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第七話・レインロード!

ドロヨケが無いと、背中が汚くなっちゃうね。

翔太とロードバイクの男は

浅羽峠を抜け、猛スピードで工業地帯に突っ込んで行った。


●浅羽工業地帯●


翔太(雨でよく見えないけど、それでもはっきりと分かる、どす黒い雰囲気…)


カチカチカチ…


翔太がシフトアップした。


翔太(ブラッキーのロード乗り…風見刻斗(かざみこくと)だ!)


刻斗が余裕の表情でじりじりと追い詰めてくる!


翔太『くっ…!』


翔太はハイギヤにシフトアップしたが、

その隙を狙って刻斗が一気に追い上げてきた!


刻斗(もう全力で走っているのか…脚質はパンチャーだな。

   残念だが、所詮パンチャーはスプリンターの劣化版だ。)


翔太『まだだ…!』


刻斗『まだ、だって?』


翔太は、いつの間にか真横に並んでいた刻斗を見て驚いた。


刻斗『それはどっちかって言うと…

   ボクの台詞だと思うんだけどなぁ。』


カチ…カチ。


刻斗は、シフトアップした途端、見る見る内に加速し

たったの数秒程で、翔太は10メートル以上離されてしまった。

この時、翔太のサイクルコンピュータは48キロを表示していた。


翔太(こ…殺し屋…。)


翔太は漕ぐ事を止めた。


●IGAサイクル・一号店●


輪蔵『どうだ孝!このエロ本は!』

孝『うっひょー!ぼいんぼいん…たまんねー!』

輪蔵『カナちゃんのパイパイはもう…うほほほ…!』

剛『孝、お前エロいぞ!』

孝『お前こそ、さり気無く覗いてんじゃねーよ!』


バタン!


ドアが開いた。


翔太『……』

孝『しょ、翔太…?』

翔太『……く…』

輪蔵『久し振りだな、翔太。』

翔太『ブラッキーの…風見刻斗にボロ負けしたよ…。』

剛『ブラッキー!?』

孝『お前、もう一人の方に会っちまったのか!?』

翔太『もう一人の方って…まさかお前、榎寛太郎(えのきかんたろう)に会ったのか!?』

孝『会った…ってかお前と同じで、瞬殺だったぜ。』

翔太『ボクは瞬殺されて無いよ!』

孝『そ、それならオレだって20秒は持ち堪えたぜ!』

翔太『なら、ボクは30秒だ!』


(えのき)寛太郎(かんたろう)

殺し屋と呼ばれる走り屋チーム、ブラッキーの二人の内、一人。

工業地帯のすぐ近くの浅羽峠でのダウンヒルバトル担当のMTB乗り。

担当の通り、ダウンヒルでは随一と言っていい程の速さで

浅羽の下りで追い抜かされた時、殆どの場合は彼である事が多い。


風見刻斗(かざみこくと)

ブラッキーのリーダー。

本来のホームコースである、どこかの工場の外周

あるいは工業地帯をはじめとするフラットな場所でのバトル担当。

稀にヒルクライムバトルにも応じる。

軽量と脚力を生かした加速と最高速度が売りで

刻斗が後ろに付いたら、もはや抜かれる時を待つしかない。


輪蔵『ここらはブラッキーのテリトリーだ。

   これ以上、工業地帯を走ると恥を掻くだけだぜ。』

翔太『そんなの、腑に落ちないよ!』

輪蔵『おっと、翔太。オーバーホールと、例の品だ…マシンを貸しな。』

翔太『あっ!そうだった。』


翔太は輪蔵にMAXREV・(マックスレブ・)BlueMagnum(ブルーマグナム)を渡した。


剛『それにしても、どうしてダートな宝野公園でロードバイクなの?』

孝『トンチンカンだからさ。』

翔太『違うわい!』


翔太『ボクがBlueMagnumに出会ったのは、小四の頃だったな。

   あの頃も、今程じゃないけど自転車は流行ってたんだ。

   それで、初めて乗るスポーツバイクに感動してさ。

   学校が終わったらすぐに乗って、夜中に帰ってはお母さんに咎められて。

   没収されたりもしたなぁ。』

剛『結構小さい頃から乗ってるのか…大切にしてるんだな。』

翔太『でも…五年の頃の、あの出来事が起こらなかったら

   今のボクは、BlueMagnumに乗って無かったと思う。』

剛『あの頃の出来事って?』

翔太『クラスの自転車乗ってる奴等が集まって、オフロード大会を開いたんだ。

   当時、MTBが一番人気だったからな。

   でも、ボクが乗ってるのはロードバイクだった。

   だから、皆に馬鹿にされたんだ…凄く悔しかった。

   一応、大会には参加はできたんだけど、アップダウンが激しくて

   地面に凸凹も多い、ロードには過酷なコースだった。

   MTBならスラスラ進める様な砂利道も

   ロードバイクは真っ直ぐさえ走っちゃくれない。

   だけど、悔しくて悔しくて、無我夢中でペダル漕いでたら

   いつの間にか優勝しちゃっててさ。

   いじめられっ子だったボクは、その日以来、英雄扱いされたよ。』

剛『す、すげぇー!

  思い入れのある、大事なマシンなんだな!』

孝『あー、くどい!オレ、人生でその話、もう五回は聞いたぜ!』

翔太『思い知ったか―!』

孝『思い知らねー!』

翔太『何をー!』

孝『やるか!?』

剛『ま、まぁまぁ…』


●長谷川食品工業所前●


寛太郎『来たか。』

刻斗『にしても凄い雨だ。』

寛太郎『お前の事だから、ちょっかい掛けてみるんだろ?』

刻斗『もちろん。まだまだボクには及ばないけど…

   (わざわい)の芽はちゃんと…摘み取っておかないとね。』

寛太郎『確かに、チームカミカゼ…一瞬で抜けない奴なんて、久しぶりだぜ。』

刻斗『あいつ達はIGAサイクルの一号店にいる筈。

   待ち伏せして、出てきた所を尾行しよう。』


●IGAサイクル・一号店●


輪蔵『よし、一連の作業は完了だ。』

翔太『できたんですか!?』

輪蔵『細かい調整はお前自身でやれよ。』

翔太『わぁー!すっごーい!

   クランクが軽くなってる!』

輪蔵『BB(ボトムブラケット)のベアリングが痛んでたからな。交換しといたぜ。』

翔太『ハンドルの…この感覚…!』


翔太のマシンのダウンチューブとフォークをバネが繋いでいた。


孝『輪蔵さん、このパーツは…?』

輪蔵『このパーツはな、ホイールスタビライザーっていう特注品だ。

   ハンドルから手を放すと、このバネがフォークを引っ張って

   勝手にフロントタイヤが正面を向くようになっているんだ。』

剛『これに、どんな意味が…?』

輪蔵『ハンドルを取られ難くなるんだ。

   転倒の確率が減るし、路面が悪い状態でも直進性が上がる。

   その上、ハンドルの操作が軽すぎて頼りないって場合には

   ある程度抵抗を持たせる事によって、安定感を与える事ができる。』

翔太『宝野や西名を走るのにはベストなカスタムだと思うんだ。』

孝『やるじゃん。意外と頭いいんだな!』

翔太『馬鹿にしてんだろー!』

孝『しってなっいよーん!あっ!

  輪蔵さん、おっぱいの続き!』

輪蔵『よっしゃー!』

翔太『輪蔵さんもなんでエロ本読んでるんですかー!?』


剛(何で、この部屋にいると心が落ち着くんだろう。

  落ち着く…?と言うよりもむずむずする感じかな…?)


数十分後…


孝『よし、そろそろ帰るか!

  翔太くんが合羽持って来てくれた事だし!』

翔太『おい、報酬は!?』

孝『交流戦でお前の(かたき)取っただろ、それで貸し借りは無しだ!』

翔太『ムキーッ!』

剛『ありがとうございましたー!』

翔太『ありがとうございましたー!』

輪蔵『おう、また来な!』

孝『輪蔵さん、それじゃ失礼しまーす!』


バタン…

ドザー………


剛『どっひゃー!バケツをひっくり返したみたいな雨だな。』

翔太『たっめし乗りー♪』

孝『あいつ等と遭遇しない内に、とっとと帰るぞ!』


●浅羽工業地帯●


翔太『おーペダルが軽い!

   フィーリングが全然変わったよ!』

孝『流石は輪蔵さんだぜ!』

剛『かーっぱかっぱ。』


寛太郎『あのロードの奴…翔太だっけか?

    だいぶ弄って貰ったみたいだな、マシン。』

刻斗『マシンをカスタムした程度の事なんて

   気にする程の脅威でも何でも無い…見失う前に尾行だ。』


●浅羽峠・麓●


孝『こっからは上りだ、がんばろう!』

剛『ひえー。』

翔太(…?)


刻斗(…!)

寛太郎『どうした、刻斗。』

刻斗『翔太の奴、ボク達の存在に気付いたみたいだ。』

寛太郎『マジかよ?』


翔太(この感じ…いるのか!?

   後ろに…殺し屋が…!?)


刻斗『寛太郎は、バレない様にもっと後ろから尾行していてくれ。』

寛太郎『ヒルクライムか、久しぶりだな。』


刻斗はペースを上げた。


翔太『近づいてくる…!?』

剛『な、何が!?』

孝『まさか!』


翔太『ブラッキーの刻斗だ!

   や、奴はボクとバトルしようとしている…!?』

孝『ヒルクライムはオレじゃ無理だし…

  翔太、頑張ってくれよ!』


翔太もペースを上げた。

刻斗は翔太の横に並んだ。


刻斗『勘が鋭いね。中々、放って置けない存在だ。』

翔太『くっ…』


寛太郎(平地だろうが、上りだろうが、刻斗に勝てるやちゃいねぇよ。)

剛『翔太…!』


翔太にリベンジのチャンスが訪れた。

不気味なオーラを放ちつつ、迫り来る漆黒のブラッキーの刻斗。

新兵器を装備したBlueMagnumを、翔太はどう操るか…!?

☆マシン図鑑☆

MAXLEV・(マックスレブ・)CITRUS(シトラス)

 アルミフレームの初心者向けクロスバイク。

 このクラスではもっとも軽く、そして剛性も中々高い為

 初心者向けながら走行性能は高く、上級者にも人気。

 新車価格は63400円。

搭乗者・西口(にしぐち)康史(やすし)

カラー・ミントグリーンソリッド

康史仕様…フレーム、フォーク以外の殆どのパーツは

     1ランク上の物にグレードアップされている。

     また、西名通りに最適なチューニングである。

※自転車、およびメーカーは全て架空の物です。

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