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ドール  作者: りょく
第一部
11/38

第九章 生きる場所

『お前の名前は“レキ”』

闇の中から聞こえる声・・小さい声なハズなのに、何故か耳にしっかり聞こえる声。

『・・レ・・キ?』

『そうこの世のすべてを砂礫にする者、誰のモノにもなってはいけない』

すべてを見透かされたような・・抵抗する気もなくなる・・まさに創造神・・。

『お前の進む道は血塗られた道しか無い!最後になるまでもがき苦しめばいいさ!!』

『逃げなさい!そして生きろ!レキ!!』

誰なのか分からない・・誰だと問い掛けることもできない・・。

『俺達を裏切るのか?同胞の俺達を!!』


誰かが呼んでる、目を覚まさないと・・でも・・体が重い・・・。

「!!おいレキ!!」


『・・・目を覚ませ』


「おわ!何だよ急に起きるなビックリするだろ!!」

「・・・悪ぃ」

いつもと調子が違うとこちらが驚く・・。

「そーいったら、ここん所ずっと東に向かってるけど・・・誰かに会いに行くのか?」

「あぁ聞きたい事があるからな」

レキは何も言わないけど・・誰かを探してるのか?ライメイは知ってるようだけど・・・。

「レキ、俺はあんたに何があってのも着いていくと決めてるし、いつかは話してくれるか知る方が早いかは解らないけど、あんたの事を少しはわかっていきたいと思ってるから!それだけ!」

「シン」

「俺、先に行ってちょっと水でも探してくるから」

「青春だねぇ~」

一部始終を聞いていたライメイはニタニタ笑う。

「一度死ぬか?」

「冗談冗談」


「・・・はぁ」

レキが調子が悪いのは、この間の傷がまだ治りきってないからかもしれないし、一度どこかの大きな町で休まないと。手配書が回ってるってことはいつ何があるか分らない状況なんだろうし・・。

「何だよ?・・・ちょっ、服引っ張るな!・・え?」

そこにいて、服を引っ張っていたのは小さな子供?が5人、皆布切れを体に巻きつけただけのみすぼらしい姿。

「ねぇお兄ちゃん、旅の人?」

「あっあぁそうだけど」

「じゃあ疲れてるよね?」

「え?は?ちょっと」

子供の力とは思えない力でズルズルと腕を引っ張られて着いた先は、土で固めただけの家が折り重なっている場所。

「こっちだよー」

土で出来た部屋の中は思ったより広く、壁を背に座り込んでいる人や寝そべっている人がぎっしり居る。

「ようこそおいで下さいました」

「はぁ?」

一番奥らしい部屋には陽の光も入らないのか、照らす物はあっても薄暗い部屋で表情までは分らない。

部屋には結構な人数が座っていて視線が突き刺さる・・・。

「無理矢理にひっぱてきた事に失礼を・・」

「はぁ」

1人だけ椅子に座った人物が一番えらいようだ。

「皆、ちょっと席を外してくれ」

他の者が部屋から出て行くのを確認すると、一番偉いらしい人物が静かに話し始める。

「レキ様ですね、早速ですがお願いがあり今日お越し頂いたのです」

「え・・・ちょ・・」

「まず、来てくれたことに感謝をします、私はココで指揮を取っているレインっと言う者、ココにはレキ様と同じ様に多くの機械人形がいます、そのため軍政府から強引な攻撃を受けてまして」

「軍から守って欲しいっと言う事?」

「そうです、3日後に最後の攻撃をと伝令が来たんです」

レインが伝令の文章を見せてくれた・・・。

「・・・ちょっとスイマセン、息抜きをしてきてもいいですか?」

ここ数時間ず~っと、説明ばかりだったことにレインも気づき休憩をさせてくれたが、自分がレキじゃないということ伝えそびれてしまった・・・。

「とりあえず今の内にレキに・・・」

っとこそっとその場から逃げようとした時、子供たちに見つかってしまい・・。

「お兄ちゃんどっか行くの?」

「僕達を助けてくれないの?」

「・・・・・はぁ・・・・・どうしよ・・・」


「・・・にしても、あの小僧どこまで行ったんだ?」

いつまでも帰ってこないシンを探しに大の男2人が腰を上げる。


「俺・・・何でこんな子供と遊んでんだよ・・・・はぁ」

結局逃げ出せないまま、子供に捕まり遊んでいるシン。


「お頭、本当によそ者のあんな奴を信じるのか?」

「そうですよ!何か弱そうですし・・」

「大丈夫だ、それよりレキ様はあくまで助っ人だ、レキ様の力を借りずとも我々の力で戦う心得はしておくように!」

「はっ!」

皆はひとまずレキの事は置いといて、自分達の戦いへと意識は移す。しかし、副頭の短髪に頬に傷がある青年は納得が言っていないように舌打ちをしてその場から離れた。


「スイマセン、子供達が迷惑をかけたようで」

「いえ、皆元気ですね・・・あの、どうしてレっ・・いや自分の事を知ったんですか?」

「それは、ドールと言ったら我々機械の同胞の中の救世主っと言った感じの存在だったんですよ」

「救世主?」

「はい、私は実際見たことは無いのですが、あの戦乱中、また戦後もレキ様の存在は私達に希望を見せてくれていたのです」

っていうか、レキってドールなのか?ただの人間ではないだろうとは思ってたけど・・・。いつもレキの姿を思い出しても本当人間の様に見える・・不思議な力を使うことはできるけど・・。

「そうだ!ここに攻め入ってくる軍政府に何故力が必要なんだ?機械人形ならそれなりの戦力はあるんじゃ・・?」

「確かに整備がなされていないとは言え、機械には自分を守るだけの力はあります・・けれどココのまだ幼い子供達の8割は人間の子供なんです」

子供達の多くは戦争孤児で、身寄りのない子供たちを機械達が育てているのも戦争中では考えられない・・だけど子供たちはどのこもここの人を信頼しているようなのは分る。

その時砂風が吹き、いつも被っていたフードが脱げると、レインは、腰まである金髪の美人女性であるが首から右腕は機械だった。

「戦争が終わり人と我々が、手を取り合い暮らせる日々を今の仲間達と願っていたんですが、やはり人と我々は違うのかと不安があるんです・・今回の戦いが終われば何か答えが出るような気がするんですけどね・・では、どうぞお休みください・・」

恭しく会釈をしてレインは帰っていった。

「人との共存か・・ここまで聞いたら逃げるわけにはいかないようあなき気がするし・・・寝るか」

その時後ろで気配を感じて振り向くと、以前から俺に敵意むき出しの視線を向けている傷のある青年が立っていた。

「レインは何と言っても、俺達はお前に手伝ってもらおうとは思っていない!わかったらよけいな事はするなよ!」

睨んだままそう言い終えると行ってしまう。

「俺だってどうすればいいのかわかんねえよ・・レキ・・・・」


目覚めて見た光景は、小さな子供までも武器を運んだり訓練したりといった状態だった。

シンも一応は戦争を体験しているから、武器なんてあたりまえだったけど・・・やっぱり傍からみたらすごく悲しい光景だ・・。

「あ!お兄ちゃん今日も遊んでー」

「ダメだよお兄ちゃんは大事なお客さんなんだから!」

子供達の中でも年上の子供がそう言ってくれる。

「でも・・」

「いいよ、遊ぼうか?」

どちみち逃げられないし・・やることも無いしな・・。

「うん!!」

「これは?」

子供に連れられて砂漠の方へ行くと見慣れない遺跡が数多くあった。

「遺跡だよ~昔の人が造ったモノなんだって」

「地下に大きなお部屋があるのー」

「うん、大きな道みたいなのもあるんだよ」

「地下に部屋?道か・・ちょっと見せてもらってもいいかな?」


「お頭東・西・南の方角12キロ地点に政府軍が留まっています!」

「数は現在の確認では各方角に200人ほどだと思われます、武器の方は戦車なども多数」

「全部合わせて600か・・」

こちらの人数は200弱、その中で戦える者は100人足らず・・。武器もこちらには数を用意してはあるが、持久戦になればこちらには圧倒的に不利。

皆が席を外し各々の準備に戻るのを見て傷のある男がレインに近づく。

「レイン勝ち目は有るのか?」

シンに喰らいつき、レインと呼び捨てにしている男はゲイルと言いココでは副頭として、レインとは幼馴染で戦乱時代から一緒に行動している男。

「適当な策が無いならどうするんだ?このまま戦っても俺達は・・・いいとしても、でも子供達はどうするんだ?」

「ゲイル・・確かに今のままでは、しかし私達は・・」

「レイン!!」

「誰だ?」

「あの・・・」

シンが入って来たことに、ゲイルはあからさまに嫌な顔をする。

「子供達はひとまず近くの遺跡に避難させました」

「近くの遺跡?そんな所に連れ出して何をするつもりだ?」

「あそこには古い遺跡がたくさんあります、砂漠は昔大海原だったり巨大な都市だったりと聞いたことがあります」

「そんな古びた遺跡に何が有るって言うんだ!?」

「地下に大きく広がる大通路があり、そこに部屋らしきモノもいくつかありました、砂の中のシェルターならば」

「敵に気ずかれなく近ずくことができ、爆弾を防ぐことも可能!」

「これは子供達が書いてくれた周辺の地下の道です、しかしこれは通路を爆撃か何かでふさがれる前に行動しなければいけないし・・・もちろん老朽化した遺遺跡です、ばれて直接攻撃には弱いですけど・・」

「あの子供達がこんな道を知っていたなんて・・・ゲイル今すぐ作戦を変更、この地を生かして戦う準備を!」

「わかった」

「レキ様ありがとうございます」

「・・・あんた本当に政府と戦う気でいた?」

「何を言ってるんです?」

「あんたみたいな目を持った人を俺は知っている、あんたには慕ってくれる多くの仲間がいる・・死に場所を探すのはまだ早いんじゃない?」

その言葉にレインは何も答えなかった、っと言うよりは答えれなかったの方が正しかったのかは解らなかった。けど俺はこの人達には生きてほしいと思った。


「おい!そっち警備が手薄だぞ!」

「だってこっちは北ですよ、敵がいないって・・」

「何で東西南に敵がいるのに北だけ・・・まさか・・・」

「ゲイル、望遠鏡ある?」

「何に使うんだ?」

「おかしいと思わないか?北だけ敵がいないなんて・・まるで俺達を逃がす様に?北に何かあるんじゃないか?」

ゲイルは慌てて北の方角へ望遠を向けると、北は巨大な湖があり、その湖にそって赤い光。


決戦の日・・双方睨み合いが続くかと思いきや、日が昇るとすぐに攻撃が始まった。

一度に砲撃されるとひとたまりもないが、何とか地理に利ってやつで何とか攻撃を塞いでいるが・・。

「レイン何を考えてるんだ!!」

たまたま通りかかった司令部でまたもや・・。

「自分が政府軍に侵入するなんて!!」

「作戦はまず軍の指令が置かれている湖の基地を落とす、それからこの地下道を使い直接東西南同時に攻撃を行う」

皆はレインの方をじっと見つめている。

「私は本当は死に場所を探していたのかもしれない、戦乱の世を生き残り何をするでもなく生きてきた・・それがこんな結果になってしまったのだと思う、この戦い私は皆を死にさらしてしまった・・・」

レインは皆に頭を下げる。

「何を言ってるんですか、レインさん!俺達は皆お頭が思う道こそが俺達の道だったんですよ!」

「そうです!我々はきっと頼りすぎていたんですね・・」

「これからは私達に何でも言って下さい!」

「一緒に戦いましょう!!」

「皆・・・」

レインは再び頭を下げ、顔を上げたレインは死神を振り払ったように凛とした顔していた。

テキパキと指示を与え、湖の方は水の底から爆薬を仕掛け混乱している間に、北にいる敵軍をつぶす作戦・・。何とか勝利を収めることが出来たが、アジトは砲撃でバラバラになってしまい・・。

「これから我々は新しい家を探しに行きます」

戦いから1日で多数のグループに別れて旅立った。最後に残ったのはレインとゲイルと子供達。

「私だけでなく、私達の命を助けて頂いてありがとうございました、このお礼は二度と忘れません」

「レイン、実は俺・・」

「いえ、私達にとってあなたはあなたです」

初めて見るレインの笑顔。ゲイルはぶっきらぼうに一言「・・・元気で」と言うと先頭にたって歩き始めた。

「お兄ちゃん、また一緒に遊んでね!」

「それでは・・・」

子供達は最後まで手を振っていたが、レインは前だけを見て振り返る事は無かった。


「おーい!!」

聞き覚えのある声に振り向くと、レキ達がこっちに向かって歩いてきていた。俺は思わずレキに抱きついてしまった。

「何だ~俺には熱い包容は無いのかよ」

「シン何してたんだ?」

「それが!・・・大変だったんだよ~!!」

珍しくレキとライメイは顔を見合わせて肩をすくめたのだった。


戦いにしか生きられない、そんな人がいるなら、戦いの果てにあるこの時代どうやって生きているのだろう。


「シン!早くしないと、また迷子になるぞ!」



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