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第1話「私と同僚と上司様」






「スーウィンさーん、王城のネズミさん達から定期報告が来てますよー!」


「あぁ、もうそんな時期ですか。分かりました、そこに置いといて下さい」





私は言われたとおりに『そこ』と言われた場所に置こうと目を向けて見るが・・・





「すいません、私にも情けというのは存在してます」


「えぇ、知っています」


「・・・本当に知ってますか?」


「はい、だから貴女はきっと笑顔で彼らにその仕事を振り分けてくれると信じています」





スーウィンさんが笑顔を向けた方向には机の上に書類を大量に乗せていた。


しかもその書類の山はいまにも崩れ落ちそうな中で絶妙なバランスを保っている。


そして、その書類の山に囲まれているのはスーウィンさんの部下達だった。


スーウィンさんの机の綺麗さを見てから皆さんの机を見ると天国と地獄とはこんな感じなんだろうなとしみじみ思ってしまう。





「スーウィンさんの机はとても綺麗ですね」


「えぇ、毎朝キチンと磨いていますから」


「・・・その綺麗な机で仕事をしようとは思いませんか?」


「とんでもない!!部下達の仕事を盗っては上司の名折れ、そんなこと出来る筈ないじゃないですか」





上司なら仕事しろよッ!!!





・・・とはスーウィン以外のその場にいた全員が思うものの、本人が嫌がらせなどで言ってるわけではなく本気で好意から言ってるので、もし言い返した場合には話が堂々巡りになるのは目に見えてるので誰も言わない。


でもいつも仕事をしないわけではないのだ。


必要があれば自ら率先して仕事を片付ける上司らしいところもある。


まぁ2、3年に一度見れるか見れないかぐらいの確率でしかないのだが・・・


ちなみにそんな年上の同僚にヘクトが頭を少し痛めているのを知るのは部下達のみであった。









無言での睨みあい(向こうは微笑んでいるだけだし睨み合ってるつもりもないのだが)を続けていると部屋に一匹の蝙蝠が飛んできた。





「アゼ様ガ スーウィン様ト ヘクト様ヲ 呼ンデイマス!!」


「アゼ様が呼ぶといったら例の件ですかね」


「でしょうね、では待たせてはいけませんし行きますか」


「はい」









 *   *   *









「勇者派遣?」


「何ででしょうね、派遣という単語が付いただけであっという間に勇者という存在が間抜けな感じに・・・いえ何でもありません」


「スーウィンさん隠せてません、本音が駄々漏れです」





ヘクトとスーウィンが一通りの感想を言う。





『勇者が派遣された』





そう二人に伝えた男、アゼを一言で表すならダンディー


もういっそ巻き舌気味にドゥァンディーといっても失礼じゃないような気がしてくるような雰囲気だった。


まだ見た目からして30代前半であろうというのに、この調子では40代あたりが心配だ、おもにこの男に関わるであろうご婦人方が。





「ここ最近、王城から遠い場所での行方不明者は増え続けている」


「あー、それで不安になった民達にどこぞの坊ちゃんが勇者を名乗りでたとかそういうところですか」


「間抜けですよね」


「スーウィンさん・・・」


「間抜けかどうかはともかく『勇者が派遣された』ことは事実だ」





お前たちがするべきことは何か分かっているな?





暗にそう目で語られ、ヘクトとスーウィンは一度お互いの顔を見てから微笑んだ。


自分たちは『何』か、自分たちのするべきこととは『何』か。









「「私達は魔王様の忠実なる配下、御身を傷つけようとする輩がいるならば全力で御守致します」」









二人が跪き頭を垂れるのを見て魔王アゼは優雅に微笑んだ。













  ヘクト19歳


 ただいま魔王様の忠実な部下です。










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