「始まりの地下」
次回の更新は金曜日の朝7時になります。
まだまだ物語は続きます。
夜。ログイン。
始まりの町・リベルタ。酒場の地下室の奥に現れた階段。
セレスとハルが隣にいる。
「トワ。いく?」
「ああ、行こう」
「わたしもいきます!」
三人で階段を降り始めた。
階段は長かった。百段。二百段。光が届かなくなり、【見聞録】の温度センサーだけが頼りになる。
五百段を超えた頃──空間が開けた。
【隠しエリア「始まりの揺籃」に到達しました】
【このエリアはあなたが最初の踏破者です】
揺籃──ゆりかご。
巨大な地下空間だった。天井にはBCOの全大陸の裏側が──つまり地上世界の底面が、鍾乳石のように垂れ下がっている。そして空間の中央に──巨大な木があった。
地底に生える、光る大樹。根が地下空間全体に張り巡らされていて、幹は天井まで届いている。枝には光の実が無数に灯っている。
「きれい……」
ハルが息を呑んだ。
「おっきい……セレス、こんなの、はじめてみた」
大樹の根元に、石碑があった。最後のソルシア王国の壁画。
【壁画の翻訳:「この大樹は世界の根。全ての大地はこの樹から生まれた。七つの記憶を捧げよ。──樹は目覚め、世界の果てへの道を拓く」】
七つの記憶を捧げる。世界地図の欠片。
しかし、今は六つしかない。七つ目は──ここにあるはずだ。
大樹の根元を歩いた。根の間に、小さな祭壇がある。祭壇の上に──最後の光。
【世界地図の欠片(7/7)を入手しました】
七つ揃った。
【世界地図の欠片が全て揃いました】
【「世界地図」が完成しました】
七つの欠片が──トワの手の中で融合した。光が収束し、一枚の地図が形成される。
BCOの全世界地図。全大陸、全海域、全エリアが描かれた完全な地図。そしてその端に──通常の地図にはない場所が描かれていた。
【世界の果て】
地図の最外縁、世界の境界線の向こう。
大樹が──震えた。
根が光り、幹が輝き、枝の実が一気に明るくなった。
【世界の大樹が「世界地図」を認識しました】
【「世界の果て」への道が解放されました──ただし、旅人の最終試練をクリアする必要があります】
旅人の最終試練。霧底の森の門。全エリア踏破率100%で入場可能。
踏破率を確認した。
【全エリア踏破率:99.2%】
99.2%。あと0.8%。──「始まりの揺籃」を踏破すれば。
大樹の周囲を歩いた。根の間の道を一本ずつ確認し、隅々まで足を運ぶ。
三十分かけて、揺籃の全域を歩き終えた。
【全エリア踏破率:100.0%】
【──おめでとうございます。あなたはBCOの全ての場所を歩きました】
100%。
全ての場所を、歩いた。
冬夜は立ち止まった。
二年間。七千時間以上。銀月の草原から始まり、終夜の回廊、霧底の森、星砂の廃都、天蓋の遺跡、翡翠の密林、深海の珊瑚宮──そして、始まりの町の地下。
全てを歩いた。全ての地図を塗った。灰色の場所はもう、どこにもない。
「トワ! 100! 100になった!」
セレスがぴょんぴょんと跳ねている。
「トワさん……全踏破、全踏破です……!」
ハルは涙目になっていた。
冬夜は何も言わず、ただ大樹を見上げている。
不思議と空虚ではなかった。全て歩き終えた達成感。そしてまだ、終わりではない。旅人の最終試練が待っている。世界の果てが待っている。
「行こう。──最後の試練に」
次回の更新は金曜日の朝7時になります。
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