「傭兵」
月曜日。大学。
食堂で宮瀬と昼食を食べた。冬夜はコンビニ弁当ではなく、食堂の定食を自分で注文した。
「あ、定食にしたんだ」
「前に言われたからだ」
「私の言うこと、聞いてくれるんだ。嬉しい」
「合理的だと思っただけだ。カップ麺より栄養バランスがいい」
「素直じゃないなぁ」
宮瀬が笑う。冬夜は黙って焼き魚を食べた。
「ねえ、久坂くん。週末どうだった?」
「ゲームをしていた」
「大事なやつ?」
「ああ。──勝った」
「おめでとう!」
宮瀬が拍手した。何に勝ったかも知らないのに、嬉しそうだ。
「次は大きな団体戦があるらしい。参加するか迷っている」
「久坂くんって、一人でやるタイプなんでしょ?」
「ああ」
「でも、団体戦に迷ってるってことは、ちょっとやりたいんじゃない?」
冬夜は箸を止めた。
「……そう見えるか」
「うん。だって、やりたくないなら迷わないもん。やらないって即答するでしょ、久坂くんなら」
正論だった。反論できない。
「まあ、やってみたらいいんじゃない? 合わなかったらやめればいいし」
「……そうかもな」
食堂を出て、並木道を歩く。
「あ、そうだ。久坂くん、来週の金曜、比較文化論のゼミ発表あるじゃん。資料作り、一緒にやらない? 図書館で」
「一人でもできるが」
「私が一人じゃできないの! 助けて!」
冬夜はため息をついた。
「……金曜の午後なら」
「ありがとう! 久坂くん大好き!」
「軽いな、その言葉」
「軽くないよ」
宮瀬の声のトーンが、ほんの少しだけ変わった。たぶん、ただの気のせいだろう。
◇
夜。ログイン。
レナにメッセージを送った。
トワ:「傭兵枠、受ける」
三秒で返信が来た。
レナ:「きたあああああ!!!!!」
レナ:「バルトに伝える! あとカインとリゼとマルクにも!!」
レナ:「嬉しい!!!」
五分後、バルトからメッセージが来た。
バルト:「トワ、感謝する。傭兵枠の五人のうち一人は確保した。残りの四枠は──心当たりはあるか?」
冬夜は考えた。傭兵枠は五人。自分で一人。残り四人。
ギルドに入っていないプレイヤーで、腕の立つ者。
一人、思い浮かんだ。
トワ:「一人だけ。声をかけてみる」
メッセージを送った。相手はゼクス。
トワ:「ギルド対抗戦、〈深紅の牙〉の傭兵枠で出ないか」
返信は速かった。
ゼクス:「俺は〈黒翼騎士団〉で出る。敵として会おう」
トワ:「そうか」
ゼクス:「──楽しみにしている」
敵か。それもいい。
もう一人、声をかけた。
トワ:「ミコト。ギルド対抗戦、傭兵枠で出ないか」
ミコト:「え!? 私が!? 私Lv83ですよ!? 足手まといじゃないですか!?」
トワ:「弓使いの遠距離火力は集団戦で重要だ。それに、お前の【曲射】は、俺でも一発もらった」
ミコト:「…………」
ミコト:「……あの時のこと、覚えてくれてたんですね」
トワ:「実戦で経験した技術は忘れない」
ミコト:「もう! そういうとこ!!」
ミコト:「出ます。出ますよ。絶対出ます」
傭兵枠。自分とミコトで二人。残り三人はバルトに任せる。
メッセージを閉じて、草原を歩いた。
銀月の鹿がいた。
【友好度が上昇しました:41/100】
半分まであと少し。
鹿の首筋を撫でながら、冬夜は思った。
──団体戦。50人で戦うのか、この俺が。




