春の花
秋の山は赤や黄に染まった葉で、春とはまた違った賑わいを見せている。空も秋晴れ、快晴だ。
しんと静まり帰った山の奥深くで、突然に何かが倒れる音が聞こえてきた。
「やったな、梅」
「まぁ…そうですね」
その倒れた物の所へ、一組の男女が現れた。
「若、いつもは家でぐうたらしてばかりのくせに、気が向いた時だけ無茶苦茶ことをお命じにならないで下さいよ」
「何が無茶苦茶なものか。現にその成果がここにあるではないか」
そう言って彼は目の前に倒れている物を持っていた扇子で指し示す。
「今日は猪鍋だな」
「はぁ、そうですね」
梅は自らが倒した猪の傍らに落ちた鉄扇を拾い上げながら投げやりに答えた。
「そんな物で猪を気を失わせてしまえるのだから、梅は腕がいいな」
彼は上機嫌に笑って、少し低い位置にある梅の頭をぽんぽんと撫でる。
「こんなことで誉められても嬉しくありません」
梅の顔は見えなかったが、彼は分かっていた。彼女はきっと、頬を赤く染めているのだろう。
普段はあまり表情を出さない淡々とした子だが、頭を撫でられることと、誉められることは好きなのだ。梅が可愛い過ぎて抱きつきたい衝動にかられるが、梅がそれを読んだように話しかけて来た。
「ところで若。いつもいつも言ってますが」
「私もいつもいつも言ってるね。いいじゃないか、別に。同じ季節に咲く花なんだし」
「そんなことで、人の大切な物を変えないでください」
「こっちの方が可愛いのに」
「私の名前は桃です」
最後の所が書きたくなったが為に舞台が雅な平安から良くわからない時代へと、設定も雅にいくつもりがこのように変貌致しました。
駄文を読んで下さり、ありがとうございました。
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