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ドール  作者: りょく
第一部
14/38

第十二章 ガーディアル

ガーディアルに着いてからのレキは、繰り返し繰り返しの研究材料の毎日だった。

どの研究員もレキのデータに驚きと、実験できる喜びでいっぱいだ。

「どのデータも、他の者とは比になりません!」

理事に報告する研究員達、そしてガラスの向こうには機械の中で検査されているレキの姿。

「父さん、他のガーディアルから至急の連絡です」

「・・わかった」

アキトは理事が部屋を出たのを見て、ガラス越しにそっとレキに視線を移す。あのレキという男を父はお前の友人だと言った。けれど自分には記憶がなく・・・でも自分でも分からない気持ちに頭が痛くなる。アキトは頭痛を感じレキから目をそむけた。


「だー!レキを追いかけるって言ったのはいいけど、どっちにいったんだよ!!」

砂漠の真ん中に立ち尽くしていると頭上からポタッポタと落ちる水に雨かと上を向くと・・・。

「わぁぁぁ!!?」

水で全身が濡れている黒髪の女が木々の上から自分を見下ろしていた。・・でもこの女どこかで見た事が・・。

「カラか!!って登場の仕方怖すぎ!!・・・・ってどうしてここに!?」

急に現れた人物にオロオロとしていると、カラはシンの頭をぺしぺし叩く。

「治った?」

「・・・・治った・・・って、あんた何者だよ?」

前に見た通り腰まである黒髪に黒い瞳で、左眼には包帯が巻かれているし!その上、なんか・・・ぼ~っとしている。

「レキの知り合いかな?」

「俺に聞かれても・・・」

「レキの所、行く」

この女の事はわけわからないが・・道に迷っているため仕方なくカラについて行く事にした。カラは目的地が分っているようで迷

うことなく歩いていく。数日間ほとんど歩きっぱなしでいい加減どうしようかと思っている頃に、前方に大きな建物が見えてきた。

「あの建物って・・・」

「ガーディアル・・・戦後平和を維持するための教育機関・・それと小さな都市でもある」

「ここにレキがいるってこと?」

頷くカラを見て、そうと分かれば後はレキを連れ戻しに行くだけだ!

カラがシンへ懐から取り出したものを手渡す。偽装IDカードと白衣のおかげで案外簡単に侵入することができた。

正面からどうどうと行くとは思わなかったが、逆にどうどうとした方がいいのかも・・・。警備員に見つかってもさっきまでとは別人のようにビッシッっとしたカラはすごく頼りになった。

なるべく目立たないようにカラの後を黙って歩いていくと、生徒が2人が人目につかない所で喋っている。

耳を澄まして聞いてみると“レキ”の名前が聞こえた気がして思わず生徒の前に飛び出してしまう。

「レキを知ってるのか!?」

思わず大きな声を出してしまったシンの方を、2人の生徒は驚いて振り向く。

「あんたレキの事知ってるのか?」

「あ・・あぁ・・・俺たちレキを助けに・・・」

「レキ、どこ?」

「助けにって・・・えっと、こっちだ・・・俺はギル、こいつはミツキって言ってレキの友達だよ」

「レキの・・俺はシン、こっちはカラ・・」

話しながら歩いていくと、立ち入り禁止の通路に来る。

「ここはガーディアルの理事の部屋や研究室があるんだが、立ち入り禁止で防犯カメラも設置されている」

「僕が見た時は兵士達に連れられて入っていったんだけど、ここからの事はわからないんだ・・ただ、このガーディアルの中央にある白い建物は研究施設なんだけど、もしかしたらそこにいる可能性は強い」

「そこに入るには?」

「・・通路は1つだけで、もちろん警備員がいる」

ギルとミツキもレキを心配して色々調べてくれていたのが暗い表情でわかった・・。

「カラ?」

「行ってみる、待ってろ」

「わぁ!?」

言い終わるか終わらないかでカラの姿が一瞬で目の前から消えたので、ミツキは驚いて叫んだが、シンとギルは落ち着いていた。

「何で2人も驚かないんだよ・・・」

カラがいなくなって、少しその場で待ったがいつまでかかるかわからないのでギル達と一旦寮に向かった。

「ここ・・レキの部屋だったんだ」

「俺の部屋で話そうぜ、その格好じゃ目立つし・・」

ギルに変えの制服を貸してもらい、着替えたあとレキの話を聞く。

「あんたはミツキとは違い、力に驚かないんだな」

「あぁ、レキの事は何となく・・な、でも何でこんなことに・・・レキには何かあるのか?」

「・・・・それは」

ポチャンと水音がしたと思うといつの間にか部屋の入り口にカラの姿があった。

「・・・見つかった」

「あの・・・」

「・・・いいよ、いつかレキ自身が話してくれるかもしれないしさ・・・あいつをレキを助けてやってくれ」

ギルとミツキに力強く頷いてから俺はカラと共に部屋を出た・・。


「お頭、こんな所にいていいんですか?」

「レキ捕まったんでしょ?助けに行かなくていいんですか~」

ライメイは、のん気にアジトに帰って来て酒を飲むばかり。

「いいんだよ、あいつがやるだろ~それより今は・・」

短髪の髪の女、リラがタイミングを計ったようにライメイの前に出る。

「各地で他のガーディアルが謎の攻撃を受け、次々に壊滅している所もあるようです・・・政府はこのことに関して動きはまだ」

「謎の攻撃か」

「それに最近、キメラや処理を行っているはずの機械人形をよく見ます、整備などもされている状態なので誰かが裏で噛んでると・・・」

「そうか・・・メグに会いに行って来る」

「お頭、メグってあの・・・大丈夫なんですか?」

「まぁ火急の用だし、レキがらみとなると動くだろう~そんじゃ後頼むな」


「何、レキどこにいるかわかった?」

カラが指さしたのは、立入禁止の理事の空調用のパイプ。っといても人間が通るには狭いし何より俺の背じゃそこまでたどり着けない。

これじゃ無理だなぁっと思ってるとカラは体を液体化する。

「って、あんたはそれできても俺は・・」

呟くと同時に警報が鳴り響く。その音でここを守る警備兵達が現れるがカラはするりとパイプへ入る。

「シンは足止め」

「へ!?」

「危なくなったら、逃げて」

「ってちょ!・・・俺もしかして・・・おとり・・か!!」

ガクッと気分落ちをしながらも、敵に囲まれるとやるっきゃない・・・。

「早く帰って来てくれよ~(涙)」


「どうだ調子は?」

ガラスの向こうから理事声がする、レキの方はベットに座った状態でガラスを見つめるといつもは見えなくしているガラスに向こう側が映し出される。理事の傍らにはアキトが立っていた。

レキと目が合うとアキトは自分の感情がただ不思議だった。・・まただ・・・何故アイツを見るとこんなに胸がざわめくんだ・・・。

「アキト何をしている、行くぞ」

理事達が出て行くと同時に何かを感じ足を止める。それはレキにもわかったようでレキとアキトは頭上を見上げる。

大きな音がするとともに天井が崩れると同時に湿った風が部屋に吹く。

「何が起きた!?」

慌てる研究員や理事をよそに、空から舞い降りたのは、黒い髪をなびかせる女。何十メートルもする上から落ちても、軽く音をするだけの着地でレキの前に立つ。

「カスガの仕業か・・・」

黒い雲に覆われた空から雷の音が近づき、ポツポツと雨が降り注ぎ始める。

「どうなっている!さっさとあいつらを捕まえろ!!」

理事の罵倒が飛ぶ、しかしアキトはただガラスの前に立ちレキを見つめていた・・。

「レキ」

雨が結晶化して翼になって、その翼は青い光に包まれている。カラの腕に捕まり脱出をする途中、ガラスの前でアキトと目が合う。

「アキト!!」

アキトに向かって手を伸ばす、だがアキトとの間には冷たいガラスがあり、そしてアキトは手を出すことはなかった。ただ、アキトの頬にはぬくもりはすでに無い・・冷たい滴が流れていた。


「・・・ハァハァ・・・一体どれだけいるんだよ!!!」

シンは倒しても倒しても出てくる敵にウンザリだ・・。

そこへ緑のふわふわの髪をし、自分と同じ位の少年が現れた。その少年はあっと言う間に敵を倒すとシンの前に近ずいてくる。

「警戒しなくてもいいよ、君は僕らの仲間なんだから」

「仲間?」

油断したシンは、少年の力によって壁に体ごとぶつけられそのまま気を失った。


「そう、ただし君が僕らの仲間になるんだけど・・シン・スゥーくん」


部屋の隅から白い服を着た人達がシンを連れて行く。

「クスクス」


「レキ!」

「ギル、ミツキどうだ?」

ガーディアル中を捜してくれたギルとミツキだが、やはりシンの姿は無かったようだった。

「やっぱりどこにもいないよ・・」

「入れる所はすべて捜したんだが、どこにも・・・」

「そうか・・・」

一先ず騒がしくなってきたガーディアルを離れるために、レキとカラはガーディアルにある前に秘密基地みたいな感じで使っていた部屋に隠れた。秘密基地と言っても、今では使われていない寮の一室なのだが・・。

「どうするんだ?」

状況はすぐにここを離れた方がいいのだが・・シンを置いて行くわけにはいかない。

「だから待ってろといったのに・・・」

「何やってんの?」

「「うわぁ!?」」

どこから入ってきたのか、レキの後ろからひょっこり顔を出したライメイ、ギルとミツキは多少のことには慣れたが、急な事は心臓に悪い。

「俺は顔が広いんでね♪って、シンが連れ去られた?ったく・・・これだからあまちゃんは・・」

「・・・・」

「まぁ、そう簡単には殺されはしないだろ?それより・・本格的に動き出したぞ、早くここを離れた方がいい」

「レキ・・・」

「そう言えば、この間アキトによく似た人を見たんだよ・・・理事とかと一緒だったんだけど・・」

そのギルの言葉に、いつもは表情を変えないレキも表情を変えた。

「ギル、ガーディアルが変な動きをしだしたら教えてくれないか?俺はお前達を守りたい・・・」

「・・・レキ、言っただろ?俺達はお前の友達だって!・・・ガーディアルの情報は調べておくよ」

「すまない」

「・・僕も調べるから!!」

「ありがとう、ミツキ」

「2人には言ってないことはたくさんある・・・だけどいつか話すから・・・必ず・・・」

ミツキは再びの別れに少し涙ぐみ、ギルはいつものように明るくレキの背中をたたく。

「約束だぞ、必ずまた会おう」

「・・・・・あぁ」

「レキ!行くぞ!」

ライメイがレキに向かって叫ぶ。レキはギル達と別れ、ライメイ達のもとへ走る。頭上を舞っていたヘリは3人を見つけ追うが、レキ達は振り向かず前だけを見て走っていった。

「ギル・・・」

ミツキが不安そうに名を呼ぶが、ギルには何も答える事はできなかった。

3人の姿・ヘリの音が聞こえなくなると、砂のすれる音が耳に響く。

世界中の人が何も知らない所で、何かが起こり始めている・・。背後から迫る不安はあったけれど、今は友の約束を信じれば必ず大丈夫だと自分にギルは言い聞かせた。


「レキ、シリウスに戻るんだろ?・・悪いが先に行きたい所があるんだ」

「久しぶりにメグに会いにいかないか?」

メグと言う言葉にレキは険しい顔をするが、ライメイはおもしろそうに車を走らす。

鼻歌交じりのライメイとは違いレキの表情は険しかった。


車が走り続けて4日で、キトンの前にある町に着いた。

「少しココで休んでいかないか?」

返事も待たずにライメイは人混みへと消えてしまう。 レキとカラは顔をお互いに見て、一先ず人が少ない場所に移動する。

「お前は何が目的だ?・・・顔見知りならたくさんいたが・・・あんたは見た事が無い・・何故名前がわかったのはわからないが・・」

「言えない、私は先に戻る・・・するべきことがある」

カラはそう言い残し体を液体化したと思うとすっと大地に溶けていなくなってしまった。

「・・・・シン」

カスガに応急処置だけをしてもらった腕が痛む。ずっと忘れていような傷の痛みに顔をしかめ、腕では無く胸を押さえる。今はもう動いていな心臓を・・・。


「ここにいたか・・・ん?あれ一人?」



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