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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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《光の獣》


 聖都ルクスの探索を続けながら、友好度上げと並行してルミナリアの踏破率を上げていった。



 聖都の外周には──森がある。『聖光の森』と呼ばれるエリア。白い木々が立ち並び、葉が光を帯びて輝いている。綺麗な森だが、この場所にはモンスターがいた。




【光の白狼(はくろう)Lv94 HP:95,000】




 白い狼。三体一組の群れで行動する。一体が囮になり、残り二体が側面から挟み撃ちする──連携型のフィールドモンスター。




「狼の群れ──三体同時は厄介だな」



 ゼクスが短剣を構えた。

 ルーナの夜を展開する前に、冬夜はセレスに聞いた。




「セレス。この狼──敵意があるか?」

「ん? んー……あんまり」

「あんまり、か」

「こわがってる、みたい。なわばりをまもろうとしてる。──おそってるんじゃなくて、おいはらおうとしてる」



 冬夜は──武器を降ろした。



「トワさん!?」

「少し試す」



 トワはアイテムストレージから、マーサのスープを取り出した。光砂のスープではない。霧底の森のレシピで作った、普通の野菜スープ。



 スープの器を地面に置いた。白狼の群れの──十メートル手前に。



 三体の白狼がk、足を止めた。鼻がひくひく動いている。スープの匂いを嗅いでいる。

 一体が恐る恐る近づいてきた。スープの器に鼻を突っ込み──飲んだ。

 尻尾が、揺れた。




「……飲んだ。尻尾、振ってる」タマキが小声で言った。



 残りの二体も近づいてきて、スープを分け合うように飲み始めた。




【光の白狼の敵対状態が解除されました】

【光の白狼の友好度が上昇しました:0/5 → 1/5】




「師匠……モンスターにも友好度が!?」

「ルミナリアのモンスターは──ソルシアの精霊と同じで、本来は敵対的な存在じゃないのかもしれない。恐らくこれは……カレンの仕業だ。あいつが『侵入者を排除しろ』と命令しているだけで、友好的な生き物もいる」

「ナミやギンリュウと同じ……ヌシ個体じゃなくても、友好度があるモンスターがいるんですね」




 白狼の一体が、冬夜の手を舐めた。




「なつかれてますね……」タマキが微笑んだ。



 セレスが肩の上で、白狼をじーっと見ていた。



「トワ。このこ──なまえ、つけてあげたら?」

「モンスターに名前をつけるのか?」

「なまえをつけると、なかまになる。──セレスも、トワになまえをよんでもらって、うれしかった」



 冬夜は白狼を見た。白い毛並み。光を帯びた金色の目。



「……シロ」

「シロ……安直すぎませんか?」タマキがツッコんだ。

「トワのネーミングセンス……」ゼクスが遠い目をした。

「白いからシロだ。問題あるか」

「問題しかない……」



 でも白狼は、名前に反応した。耳がぴくっと動き、尻尾がさらに激しく揺れた。




【光の白狼「シロ」に名前をつけました】

【友好度が上昇しました:1/5 → 3/5】

【シロがパーティに同行を希望しています】




「名前つけただけで友好度が3に!?」

「しかもパーティ同行!?」



 シロが冬夜の横にちょこんと座った。白い狼が、旅人の隣に。



「トワ。シロ、かわいい」セレスが認めた。


「でもセレスのほうがかわいい。──シロは、にばんめ」


 ルーナが影の中から声を出した。


「わたしは、何番目?」

「ルーナは、さんばんめ」

「三番目……」ルーナの声が少し寂しそうだった。

「でも、さんばんめもだいじ。セレスは、みんな、だいじ」



 セレスの──懐の広さなのか、序列への執着なのか、判断に困る発言だった。




    ◇




 聖光の森には、白狼以外にもモンスターがいた。




【光の大鹿ひかりのおおじかLv96 HP:130,000】




  巨大な白い鹿。角から光のビームを放つ。単体でとても強いモンスターだが──セレスの覚醒形態に反応して、攻撃を止めた。同じ「鹿」だからだろうか?




「セレスちゃんの覚醒形態を見て──大人しくなった?」タマキが不思議そうだ。



「セレスは、しゅごせーれー。どうぶつのせーれーにちかい。だから、どうぶつがたのモンスターは、セレスをそんけーする」



 セレスの覚醒形態──巨大な白銀の鹿の姿が、光の大鹿に「上位存在」として認識されたらしい。

 大鹿は頭を下げて、道を譲った。




【光の大鹿との遭遇:戦闘回避(セレスティアの威光)】




「セレス無双だ……」ハルが呟いた。

「セレスのために、みちをあけてくれた。──えらい。あのしか、えらい」

「自分で『えらい』と言うな」

「えらいものは、えらい」



    ◇




 進んでいくと、森の奥に『光の獣』がいた。白狼や大鹿とは、格が違う。





【聖光の守護獣・光獅子レグルス Lv98 HP:350,000】




 白い獅子。全長八メートル。たてがみが光のオーラで燃えている。金色の瞳が、六人を見据えている。




「これは──友好度で解決できるタイプじゃないな」ゼクスが短剣を抜いた。



 冬夜は【見聞録】でレグルスを解析した。



 攻撃パターン。光の咆哮(範囲攻撃)。光の爪(近接五連撃)。光の突撃(高速突進)。──そして、光のたてがみのオーラが、周囲の光属性モンスターを強化するバフを放っている。



「こいつは、森のボスだ。周囲のモンスターを統率する──『獣の王』」

「倒しますか?」アストレアが聖剣を構えた。

「倒す。──だが、このボスにはある方法を試したい」



 トワは、セレスに向き直った。


「セレス。お前の覚醒形態で、あの獅子を抑えられるか」

「やってみる。せーれーの威光で、あいてのバフをおさえこむ。でも、おさえてるあいだ、セレスはうごけない」

「なら、お前が押さえている間に、俺が仕留める」

「お前ひとりで? Lv98のボスを?」



 ゼクスが眉を上げた。



「心配するな。ひとりで歩くのは、旅人の得意分野だ」

「だが、相手は強敵だぞ。新エリアのフィールドボス……俺たちも戦った方が良いだろう」

「非合理的なことは分かってる。だが……俺は元々、ソロプレイヤーだったからな。新エリアのボスが、どの程度なのか。ちょっと、腕試しさせてほしい」



 ゼクスは仕方なさそうに頷き、アストレアは目を伏せ、タマキとハルは期待に目を光らせている。

 


 セレスが覚醒形態に変わった。巨大な白銀の鹿──光獅子レグルスと向き合う。



「──」



 二頭が睨み合った。精霊の威光と獣の王の威圧が──衝突する。空気が震える。森の木々が揺れる。

 レグルスのたてがみのバフが──消えた。セレスの威光に押されて、統率の力が封じられている。




「行け、トワ! バフが消えた!」



 冬夜は【果ての道標】を構えた。

 ここで影銀も夜銀も使わない。白銀のまま。属性なしの旅人の剣。



「──いくぞ、レグルス」




 光獅子が咆哮した。光の衝撃波、冬夜が横に跳んで回避、砂塵が舞う。



 光の爪。五連撃。見聞録がパターンを読む──三撃目と四撃目の間に0.3秒の隙。そこに三連斬を差し込む。




 28,000──28,000──28,000。




 白銀の剣でもダメージは通る。軽減はされるが──七千時間で鍛えた攻撃力は、軽減を上回る。



 レグルスが突撃してきた。八メートルの獅子が、全速力で突進する。



 冬夜は──避けなかった。

 突撃の軌道を見聞録で読み、最後の一瞬で半歩だけ横にずれた。獅子の巨体が……紙一重で通過する。たてがみの光が頬をかすめた。



 すれ違いざまに槍に切り替え、突き、獅子の脇腹を貫く。




 35,000。




 0秒で弓に切り替え。振り返りざまに三連射。背中に三本の矢が突き刺さる。

 0秒で剣に戻す。戻ってきたレグルスの爪を──受け止め、弾き、カウンターの三連斬。




 28,000──28,000──28,000。




 HP350,000が──削れていく。300,000。250,000。200,000。




 レグルスが──怒り狂った。全力の咆哮。光の爆発がトワを吹き飛ばす。

 HP360のうち280が消えた。──が、タマキの回復が即座にかかる。




「トワさん! 回復入れます!」




 HP全快。──再び突進。




 残りHP100,000。レグルスの動きが変わった。怒りを超えて、冷静になっている。獣の王としての本能が、目の前の旅人を「格上」と認めた。



 最後の突撃。全力。八メートルの獅子が、持てる全ての光を纏って、冬夜に向かってくる。



 冬夜は──走った。レグルスに向かって、正面から。

 衝突の直前、跳んだ。獅子のたてがみの上を飛び越え、空中で剣を振り下ろす。

 頭上からの一撃。獣の王の急所……首の付け根を、全力の三連斬が叩く。




 35,000──35,000──35,000。




 レグルスのHPが、ゼロになった。

 獅子が、膝を折った。倒れるんじゃなく、頭を下げた。敗北を認める仕草。獣の王が──旅人に、頭を垂れた。




【聖光の守護獣・光獅子レグルスを討伐しました】

【ドロップ:獅子のたてがみ(超希少素材)】

【ドロップ:聖光の牙(武器素材)】

【称号「光の獣を制した旅人」を獲得しました】




 そしてレグルスは、光の粒に分解されて消えていった。



 トワは剣を鞘に戻した。息が荒い。Lv98のボスとの一対一は──さすがに消耗した。



「トワさん、回復入れますね」

「ありがとう、タマキ」

「まさか……本当に、ソロで倒しきるとはな」

「相変わらず、信じられない御方ですね」

「へへっ……流石、わたしの師匠です」




 セレスが覚醒形態から小さい姿に戻り、トワの肩にぽすっと着地した。




「トワ、つよかった。──でも、セレスがバフおさえてなかったら、かてなかった」

「ああ。お前のおかげだ」

「えへへ。──ごほうびに、おやつ」

「戦闘が終わるたびに、おやつを要求するな」

「おなかがへるのに、タイミングは、かんけーない」



 ハルがレグルスのドロップアイテムをインベントリから取り出した。



「獅子のたてがみ……。これ、何に使えるんでしょう」

「武器の強化素材か、防具の素材か──ヴィアさんに聞いてみよう。ルミナリアの素材に詳しいかもしれない」




 森が静かになっていた。レグルスが消えたことで、周囲のモンスターの動きも穏やかになっている。ボスがいなくなれば、支配が解ける。野生に戻った白狼たちが、遠くでのんびりと歩いている。



 シロが、トワの横にぴたりと座った。尻尾を振っている。



「シロ、おまえもおなかへった?」



 シロが小さく鳴いた。

 セレスはじーっと目を細くした。



「シロにはあげない。セレスのおやつは、セレスの」

「……分けてやれ」

「やだ」

「セレス」

「むー……じゃあ、ちょっとだけ」



 手のひらサイズの妖精が、自分の数倍くらいある白狼にクッキーを一欠片だけ渡している。シロが器用に舌で受け取った。



「ちょっとだけだからね。つぎは、じぶんでさがして」



 この場にいる全員が、セレスと狼に微笑んでいた。




    ◇




 月光のオアシスに戻ると、ヴィアが待っていた。



「おかえり。──レグルスを倒したのか、大したものだ」

「知っているのか」

「森の気配が変わった。──獣の王がいなくなれば、森全体が変わる。静かになっただろう」

「ああ」

「レグルスは、昔はもっと穏やかだった。カレンの管理システムが『侵入者を排除しろ』と命令してから、凶暴化した。──お前が倒したことで、本来の姿に戻れたかもしれないな」



 ドロップアイテムの獅子のたてがみを見せると、ヴィアの目が光った。



「これは……聖光獣の素材。昔のルミナリアの鍛冶師が、最上級の防具を作るのに使っていた。──お前の仲間の薬師なら、これで光耐性の高い装備薬を調合できるかもしれないぞ」



 タマキが目を輝かせた。



「ヴィアさん、レシピを教えてもらえますか!?」

「はは。──友好度が足りないな。もう少し通ってくれ」




【老旅人ヴィアの友好度:3/10】




 あと七段階。まだまだ先は長い。




 後日。ルミナリアの探索が進む中、フォーラムにはこのエリアの攻略情報を求めるプレイヤーたちの投稿が増えていた。




【攻略】聖光の森のモンスター対策まとめ【随時更新】




 ──「光蠍:夜属性の消耗品がまだ見つかってないから、パーティの火力でゴリ押しするしかない。回復が毎秒あるから、DPS12,000以上を維持できないと、無限に終わらない」

 ──「陽炎の巨人:本体が影にあるらしいが、ルミナリアに影がないので見えない。トワは精霊の力で夜を作って対処してるが、一般プレイヤーは無理。運営さん、夜属性のアイテムお願いします」

 ──「白狼の群れ:三体一組で連携してくる。ただし食べ物を見せるとたまに敵対が解ける個体がいるらしい。要検証」

 ──「↑マジか、俺も試してみる」

 ──「聖光の森の奥にボスがいたが、トワが倒したらしく消えている。もう湧かないのか?」

 ──「フィールドボスだから、一定時間で復活するだろ。復活したら、攻略PTで挑みたい」




 別のスレッド。




 【考察】ルミナリアのNPCの「記憶封印」について



 ──「聖都の住人に話しかけ続けると、定型文じゃない反応が返ってくることがある」

 ──「マジで? 俺は百回話しかけたが、全部『こんにちは、良い天気ですね』だったぞ」

 ──「アイテムを渡すと反応が変わるらしい。トワが果物を渡したら、友好度が上がったって情報がある」

 ──「友好度って、NPCの住民にもあるのか……さすがBCO、どこまで作り込んでるんだ」

 ──「でも、記憶封印を解く方法はまだ不明。陽光のポーションでは一瞬しか効かないらしい」

 ──「トワなら何か見つけるだろ。あいつはいつもそうだ」


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