういえばそうだ。どこにも見当たらない。


「ああ、理科ならもう買い出しに行ったよ~!」


翔平はあちゃ~といった感じで頭を抱えた。


「すれ違いだったか~」と翔平は心配する。


「そうみたいだね。うーん一人で大丈夫かな~」


俺はこたつに入ろうとしゃがんでいたが。


「あ、俺今から追うわ。流石に一人じゃまずいし、元々俺が手伝ってあげる約束だったしな」


と言って立ち上がっでジャケットを再び羽織った。


翔平と美紀は顔を見合わせると


「うーん、じゃあお願いしちゃおうかな~」


と美紀が言ってきた。


「任せろ」と俺は言い、玄関へ向かった。


「走ればすぐ追いつくと思うよ~。理科が出て行ったのついさっきだし~」


「了解了解」


俺は玄関からでて駆け足で夜道を進む。


相変わらず外は寒く俺は少しだけ買い物を任されたことを後悔し始めた。


後ろでドアから半身を乗り出した翔平が


「ゆっくりそんなに急がなくてもゆっくり買い物してきて大丈夫だからなあ!」


と叫んでいる。


俺は右手を挙げてわかったというサインをだし、駆け足をやめ早足で歩き始めた。


しかし翔平と美紀のあの感じ・・・

俺がいない間にやるつもりだな・・・


ったくバレバレなんだよ


ラッキー、みたいな顔をお互いにしちゃってさ。


ちくしょう、今から戻って驚かしてやろうかな。


とか考えていると、すこし目の前を黒髪ロングの知っている女性が歩いていることに気がついた。



間違いない、理科だ。


俺は早歩きを止め駆け足に切り替えた。

相変わらず星は綺麗である。


肩を叩くと彼女は驚いた顔で振り返った。


「そんなに驚くなよ。」


おれは笑ってみせた。


理科は最初まだ驚いていたが、すぐに笑顔になり、


「なんだ、桜木君か・・・。びっくりしたぁ。どうしたの?」


俺はこれまでの経緯を語ってみせた。


理科は俺の幼馴染である。幼稚園、小学校、高校、そして大学まで全部同じだ。

翔平も全く同じ。


翔平と理科とは20年近くの付き合いになるということか。


理科は美紀などと違いとてもおとなしい性格だ。

身長は165くらい、髪は黒髪ロング。清楚っぽい感じ、それに加えて少しどんくさいところももあり、男には人気が高い。


その反面俺や翔平以外の男としゃべっている様子を殆ど見たことがない。


昔からいろんな男から交際を申し込まれているという噂はよく聞くが、本人は全部断ってるようだ。


「そっか桜木君も参加するんだぁ。私桜木くんも一応誘ってみようとしたんだよ?何度も電話したのに。なんででなかったの?」


「え?」と桜木は確認すると、俺は急いでポケットからスマホを取り出し着信履歴を確認した。


・・・めっちゃ電話がきていた。


「あーすまん。気づかなかったわ」


「そんなところだと思ったぁ」


理科はくすりと笑いながらそう言った。


「桜木君って昔から携帯ばっかりいじってるイメージだったから気がつかなかったなんて意外」


理科は昔から俺のことを苗字+君付けで呼ぶ。


せめて呼び捨てで呼んでくれてもいいものを・・・


「まあいいやゆるしてあげる」


昔から理科はこうだった。どんなことでも笑って対応してくれる。

決して怒ったりはしない。


だけどそれは決してへらへらしているというわけではなく、むしろ逆に、自分の信念というものを決して曲げることのない我の強い女の子であるということも俺は知っていた。


俺らが中学生だったとき、いじめっ子にクラスで一人だけ立ち向かったのもこいつだけだったっけ。


あの時は大変だった・・・。


「お前寒くないのか?」


「うーん、寒い」


理科はえへへと笑いながらそういう。

まったくこいつは・・・


「ほらよ」


俺は自分のジャケットを脱いで理科に渡してあげる。


氷のような冷気が俺の肌に突き刺さる。


「ええ~いいよ大丈夫だよ」


「そう言うな。お前が風なんか引いたら俺が大学の男子共に怒られちまう」


「わかったわかったわかりましたぁ」


理科はおとなしく俺のジャケットを羽織る。


「桜木君のジャケットあったか~い」


「そうか、そりゃよかった。」


俺はそっけなく言ってみせた。


他愛もない話をしながら俺らはスーパーへ向かう。


スーパーまでの道、そして帰り道はあまりにも短く、そして同時に永遠の時のようにも俺には感じられた。


それは今の俺にとってかけがえのない時間であり、そしていつか俺は今こうしていた時間を、雲のようにふわふわとした時間を、続けていければよかったのにと後悔するのかもしれない。





翔平の家についたのは俺が翔平の家をでて40分後くらいだった。

時間がかかってしまったように感じるかもしれないが、これでもかなり急いだのである。


今は女性陣がキッチンに立ち、鍋をつくってくれているというわけだ。


ニートの俺と翔平は何をやっているかというと、そんな彼女たちのことなどおかまいなく、TVゲームに夢中になっていた。


ついでに俺と理科が翔平の家に帰ってきたとき、家にいた2人の様子はどうだったのかというと、なんの変哲もない顔で俺と理科を迎え入れてくれた。


まあでもベッドを確認したらなんか俺がでかける前より荒れていたのは言うまでもない。


美紀の服装もどこか少し乱れているような気がしなくもない。


俺がニヤニヤしていると、翔平はそんな俺の様子を察したのか察してないのかは知らないが、


「早く部屋に入れよ寒いだろ」


と俺と理科を部屋に迎え入れたのだった。


「翔平ズボンが前と後ろ逆だぞ」


「え!?」


翔平は急いで確認した。まったく頭がいいんだか馬鹿なんだかわからない奴だ。









【翔平】


翔平は桜木に全てを悟られていることを悟った。

全く桜木は昔から鋭いやつだ。


桜木は昔から自分のことをよくわからない理由で慕ってくれていたが、俺から言わせれば桜木の方がずっと俺なんかよりも賢いと思っていた。


この場合の賢いとは単に成績が良いということを指すのではなく、もっとこう・・・言葉にあらわすのが難しい意味だ。


俺はゲームをやりながらちらっと桜木の顔を盗み見る。相変わらず端正な顔立ちだ。

なんでこいつに彼女がいないんだろう。

浮いた話の一つや二つあっても良さそうなのに全然そういう話を聞かない。


俺が一目置いているこの男は、どこか機嫌が良さそうだった。


俺と桜木があったのは幼稚園のときだ。


その時既に俺と理科は仲がよく、よく2人で遊んでいたものだった。

たしか年中のときに桜木も俺たちの仲に入るようになり、それからずっとここまで一緒というわけだ。


たしか理科はずっと男の子と遊んでいたからよく虐められていたっけ。


昔は理科はとても活発な女の子だった。

それに比べて今はかなりおとなしい。

いや、いい意味で女の子らしくなった。


美紀みたいな女の子とは正反対というか、どちらかといえばおしとやか、という表現が正しいのであろうか。


やがて食事が始まった。

皆でテーブルの真ん中の鍋を囲む。


鍋は冬の定番メニュー、キムチ鍋だ。


「ねーねー何点?」


美紀が鍋の点数を俺に求めてくる。


「うーん・・・満点!」


俺は右手でOKサインを出しながら最高の評価を下してやった。


「やったー!桜木くんは?」


「そうだな・・・」


桜木はしばらく間をとったあと、


「うん、うまい。これは満点だ」


「ありがとうー!よかったね、理科!」


「うん。」


理科も嬉しそうだ。


満点をあげた甲斐があるというものだ。


俺たちは他愛もない話をしたあと、テレビをつけた。

最初はバラエティ番組を皆で笑いながら楽しんでいたが、鍋も食べ終わりしだいにそれにもあき始めたので、

結局最後はニュース番組をみることで落ち着いた。


「えー最近本邦で自殺者数が増えているという社会問題について、」


「ぶっそうな世の中だな」


桜木が言った。


「そうねぇ。はっきり言って自殺するなんて私は信じられない」


理科が言う。


「そうだな~」


俺もテキトーに返事をする。まあ俺らには関係のない話だ。

俺らの誰かが自殺をするとは思えないし俺だってするつもりなんて毛頭ない。


「桜木あたりは一生女の子にモテず・・・ありえない・・?」


美紀が意地悪そうに言う。


美紀のやつ結構結構酔ってるな。こいつ酒弱いくせに結構飲むからな・・・。


「ないないないない」


桜木はいつもはもう少し美紀に対しては遠慮気味に話す。

桜木も少し呂律が回ってない気がしなくもない。


気がしなくもない、というのは俺は未だにこいつのことがイマイチつかめなかったりするからだ。

幼稚園時代から一緒にいるのに、俺には桜木の本性、いや本性というほど大層なものでもないが本音みあたいなものがはっきりと見えてこなかったりする。


でも先程も少し述べたように、どこか察しが良かったりする。


実は


俺はそんな桜木のことが少し、ほんの少しだが怖かったりした。


「そんなこと言って~。どうせクリスマスも暇なんでしょ~?」


「ええ、暇だけど?」


「へ~かわいそうに。いっそ理科と付き合っちゃったら?お互いフリーでしょ?さっきも桜木のジャケット理科が着てたじゃあん?」


桜木は少しだまり、


「まあ俺も優しいからな」


とわざとらしく言ってみせた。


理科も笑ってその様子を楽しそうに眺めている。


「まあでも」


と俺も加わり


「なんで自殺なんてするんだろうなぁ?俺にはさっぱりわからねえよ」


と話題を変えた。いや、正確には元に戻したというべきか。


「私もそれは不思議」、理科は言う。


「あ、でも私聞いたことがあるよ!」


美紀が大声をあげる。


「なんか人を自殺に導く機械?みたいなのがあるらしいよ!」


「なに言ってるんだお前」


俺は笑って見せた。


「いやいやホントだって。ネットでみたんだよ~。都市伝説だけどねえ」


「へーそれはすごいでちゅねー」


「あー信じてないな!」


「当たり前だボケ」


美紀はぷーと口を膨らませるとぷいっと顔をそらした。


テーブルが笑いに包まれたところでそろそろ鍋パがお開きということになった。


そろそろ俺以外の帰りの終電がやばい。


今日は美紀は泊まっていくんだっけ?









【桜木】


俺と理科は翔平宅をでた。

終電まではなんだかんだでまだ時間が結構あった。


とりあえず駅まで急ぐか。


美紀はまだ翔平の家に用事があるらしく(とはいっても桜木は大体察していたが)、またさっきと同じように俺と理科が夜道を歩くといいう状況になっている訳である。


「ほらよ」


俺はさっきと全く同じ声をかけてジャケットを理科へ渡した。


理科は今度は素直に受け取った。


「ねえ、桜木君。」


「ん?」


「その・・・寂しかったりしない?」


「ん?いきなりどした?」


「え、いやなんでもないの」


「そうか」


え、なにこの空気。


満点の星空の中、俺は風呂に入っているわけでもないのに、頭がポカポカし、クラクラし、のぼせそうだった。

それはおそらくアルコールのせいであると思われ、そうに違いないと俺は自分で納得してしまったのである。


そして駅までの距離が、さっきのスーパーまでの距離とは比べ物にはならないほどゆっくりと感じられ、それは鳥の羽がゆっくりと地面に落ちる様にも感じられた。


しかし駅についてみると意外と時間は経っていないもので、終電までは全然余裕があった。


俺と理科は電車では正反対の方向だ。

俺と理科はさよならを言って別れた。


別にいつもと違うサヨナラを言う必要はない。


・・・・・・だって別にいつもこうだし別に構わないではないか。




電車の中に入るとまだ中はめちゃくちゃ混んでいた。

終電近いのにこんなに混んでるとはさすが南北線。


俺は自分でもよくわからないものから気を紛らわそうとスマホをとりだした。


俺の後ろで2人の会社員がぺちゃくちゃしゃべっている。


「あー今日恭子の奴がさーしたっぱのくせに俺にたてついてよー」


「あいつうざいよなー。ああいう奴とは絶対結婚したくないわ」


「そうそう。それに比べて俺の女房は最高だよ」


「その話はいいっすわ・・・」


「まあそう言わず聞けよ。昨日も晩飯が最高っでよ。俺はこのために毎日頑張ってると言っても過言じゃないよ」


「そ、そうですか」


どうやら社内にいる女性の悪口を言っているようだ。

片方は結婚済み、片方は未婚ってところかな。


「あっじゃ俺はこの辺で」


未婚の方の男性が駅に到着したらしく、先にでてく。


「おう、おつかれー」


俺は手元のスマホの画面を見ている。

まとめサイトを巡回し、なにかいい情報がないかを散策する。


と、後ろからの視線に俺は気がついた。


さっきの結婚済みの男だ。


どうやら電車が混んでいるのをいいことに、俺のスマホの画面を食い入るように凝視しているようだ。


まったく暇な野郎だな・・・。


俺は横目で後ろの男を確認する。


男は首から社員証を下げている。


「(えーと・・・○×会社の安井武か・・・)」


ったく勘弁して欲しいぜ。


俺はスマホをスリープ状態にし、代わりに音楽を聴きスマホをポケットにしまう。


安井は飽きたようで、自分の携帯を弄り始めた。


電車は進む、進む、進む。夜道を進む。


そして俺は自分の駅に着いた。


俺は家に帰って次の日の授業に備えて寝た。


今日はよく眠れそうである。









安井武は日付けが変わると同時に自殺した。





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