第3話「刃傷沙汰は勘弁です」
「その勇者は救いを求める者には救いを、絶望にくれる者には希望を与える神のごとき・・・」
「なんか陳腐ですね」
「まったくですね、その設定がまさに紙です、薄っぺら過ぎます」
「スーウィンさんって言うこと結構キツイですよね」
「え、何かキツイこと言ってしまいましたか?」
「・・・・・いえ、別に」
天然怖ぇ・・・
* * *
「やっぱり最初は賄賂から攻めていくべきだと思うんですよね」
「わー、さすが魔王様の右腕やること黒ーい」
「・・・刃傷沙汰にならないようにと思った結果だったんですが」
「すいません、一度己の心を見つめなおすべく滝に打たれてこようかと思います」
「魔王様の右腕と考えると黒い発想から出た方がいいのかもしれませんが・・・」
「いえいえ、あなたはそのままでいてください。黒いのは私一人で結構です」
スーウィンさんの言った『賄賂』という言葉にこの人は魔王様の右腕だったんだなー、実はすげぇ黒ー、とか思っていたらどうやら血を流すのが嫌だっただけだという・・・
あぁ、己の心がなんと薄汚れていることか。
視界が一瞬ぼやけたのは気のせいか。
「というかそもそも私たちは関係してないしそれを伝えたら帰ってくれるんじゃないですかね、
相手は勇者で神って言われてるぐらいなんですし」
「勇者だからこそ引けないと思いますけどね、民の期待も大きいですし私達は魔王様の部下ですから」
「ははは、ですよねー」
こちらを信じるわけがないかと溜息をつく。
でも実際に魔王様が私達に人攫いだとかそういうことを命じたことはないし、命じられた覚えもない。
まぁ、魔王という肩書はそれだけでマイナスのイメージを抱かせるのだろうと思ってはいるが実際に
それを体験すると少し複雑でもある。
・・・ほんとにしてないんだけどなー・・・
「まぁ、とりあえず脅かしたら良いんじゃないですか」
「脅す・・・それで簡単に引き下がってくれたら良いんですけどね」
「やれることはやってみましょうよ」
「ですね、やりましょうか」
『とりあえず、血を流さない方向で』
魔王様御一行の特徴
法には触れません