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第三話・V20の咆哮

カミカゼVSインペリアルズですね。

主人公、剛の影が薄くなってきてます。

●西名通り●


孝『森田先輩!』

健吾『孝、それに剛も!よく来てくれた!

   インペリアルズと対談をしたんだが、やっぱり交流戦をする事になった。』

孝『そう来なくちゃ、面白くないっすよ!』

健吾『ただ、翔太が少し落ち込んじまってな…

   おちょくったりしないで、暫くそっとしてやってくれ。』

孝『そんな事する気、無いっす!安心してください!』

健吾『雅人。カミカゼのチームメンバー、全員揃ったぞ。』

雅人『8人か…こっちも8人だが一人はチューナーだ。

   そっちも一人負けて減ったし

   半年前と同じく一対一ずつのバトルで決まりだな。』


このチョイワル系の男は田原雅人たはらまさと

西名インペリアルズのリーダーで、巧みな変速術と強烈なトルクで有名。

半年前のカミカゼとの交流戦で健吾に負けており、根に持っている。


雅人『康史!今日もお前はバトルしなくていい。

   その分、マシンのチューニングに集中しろよ。』

康史『ざ、残念だなぁ。

   久しぶりに他のチームと走れると思ったのに。』


西口康史にしぐちやすし

バトルよりチューニングを得意とする、西名インペリアルズの専属チューナー。

バトルも好きだが実力が乏しい為、滅多にバトルをさせてくれない。


雅人『健吾、オレとお前とのバトルは一番最後だ。

   チームリーダー同士のバトルは最後の方が盛り上がるだろう。』

健吾『賛成だ。楽しみは最後に取っといた方がいいしな。』

雅人『半年前のオレだと思ってると痛い目見るぜ…!

   今度はオレがお前を叩きのめす番だ!』

健吾『どうかな…オレだって半年前とは違うぜ。』

雅人『強がりを言うな!西名通りは、公園の様なお子様コースとは違うんだよ!』

健吾『まぁ、お互い頑張ろうぜ。』


両チームのメンバー達が準備を始めだした。


孝『久しぶりだな、卓夫。

  相変わらずお前のチャリはボロボロだな。』

卓夫『見た目で判断してんじゃねぇ。このマシンで

   お前のチームのロードのチビ野郎をボロ負けにしたんだからな。』


石上卓夫(いしがみたくお)。西名インペリアルのナンバー2。

康史とは対極的で、バトルは得意だがチューニングの方は全くできない。

バトルの面でも、無駄の無い走りを得意とする雅人に対し

卓夫は兎に角パワーだけを追求する様な走りを得意とする為

こちらも対極的と言える。


孝『なるほど、翔太を負かしたのはお前だったんだな。

  あいつの敵は取らせて貰うぜ。』

卓夫『オレのマシンはTAKAMATSU・(タカマツ・)D-METAL(ディーメタル)だ。』

孝『それって、あんまり売れなかったから二か月で

  廃盤になったマシンだろ?かなり希少なんじゃねえか?』

卓夫『そんな事はどうでもいい。とにかくオレはこいつをバトルに使ってるだけだ!』

孝『オレのはMAXREV・V20だ。とことんやらせて貰うぜ。』


一方、剛は…


剛『へぇー、変速機にも色々あるんだな。』

康史『西名はアップダウンが多くて、路面が荒いから転がり抵抗が大きいんだ。

   だから、ギアはクロスレシオにした方がいいんだけど

   ボク達のチームは脚力が突出して強いから、ギヤに頼らなくても速いんだよ。』

剛『そんなに自転車に詳しいのに、どうしてバトルは苦手なんだ?』

康史『バトルとチューニングは全く別だよ。

   あそこのボロボロの自転車の奴、あいつはバトルの腕前は一流なんだけど

   チューニングの技術は皆無で、タイヤ交換すらできないんだよ。』

剛『へぇー。』

康史『ところで、キミはカミカゼのチームメンバーなのかい?』

剛『いや、オレの友達がカミカゼのメンバーなんだ。

  一応オレも自転車やってるんだけど、まだ未熟だからチームには入れてない。』

康史『キミとバトルしてみたいなぁ。たぶん雅人は許してくれないと思うけど…。』

剛『オレも真剣なバトルはした事、無いからなぁ。』

雅人『康史、口ばっかり動かしてないで、手を動かせ!』

康史『わ、悪い悪い。って訳で、ボクは集中するから…』

剛『分かったよ。迷惑掛けてごめんな。』

雅人『………何だ…?あいつは…。』

  (あいつからは何かを感じる…。

   見た感じはただの初心者だが、オレの第六感が確実に何かを感じている…!)


●茂みの中●


翔太『ちくしょう…!』

  (あんなオンボロ野郎にケチョンケチョンに負けるなんて!

   砂利に足を取られなければ負けてなんか無かったんだ…!)

  『ちくしょおおお!』


●西名通り●


健吾『オレ達は準備完了だ。』

雅人『こっちも、もうバトルできるぜ。』

健吾『よし、剛!カウント係やってくれ!』

剛『はい、先輩!』

卓夫『まずはオレとこいつとのバトルからだ!』

孝『おう、絶対負けねぇ!』

雅人『いいだろう。』

健吾『同じく。』


卓夫と孝がスタートラインに着いた。


剛『5・4・3…』

卓夫(このコースはアップダウンが激しいが

   そんなことよりも路面状態が勝負の決め手となりやすい。

   アスファルトに砂利や小石が散乱していてスリップしやすいからな。)

剛『2・1…』

孝(コースの特性上、高速で攻めるのは危険だ。

  アップダウンに荒いアスファルトの路面抵抗は体力的にもマズいし

  所々散乱してる砂や砂利を踏むとスリップの危険がある。

  ここは相手の後ろで隙を突いて抜くのが無難だな。)

剛『ゴー!』


カミカゼ対西名インペリアルズの交流戦、第一回戦が始まった。


雅人『卓夫が前だ!』

健吾『流石、パワーは段違いだ。

   まぁ、慣れないコースでの先行は

   リスクがデカいから後ろに付いた方が安全だけどな。』


西名通りは住宅街を貫通する道路で、ホームストレートは下り…

すなわち、スタートは下り坂からなので、いきなりスピードが出る。

しかも、スタートラインから30メートル先に右への

直角カーブがある為、スピードを出し過ぎるのは危険だ。


卓夫(こういう直角コーナーは殆どの奴が

   アウトインアウトでクリアしようとする。だがここは西名通り…

   砂利が不規則に散乱していて、踏んだ瞬間グリップが無くなっちまう。

   ここの直角コーナーはアウト側に砂利があるから

   インインアウトでクリアするのがベストだ。)

孝(いきなりインへ?曲がり切れるのか!?……うわっ!砂利だ…!)

剛『孝!』

卓夫(一度そこに入るとハンドルを切っても前輪が滑って曲がらない。

   脱出する為には大幅な減速を余儀無くされちまうのさ。)

孝(駄目だ!アンダーステアが…!)

健吾『孝が置いて行かれるぞ!』

孝(減速しないと…!)


既に卓夫はコーナーをクリアしていたが、孝は砂利で遅れてしまった。


孝(何とか砂利を脱出できたけど、かなりタイムロスしちまった!)


西名通りは周回約600メートル。

お世辞にも長いと言えるコースでは無いので

できるだけ早く追い抜かないと逃げ切られてしまう可能性が大きい。

直角コーナーの先は直線、その先に10度弱の坂がある。


卓夫(坂はオレの脚力なら問題無い。

   終盤の三連ヘアピンが少々不安だが、

   それまでのセクションで距離を稼いじまえばこっちのモンだ。

   ま、地元が余所者に負けるなんて有り得ねぇけどな!)

孝(とんでもない馬力だな、あいつ!

  ゴツいガタイに、どっしりとした自転車で

  かなりの重量なのに、何の苦も無く上がって行きやがるぜ…!)


だが坂では軽い孝の方が有利で、徐々に距離を縮めていた。


卓夫(流石にガキの頃からやってる奴は速いな。

   だが、ここから先は暫く緩やかな右カーブだ。

   速度はオレの方が速い。ここで思いっ切り千切ってやるぜ!)


卓夫はかなりスピードを上げた。


孝(物凄いケイデンスで漕いでるな…。

  こっちもそこそこ漕いでるんだが、あれには到底追い付けない…!)


雅人『卓夫は脚力はチーム1だ。

   重いギヤ比を速いケイデンスで漕ぐ事を得意としている。

   直線での最高速度だけはオレもあいつには敵わない。』

  (だが、不器用だからな…あいつは。

   変速やブレーキワークが苦手で、ハンドリングも未熟。

   ラストスパートの三連ヘアピンで苦戦するだろうな。)

健吾『孝が抜き返せるのは三連ヘアピンだけって事か…!』


孝(くそ、起伏が激しすぎて速度を奪われる…!

  おまけに砂利でスリップして安定しない!)


剛『ここからじゃ、どうなってるのか見えない…!』

康史『三連ヘアピンに来れば見えるよ。

   まぁ、卓夫はあの長くて緩やかなカーブの

   セクションで、とんでもないスピードを出すからな…。

   多分…かなり差が開いてると思うよ。』


孝(見えてきた…三連ヘアピン!

  卓夫との距離は10メートル弱…行けるか!?)


三連ヘアピン一つ目!


卓夫(くうぅ!ヘアピンのこの減速、忌々しいぜ…!)

孝(砂利は大丈夫だ!立ち上がり重視の突っ込みで…!)


ヘアピン一つでかなり二人の差が縮まった。

立ち上がりの速度は孝が圧倒的に勝っている!


剛『見えた!やばいぞ、かなり差が開いてる!』

健吾『ヘアピンでの立ち上がりが圧倒的だ!行けえぇ!孝ぃ!』


卓夫(ケッ、どれだけオレが重いっつっても、この脚力なら全く関係無いぜ!)


卓夫がフルパワーで加速を始めた。


孝『ひえー…!何てパワーだ!』


雅人(あの野郎…キレてやがる…!

   ヘアピン下手糞な癖に、そんな所でフル加速してんじゃねぇよ!)

剛『あいつ、馬力が桁違いだ!これがスプリンターって奴か!』


孝(ば、馬鹿か!?突っ込みが速すぎる!)

卓夫(オレ様得意のレイトブレーキングだ!)

孝(立ち上がりで追い抜いて見せる!)


バキン!


卓夫が二つ目のヘアピンカーブをクリアした時、大きな音がした。


卓夫(フ、フロントブレーキが逝っちまった!

   クソ!これじゃ次のコーナーでレイトブレーキングができねぇ!)

孝『次が最後だ…!』


最後のヘアピンカーブ。

突っ込みも立ち上がりも孝の方が速い。

孝が卓夫のイン側に入り込んだ!


孝『よっしゃあ!』

卓夫(くうぅっ!フロントブレーキが

   死んでる所為で減速が足りなかった!アウトに膨らんじまう!)


剛『あ、あいつ、急に遅くなった…?どうしたんだ?』

健吾『マシントラブルだな…。』

雅人『Vブレーキのアームが折れたんだ。だからあれ程

   マシンのメンテナンスを怠るなと言ってたんだ…あの馬鹿野郎が!』


卓夫(抜かれた…!孝如きにこの俺が!?)

孝『後は逃げ切るだけだ!』

卓夫(この先は特にブレーキが必要なセクションじゃねぇ!)

  『勝つのはオレだあああぁぁぁ!』


卓夫が急加速し始めた。


孝(ヤバい!なんてスピードだ…!)

卓夫『勝負は貰ったああぁ!』


康史『勝ってくれー!卓夫ー!』

剛『孝―!ゴールまで少しだ!粘ってくれええ!』

健吾『くそ…!凄いペースで追い上げてきてるぞ…!』

雅人(決まったな…)


ゴールイン…!


卓夫『……な』

孝『セーフ!間に合ったぜぇ!』


剛『やったあぁ!孝の勝ちだ!』

健吾『うっしゃあ!』

雅人(やはりな。)


卓夫『クソっ、ブレーキが効かねえぇ!

   ゴール後の事を考えて無かったあああぁぁぁ!』


ドンガラガッシャン!


卓夫がガードレールに激突した。


雅人(あの大馬鹿野郎め…日頃の行いが適正なら

   こんな事にはならなかった。まだまだ未熟だな、あいつは…。)

  『…孝、よくやったな。一回戦、お前の勝ちだ。だが勝負はこれからだぜ。』

孝『おう!絶対、オレ達が勝つ!』

康史『卓夫ー!大丈夫かー?』

卓夫『あー…痛ててて…』

康史『な、メンテナンスとチューニングは大事だろ?

   さて、これからこの自転車も直さないといけないな…』

卓夫『やべー…扱いが雑な事が、ここまでバトルに影響するとはな。』

康史『さっきのバトルでVブレーキのロッドが折れてる。

   それでしかも、今衝突したのでフォークも曲がっちゃってるよ。

   こいつはちょっと厄介だぞー…修理に時間とお金が掛かりそうだ。』

孝『卓夫、大丈夫か?』

卓夫『オレは何ともねーけど…マシンがこの様だ。』

孝『次にお前とバトる時は、マシンも完全な状態で頼むぜ!』

卓夫『おう!だが、それだとオレが勝っちまうぜ。』

孝『馬鹿言え!』

康史『卓夫、修理する時に付き合ってくれ。

   どこが壊れてるか説明して、直し方も教えるからさ!』

卓夫『おう、そん時はよろしくな。』

康史『だけど、こんなの自転車屋で修理して貰ったら

   高級ママチャリが買える位の金掛かるよ。

   修理代…部品代だけで、ざっと15000円。用意しといてね。』

卓夫『くううぅぅーっ!!!』

健吾『孝!よくやったぞ!』

剛『すげーよ孝!マジクールだったぜ!』

孝『森田先輩、剛!』

健吾『慣れて無いのにあんなに速くヘアピンを抜けるなんて、見事だったよ。』

孝『あざっす!でもやっぱり、砂利が怖かったっすね…ちょっとでもバンクを

  付けると滑るから、曲がろうと思っても、中々曲がれないんっすよ。』

健吾『暗い上に、砂利なんかパッと分からないしな。』

雅人『健吾。二回戦…インペリアルズからはあいつが出る。

   そっちも二回戦を走るメンバー、決めとけよ。』

健吾『おう、あいつと互角に戦えそうなのは…』

剛(バトルは翔太のバトルも含めて

  お互い一勝一敗、残り六試合…どっちが勝つんだ…?)

 『カミカゼ、頑張ってくれよー!』


カミカゼとインペリアルズの戦いは、まだ終わらない。

☆マシン図鑑☆

MAXREV・(マックスレブ・)BlueMagnum(ブルーマグナム)

 ジュニア向けの小型ロードバイク。

 上級とは言えないが、フレームもフォークもカーボン製で

 それに見合った動力性能は持ち合わせている。

 小さい上にフルカーボンなので、軽さだけならピカイチ。

 新車価格は49500円。

搭乗者・花山翔太(はなやましょうた)

カラー・スカイブルーメタリック

翔太仕様…幼い頃からチューニングし続けている為

     ノーマルなのはフレームとフォークのみ。

     それ以外のパーツ、特に駆動系等は、そこそこな

     ロードバイクに使われるパーツを搭載している為

     ジュニアバイクとは言え、性能は舐められた物ではない。

※自転車、およびメーカーは全て架空の物です。

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