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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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旅人と旅人


 記憶封印の解除作業を進めながら、地下墓所の準備も並行して進めていた。

 カレンはLv70。地下墓所のモンスターに即死はしないが、油断はできない。トワが先行して偵察し、カレンが封印を解除する。その分担で行く。


 だがその前に──カレンと二人で、聖都の外を歩いた。

 レベル上げの時に駆け抜けた光の峡谷を、今度はゆっくり歩く。戦闘ではなく、散歩。旅人が二人で歩く、ただそれだけの時間。



「カレン。お前は千年前、どこまで歩いたんだ」

「この大陸の全域だ。ルミナリアから始めて、ソルシアを歩き、砂漠を越え、海を渡り──始まりの町まで。グランに会ったのは、旅の途中だった」

「グランに会った時の印象は?」

「変な老人だと思った。地下の暗い部屋で一人で立っていて、『おかえり』と言った。おかえりも何も、初めて会ったのだが……」

「グランは誰にでもそう言う。俺も最初に『おかえり』と言われた」

「そうか。──千年経っても同じなのか。あの老人は」


 峡谷の白い岩壁が太陽光を反射している。まぶしい。影がない。ルミナリアは太陽の国だから、影が薄い。



「トワ。──お前は、なぜ旅人のままでいるんだ?」

「旅人以外の職業に就く理由がないからだ」

「理由がない、か。──わたしは理由があった。王になる理由が。師匠が深淵に行ってしまい、誰かがこの国を守らなければならなかった。だから……旅人を、やめた」

「そのことを、後悔しているか?」

「している。──だが後悔していなければ、お前と出会えなかった。千年間後悔し続けた結果、お前が来た。だから後悔にも意味はあった」

「後悔に意味があるという考え方は、俺にはできない」

「お前には、後悔がないからだ」

「ないな。七千時間、一度も後悔したことがない」

「それは──羨ましくもあり、少し怖くもある」

「怖い?」

「後悔しない人間は、止まらない。止まれないのかもしれない。お前は──歩くことをやめられるのか?」


 トワは少し考えた。


「やめられるかどうかは、わからない。やめたいと思ったことがないから」

「それが──旅人だ。やめたいと思わない限り歩き続ける。私はやめたいと思ったから、やめた。そこが──お前と私の違いだ」

「お前は弱かったんじゃなく、正直だっただけだ。やめたいと思うことは弱さじゃないだろ」

「……そう言ってくれるのは、お前だけだ、トワ」


 セレスが肩の上で二人の会話を聞いていた。


「カレンとトワ、たびびと。でも、ちがう」

「違う。同じ旅人でも、歩き方は全然違う」

「カレンは、とまった。トワは、とまらなかった。でも──いまは、ふたりともあるいてる」

「そうだな。──今は、二人とも歩いている」

「じゃあ、おなじ。──いまがおなじなら、むかしはちがくてもいい」


 セレスの論理はいつも単純で、正しい。

 その言葉に、カレンが笑った。



「お前の精霊は──いい哲学者だな」

「哲学者? そんないいもんじゃない、おやつが好きなだけの精霊だ」

「おやつもてつがくも、おなじくらいだいじ。セレスのてーり」

「定理が多すぎるぞ」


 峡谷を抜けた。聖都が見える。白い壁。光の塔。千年間カレンを閉じ込めていた街が、今はカレンの故郷として──少しだけ温かく見える。


「トワ。地下墓所に行く前に──一つだけ、お前に伝えておきたいことがある」

「何だ」

「地下墓所の最奥に──師匠の研究室がある。そこに師匠の手記が残っている。手記には──深淵の入口の座標と、師匠が深淵で見たものが書かれているはずだ」

「見たもの?」

「師匠は一度──深淵に降りて、戻ってきた。その時は正気だった。二度目に降りた時に──戻ってこなかった」

「一度は戻ってきたのか。──それは知らなかった」

「一度目と二度目の間に──何が変わったのかは、わたしにもわからない。だが手記を読めば、何かがわかるかもしれない」

「わかった。地下墓所に行く。──明日」

「明日か、早いな」

「お前が準備できているなら、遅らせる理由がない」

「準備は──できている。Lv70まで上げてもらったおかげで、死なない程度には動けるさ」

「死なない程度、ではなく、お前は峡谷で光蠍を自力で倒した。十分に戦える」

「あれは一体だけだ。地下墓所には──何体いるかわからない」

「何体いても同じだ。俺が前を歩く。お前は後ろで封印を解け。それだけでいい」

「師匠と弟子の分担だな」

「弟子じゃないだろ」

「いやいや、私も弟子だ」


 セレスが「でしがまたふえた」と呟いた。

 聖都に戻った。明日、地下墓所に行く。深淵への手がかりが、そこにある。


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