第5話「仕事中は軽く自重してますよ、ヘクトさん」
「やっぱり勇者一行にあの野郎が居やがるのか」
「まぁ、賢者ですから。そして口調が荒いですよ」
「・・・それにしても99敗とか有り得なくないですか?」
「確かに多すぎですね」
「ざまああああああああああッ!!!!」
「静かにしてください!」
『誰だッ!!?』
「・・・見つかりましたよね、これ」
「見つかってしまいましたね・・・」
* * *
俺たちがザクセンの野郎が凹んでるのを見て楽しんでると突然、窓の外から叫び声が聞こえてきた。
・・・それにしても『ざまああああああああああッ!!!!』って・・・
叫び声自体はなんとも間の抜けたものだが、叫び声がするまで外に誰かがいるということに気が付かなかった。
それは相手が護衛達に気付かれずにここまでやってきたということだ。
どれだけ叫び声の内容が内容でも相手は腕が立つってことだ。
・・・やっぱ99敗ってすげぇんだよな。
「はぁ、見つかってしまったのなら挨拶でもしましょうか」
「えええええ・・・」
「はいはい、文句を言わない」
なんだ、この軽いノリ・・・
「どうも初めまして、魔王様の部下のスーウィンと申します、以後お見知りおきを」
「ここがてめぇらの墓だ、同じく部下のヘクトです、以後なんて存在しねぇよ」
「ヘクトさん落ちついてください」
窓から入ってきたのは二人組の奴らだった。
・・・ヘクトとか呼ばれてる奴、かなり口が悪いな。
出会ってそうそう喧嘩売るとかねぇよ。
もう一人のスーウィンって奴は・・・女、だよな?
こいつがもし男だって言うのなら、俺は世を儚むぞ。
「スーウィンって言ったな、今度デートでもしねぇか」
「復活するの早ぇよ!!」
気がついたらザクセンは身だしなみもきっちり整えて口説き始めた。
こんなんだから本命にフラレ続けるってさっき言ったばっかだと思うんだけどな・・・
「ザクセン、てめぇの頭の中身は相変わらずお花畑なのかよ」
「げ、ヘクト・・・お前なんでここに・・・ッ!?」
「そして美人を見ると一瞬でまわりが見えなくなるのも相変わらずか、この馬鹿は」
「いや、これは違う!!たまたまだ!たまたま!!」
「残念だったな、この人は男だ」
「「え」」
「・・・私ってそんなに女に見えますか」
「顔が中性的すぎるんですよ、髪も長いし」
・・・・・出家するか。
「魔王の部下・・・」
「「!!!」」
「そうですけど・・・今更な反応ですね」
「しかも、そこの男二人は完全に忘れてたって顔してますし、馬鹿だ馬鹿だ」
す っ か り 頭 か ら 抜 け て た ! ! !
そうだ!こいつらさっき魔王の部下だとか名乗ってたじゃねぇか!
そうか、スーウィンって奴の顔で相手の戦意を喪失させてから俺達の首をとるっていう魂胆か!
くそ、さすがは魔王の部下といったところか、卑怯な奴らめ・・・!!
「貴方達の目的はなに!!」
「「魔王様の命により貴方達を退治しに来ました」」
トウカは周りの雰囲気に流されることなく毅然とした態度で二人に問いかけた。
その問いに対し、向こうの二人も同じように答えを返してくれたが・・・
・・・普通、俺達が退治する側じゃね?
ヘクトさんの同僚
どうやらよく女性に間違われるようです