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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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ギルド対抗戦


 ギルド対抗戦、当日。



 〈深紅の牙〉48人と、傭兵枠のトワ、ミコトの計50人。



 対戦相手は──〈鉄壁のファランクス〉。ギルド対抗戦の前身となったシーズンイベントで三期連続優勝の古豪。ギルドメンバーの平均レベルは88。〈深紅の牙〉の平均レベル84を大きく上回る。



 そしてこのギルドには、対抗戦に特化した指揮官がいる。



 プレイヤー名:ヴァルハラ。Lv90。職業:聖騎士(僧侶系上位職)。



 通称「鉄の軍師」。個人の戦闘力ではなく、集団戦の指揮能力でBCOに名を馳せた戦術家だ。彼が指揮を執る試合で〈鉄壁のファランクス〉が負けたことは、一度もない。



 ミコトが配信を担当する。戦闘に参加しながらの実況だ。




『皆さんこんばんは! ギルド対抗戦、〈深紅の牙〉vs〈鉄壁のファランクス〉です! 視聴者数──既に四十万! 注目はもちろん傭兵枠のトワ選手ですが、対面にはギルド戦無敗の「鉄の軍師」ヴァルハラ選手がいます! これは厳しい相手ですよ……!』




  > ファランクスかー、これキツくない?

  > ヴァルハラの指揮はガチ。個人技じゃどうにもならん

  > トワの索敵 vs ヴァルハラの戦術、面白そう

  > 個の力 vs 組織の力だな

  > でも、トワって集団戦初めてだろ? 大丈夫か?




 専用マップ。森と丘と川で区切られたフィールド。自陣と敵陣に旗が一本ずつ。先に相手の旗を奪った方が勝ち。制限時間30分。



 バルトがレイドチャットで全員に指示を出す。



「配置は練習通りだ。攻撃部隊三十人はレナを先頭に中央突破。防衛部隊十五人はマルクを中心に旗周辺を守れ。遊撃はトワとカインの二人。リゼは攻撃部隊の後方支援。ミコトは防衛部隊から援護射撃。──トワ」

「ここにいる」

「お前の仕事は索敵だ。【見聞録】で敵の配置を把握して、レイドチャットに流せ。あとは──好きにしろ」

「了解」

「好きにしろ、だってさ。集団戦だっていうのによ」とカインが笑った。




 【ギルド対抗戦 開始 ── 制限時間30:00】




 トワは走った。



 フィールドの外周を大回りに走り、高台に登る。【見聞録】を最大感度で展開。索敵範囲300メートル──【光魚のシチュー】のバフで拡張済み。



 敵50人の配置が、即座にレイドチャットに流れた。



 トワ:「敵、三方向に分散。中央15人、左翼15人、右翼20人。本隊は右翼と推測。ヴァルハラは右翼後方」



 バルトが即座に対応する。



「右翼が本隊か。攻撃部隊、中央を押しながら右翼の側面を突け。──トワ、敵の動きに変化があったらすぐ教えてくれ」




 レナの攻撃部隊が中央に突っ込む。敵の中央隊15人と正面衝突──

 だが。




 トワ:「──動きが変わった。左翼の15人が急速に転進。中央に合流しようとしている。罠だ」

 遅かった。左翼の15人が中央隊に合流し、30人の集団がレナの攻撃部隊を包囲しにかかっていた。三方向からの同時攻撃。



「包囲された!? 左翼いつの間に──」

 レナが叫ぶ。



 トワ:「ヴァルハラの指示だ。最初から左翼は囮で、中央で包囲するつもりだった」

 トワの索敵は敵の位置を把握できる。だが──敵の作戦の意図までは読めない。ヴァルハラはトワの索敵があることを前提に、あえて位置を見せた上で裏をかいてきたのだ。




『これは! ヴァルハラ選手の戦術が上回っています! レナさんの攻撃部隊が包囲されかけている!』




  > やべえ、包囲されてる

  > ヴァルハラの読みが上だった

  > トワの索敵を逆利用されてるのか? 位置がバレてる前提で動いてる

  > 頭脳戦だ……




 バルトが声を張る。



 レナ:「無理に突破するな! 一旦引け! マルク、防衛隊から五人を援軍に──」

 トワ:「待て。右翼の本隊20人が動いた。旗を狙って直進してくる」



 包囲で攻撃部隊を足止めしている間に、本隊が防衛部隊の薄くなった旗を狙う。ヴァルハラの本命は最初から右翼だった。包囲も陽動。



「くそ、二重の罠か! 防衛隊から援軍を出した瞬間、旗が手薄になる──」



 バルトの判断が揺れている。攻撃部隊を救うために防衛から人を出せば旗が落ちる。出さなければ攻撃部隊が壊滅する。


 詰んでいた。


 ──いや。



 トワ:「バルト。俺が右翼の本隊を止める」



「──一人で20人をか?」

「止めるんじゃない。遅らせる。防衛はマルクの15人で守れ。レナには包囲から脱出させろ。三分稼ぐ」

「三分で何が変わる」

「三分あれば、レナが包囲を抜けて右翼の背後を突ける。挟み撃ちだ」



 バルトが一瞬黙り、それからうなずいた。



「──やれるか?」

「やれるかどうかじゃない。やるんだ」



 トワは高台を飛び降り、右翼に向かって走った。




    ◇




 右翼の本隊20人が、森を抜けて自陣に迫っていた。



 先頭を走るのは──Lv90の重装騎士。フルプレートアーマーに大盾。名前は「ガルド」。〈鉄壁のファランクス〉の副ギルドマスターで、ヴァルハラと並ぶギルドの柱だ。



「全員止まるな! 旗まで一直線だ! ──ん?」



 ガルドが足を止めた。前方の木の上に、一人のプレイヤーが立っている。



 Lv1。旅人。



「ここから先には行かせない」

「……トワか。噂は聞いている。だが、一人で20人を止めるつもりか? 数の暴力をなめるなよ」

「なめていない。だから──こうする」



 トワは木の上から【旅人の広域煙幕】を投げた。白い煙が森を覆う。



「煙幕!? 全員動くな、視界が──」



 煙幕のもう一つの効果。使用者のミニマップ表示を消去する。20人のミニマップからトワの位置が消えた。



 だが20人全員の位置は、トワの【見聞録】に映っている。



 煙幕の中で、トワが動いた。



 最後尾のヒーラーに、弓の一射。背後から。



 2,400。ヒーラーが悲鳴を上げる。



 0.17秒で剣に切り替え。隣の魔法使いに三連斬。6,200──6,200──6,200。



 0.17秒で槍。反応して振り向いた盗賊に突進。貫通。



 3人を倒した。残り17人。



「散開するな! 密集陣形を取れ! 固まっていれば──」



 ガルドが指示を出す。的確だ。密集していれば、一人ずつ狩られない。



 だが、トワは密集した集団に突っ込まない。距離を取り、弓で一人ずつ射る。煙幕が晴れるまでの間、見えない位置から矢が飛んでくる。



 1分経過。煙幕が薄れ始めた。倒した敵は5人。残り15人。



「煙幕が晴れるぞ! 見つけ次第、全員で囲め!」



 煙幕が消えた。トワの位置が露出する。

 15人が一斉にトワに向かってきた。

 一人で15人を正面から相手にはできない。だが──遅らせることはできる。



 トワは走った。フィールドの地形を利用して、川を挟み、岩を壁にし、木の間をすり抜けて15人を引きつけ続ける。



【冒険のお守り】の移動速度バフ。重装騎士のガルドは追いつけない。軽装の盗賊や弓使いだけが追いすがってくるが、少数なら対処できる。



 追いかけてきた盗賊を三連斬で返り討ちにし、弓使いに矢を打ち返す。



 2分経過。残り12人。だがトワのHPも削られている。矢を二本食らった。残りHP58。



 3分。



 レナ:「包囲突破した! 今から右翼に向かう!」



 ──間に合った。



「全員反転! 後ろから攻撃部隊が──」



 ガルドが叫ぶが遅かった。レナの攻撃部隊25人が、右翼本隊の背後に殺到した。

 挟み撃ち。前にトワ、後ろにレナ。

 右翼本隊が崩壊した。


 同時に──中央の包囲隊も、攻撃部隊がいなくなったことで空振りになっていた。バルトが防衛部隊をまとめ直し、ヴァルハラの本陣に向かって攻撃に転じる。



 トワ:「敵指揮官ヴァルハラの位置、座標を送る。旗の左後方、護衛三人」



 カインが影から飛び出し、護衛を一人倒す。リゼの魔法が二人目を吹き飛ばす。三人目をレナが斬り伏せた。


 ヴァルハラが一人になった。

 聖騎士は防御に秀でるが、単騎で複数を相手にはできない。



「──見事だ」


 ヴァルハラが盾を下ろした。降参の姿勢。


「索敵一つでここまで戦況を覆されるとは思わなかった。だが……覚えておけよ、トワ。二度目はない、次は索敵ごと封じる手段を用意する」


 トワはチャットを打った。



 「楽しみにしている」



 レナが敵の旗を掴んだ。



 【〈深紅の牙〉が〈鉄壁のファランクス〉の旗を奪取しました】




 【勝者:〈深紅の牙〉】

 【試合時間:14分23秒】




 コロセウムが沸いた。



『勝ちました!! 〈深紅の牙〉の勝利です!! 14分23秒の激闘! ヴァルハラ選手の二重の罠に嵌まりかけましたが、トワさんが一人で20人を3分間足止めして──信じられない!!』



  > 14分の接戦!!

  > ヴァルハラの戦術えぐかった。二重陽動とか

  > でもトワの一人で20人足止めが異常すぎる

  > 煙幕の中で5人倒してるのマジ?

  > 見えない場所で見えてる男

  > ソロ最強が集団戦でも異次元

  > いやこれ、トワだけじゃないぞ。レナの包囲突破も、カインの護衛排除も全部噛み合ってる

  > 〈深紅の牙〉、中堅ギルドなのにギルド戦無敗のファランクスを倒したの普通にヤバい

  > トワの周りにいる人、みんな格上がるな




 観客席から、一人のプレイヤーが試合を見ていた。

 ゼクス。

 腕を組み、黒い装束のフードの下から鋭い目で戦場を見つめていた。



「……面白い」


 隣にいた〈黒翼騎士団〉の副官が声をかけた。


「ゼクスさん、ファランクスが負けましたよ。あのヴァルハラが」

「ああ。──だが、ヴァルハラの読みは正しかった。トワの索敵を前提にした戦術。序盤は完全に上を行っていた」

「それでも負けた」

「トワが一人で20人を止めた。あれが想定外だった。──普通はやらないし、やれない。だがトワは旅人だから、やる。地形を使い、煙幕を使い、走り回って時間を稼ぐ。一人で歩いてきた人間の戦い方だ」

「次のシーズンで当たりますかね」

「当たるだろう。──その時までに、対策を練っておく必要がある」



 ゼクスが立ち上がり、コロセウムを去った。




    ◇




 対抗戦の結果は、その夜のうちにフォーラムのトップを埋め尽くした。


 【ギルド対抗戦初日 〈深紅の牙〉がギルド戦無敗〈鉄壁のファランクス〉を撃破】



 ──「中堅ギルドがファランクスを倒した!? ヴァルハラの無敗記録が止まった!?」

 ──「トワの索敵が異次元。レイドチャットのスクショ見たけど、敵50人の位置が秒単位で更新されてる」

 ──「【見聞録】って元々はモンスター用のスキルだろ? 対人でここまで使えるのか」

 ──「しかも一人で20人を3分足止めしてるんだぜ。煙幕と地形利用と武器切り替えで」

 ──「ヴァルハラの戦術も凄かったけどな。二重陽動は読めなかった」

 ──「トワも最初は嵌まってた。索敵で位置はわかっても意図は読めない。そこがヴァルハラの上手さ」

 ──「でも結局、トワが個人技で盤面を力ずくでひっくり返した」

 ──「個の力で組織を破る──これが旅人の戦い方かよ」

 ──「しかも料理バフで、索敵範囲拡張してるらしい。料理って何だ?」

 ──「トワが料理!?」

 ──「もうなんでもありだな」




 別のスレッドでは、ルナティス討伐の話が広がっていた。




 【速報】月蝕の祭壇に入った者がいる模様。戦闘系の称号を確認【称号確認済】



 ──「『月を喰らう旅人』って称号持ってるやつがいるぞ」

 ──「旅人……トワしかいないだろ」

 ──「月蝕の祭壇って、月蝕の夜に出現するソロ専用の隠しエリアだろ? 入場条件は目撃情報があったが、中のボスの情報は一切出てきてないよな」

 ──「『月を喰らう』って称号名からして、中で何か強大な敵を倒したんじゃないか? じゃなきゃ、こんな称号つかないだろ」

 ──「だとしたら、ソロ限定エリアの中の敵をソロで倒したってことだよな。当たり前のようで当たり前じゃない」

 ──「でも、月蝕の祭壇ってエリアの推奨レベル表示が見えた人いたよな? 確か推奨Lv90以上って」

 ──「それをLv1で突破してるのか……」

 ──「もう驚かなくなってきた自分がいる」

 ──「いやいや、驚けよ」」

 ──「っていうかさ、トワの称号リスト見てくれよ。サーバーファースト系の称号がずらっと並んでる。このゲームの全ての『最初』を独占してるぞ」




 さらに別のスレッド。




 【考察】トワの最近の行動から推測される「旅人の最終到達点」



 ──「トワが月蝕の祭壇で戦闘系の称号を取った。しかもソロ限定エリアで。つまり旅人には、旅人専用の高難度コンテンツが用意されているんじゃないか?」

 ──「さらに、始まりの町に旅人にしか見えない隠しNPCがいるとの噂も」

 ──「霧底の森に料理NPCがいるとの噂。旅人にしか行けないエリアの、隠し要素か?」

 ──「旅人専用の称号、旅人専用のNPC、旅人専用のボス──ここまで揃ってるなら、旅人専用の最終武器もあるんじゃないか?」

 ──「つまり、運営は最初から旅人を『最後まで歩いたプレイヤーへのご褒美ルート』として設計していた?」

 ──「そうだとしたら、BCOの本当の最終コンテンツは──旅人専用なのか?」

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祭壇が隠しエリアから専用の〜 の内容が書いてる話を読んでから、あれ……そう言えばちょっとおかしいような?と思って確認しにきてみました…… 【速報】月蝕の祭壇のソロボス、誰かが既に倒している模様【称号…
ルナティスのドロップに『旅人専用最終武器素材』があるとしてって、なんでそんな仮定が出てきたんだろう……? 主人公が情報を何処かに出さなければ、どんなに考察が凄い人でも、こんな事は考えるはずは無いような…
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