第2話「感電にはお気を付けて」
「では、これより勇者退治の作戦会議を始めたいと思います。意見のある方は挙手お願いします」
「はい」
「どうぞヘクトさん」
「二人だけの会議ですから別に挙手とかいらないと思います」
* * *
「勇者はどうも仲間集めから始めていこうとしているようです」
「まぁ、単身で挑んできたらそれは勇気じゃなくてただの無謀な馬鹿ですからね」
「ヘクト」
「はい?」
「貴女がまず仲間にするとしたらどういう人物にしますか」
「そうですね・・・私自身が旅に不慣れなら旅慣れしていて腕もある程度はたつ人物ですかね」
「では、旅に慣れてる場合は?」
「旅に慣れているのは当然で、腕がたつ人物か役に立つ知恵や情報をたくさんもつ人物ですかね」
『こんなことも知らないなんて大丈夫か?おもに頭の中身』
・・・憎たらしい顔を思い出してしまった。
いや、あれは知恵をもってるわけじゃない嫌み・戯言製造機だ。
そうだ、断じて知恵とか高尚なものではない。
「いやいや、ありえませんよね」
「何がありえないんですか?」
「確かに村を出て王都に移り、いまでは賢者だとかあいつの本性に全然あってない名称で呼ばれているらしいですけどね?まっさかあいつに協力を頼むとかそんなありえないこと起こりませんよね、えぇ仮に起こっても私は関与しませんからね、絶対に!!!」
「貴女がそのような反応を示すということは『蒼の賢者』ザクセン・アイルハイデンのことですか?」
「いやあああああああああああ!!死にさらせえええええええええええ!!!!」
そのとき奴の名前を聞いた瞬間に私の頭の中で白いスパークで埋め尽くされた。
悲鳴をあげるところまではまだ良かったと思う。
けれども問題はその後だった。
「あいつ何なんですかあああああ!なんで毎晩しっかり呪いかけてんのに効かないんですかねえええええ!!」
「あぁ、よく部屋から聞こえてくる恐ろしげな声は貴女だったんですか・・・って電気!!」
「あああああ!!もうなんなんですかねえええええ!!!」
「放電!さっきから放電してます!!」
「やっぱじわじわ効く呪いとか駄目なんですかあああああ!?即効性のある呪いじゃないと駄目なんですっかねえええええ!!」
「落ち着きなさい!!!」
スーウィンさんはパニック状態に陥った私に小麦粉を投げつけてきた。
・・・一体どこにあったんだろう。
「ゴホッ・・・・・すいません、興奮してしまいました」
「その感情が高ぶると放電する癖なんとかならないんですか?」
「これでもかなりマシになった方なんですけど・・・」
「・・・それマシですか?」
「はい、放電なら私から離れれば良いんですし。ただ私の感情が高ぶるときって大抵はザクセン絡みであいつに雷落としまくってましたから・・・あれは爽快でした」
でも雷のときは無差別に近くにいる人も巻き込んでしまうんですよねー、とついでに言うとスーウィンさんは眉間を押さえた。
珍しいことだ。
「・・・報復などはされなかったんですか?」
「普通の人なら雷落とすような人物に近付きたくないでしょう」
「確かに」
スーウィンさんは納得したようで頷く。
私だって自分が一般人だったら雷落としてくるような人物には関わりたくない・・・というのは言い過ぎかもしれないが恨まれたりするような立場には絶対なりたくない。
・・・まぁ、私はこれでも魔術師だし魔王様の部下なのでそういう方々と強制的に関わらなければならない状況もあるわけだけれど。
あー・・・この間の酸を気体に変えてきた奴とはもう二度と会いたくない。
ヘクトさんの癖
どうやら感情が高ぶると放電するようです。