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ブレイブ・クロニクル・オンライン ~全員が捨てた初期職を7000時間やり込んだら、Lv1で最強になっていた~  作者: ぶらっくそーど


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隠しイベント発生

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書き溜めがかなりあるので、しばらく毎日更新が続きます。


 銀月の草原を歩き続けて、五日が経った。



 マップの灰色はほぼ消えた。残っているのは、草原の最深部──二つの月が最も大きく見える丘の上だけだ。



 銀月の鹿との友好度は27/100。会うたびに撫でて、たまに草をあげている。急ぐ必要はない。いつか友好度は上がる。



 トワは丘を登った。


 頂上に立つと、草原が一望できた。銀色の草の海。遠くに湖の輝き。花園の青い光。そして、何人かのプレイヤーたちの小さなシルエット。



 五日前には自分しかいなかったこの場所に、人が増えた。回廊を攻略するパーティが増え、草原に到達するプレイヤーも日に日に多くなっている。



 ──これでいい。



 自分が最初に歩いた。最初に地図を塗った。それで十分だ。後から来る人たちが、この景色を見て同じように感動してくれるなら、それは悪いことではない。



 丘の頂上にシステムメッセージが浮かんだ。



 【銀月の草原 踏破率:100%達成】

 【称号「銀月の旅人」を獲得しました】



 踏破率100%。このエリアの全てを歩いた。

 同時に、もう一つの表示が出た。




 【旅人スキル【踏破者の刻印】が更新されました】

 【現在の全エリア踏破率:87.2% ── 全ステータス倍率:×1.24】




 スキル名:【踏破者の刻印】

 公式説明文:(なし)

 解放条件:エリア踏破率が一定値を超えると自動解放。

 真の効果:全エリアの踏破率に応じて、全ステータスに倍率補正がかかる。




 新エリアが追加されるたびに、全体の踏破率は下がる。銀月の草原を100%にしても、終夜の回廊やグラオザーム戦以降に追加された他のエリアがまだ残っているため、全体では87.2%。



 だが、この倍率は全ステータスにかかる。ATK8,972に×1.24がかかると──




 ATK:11,125




 一万を超えた。



 Lv90の剣士の平均ATKが約7,500。それを五割以上上回っている。



 ──冬夜は数字を確認して、ステータス画面を閉じた。強さは目的ではない。ただ、全ての場所を歩いた証がこの数字に表れている。



 丘を下りて、草原の入口に向かった。次の目的地を決めなければならない。



 マップを開く。BCOの全体地図。既知のエリアは色がついており、未知のエリアは灰色のままだ。



 灰色の領域はまだある。銀月の草原の崖下に見えた「霧底の森」。その他にも、遠方の大陸や島嶼部がまだ未踏だ。



 だが、今すぐ行ける場所は限られている。霧底の森は崖下にあるが、降りるルートが見つかっていない。



 ──一度、始まりの町に戻るか。



 始まりの町・リベルタ。全プレイヤーが最初にスポーンする場所。トワにとっては旅の原点だ。



 二年間、定期的に戻っている。消耗品の補充、装備の修理、そして──町のNPCたちに会うために。

 転送水晶を使った。



 【始まりの町・リベルタに転送します】




    ◇




 リベルタは、のどかな町だった。


 石造りの家並み。中央の噴水広場。NPCの商人たちが露店を並べ、初心者プレイヤーたちが右も左もわからないまま走り回っている。



 広場の奥――町の最も高い場所には、白い神殿がある。他の建物とは明らかに異質な、純白の石造り。扉は閉ざされていて、中に入ることはできない。NPCに聞いても「昔からあるよ」としか言わない。始まりの町で唯一、用途不明の建造物だ。




 Lv1の旅人……初期装備のプレイヤーが、この町には大量にいる。全員が、これから転職クエストを受けて旅人を卒業していく者たちだ。


 トワもまた、Lv1の旅人だ。見た目だけなら、彼らと何も変わらない。


 だが、NPCの反応は違った。


「おや、トワじゃないか! 久しぶりだな!」


 武器屋の親父が手を振る。


「トワさん、お帰りなさい! 今日はポーションの在庫ありますよ!」


 道具屋の少女が笑顔で声をかける。


「……トワか。また来たのか。まあ、座っていけ」


 酒場のマスターが、カウンターの席を一つ空けた。


 NPCとの友好度。BCOのNPCは友好度システムを持っていて、繰り返し交流すると反応が変わる。高ランクの友好度を持つNPCからは、特殊な情報やアイテムが得られることがある。


 トワの場合、始まりの町のNPC全員との友好度がMAXだ。二年間、町に戻るたびに全員に話しかけ、クエストをこなし、アイテムを買い続けた結果だ。


 道具屋で【駆け出しの霊薬】を百本、【旅人の広域煙幕】を二十個買い込む。合計で1,500ゴールド。安い。最前線のプレイヤーが一回のレイドで消費するバフ薬の十分の一以下の価格だ。


 補充を終え、町の裏路地に向かった。



 リベルタの裏路地。メインストリートから外れた、日当たりの悪い細い道。初心者が迷い込むことはあるが、何もないのですぐに引き返す。



 だが、トワの目には違うものが見えていた。


 路地の奥に、古びた扉がある。


 この扉は──旅人にしか見えない。


 他の職業のプレイヤーが歩いても、ただの壁にしか映らない。旅人の石碑と同じ仕組みだ。


 トワはこの扉の存在に、一年前に気づいていた。だが、当時は開かなかった。何度調べても「条件を満たしていません」というメッセージが出るだけだった。



 今日、もう一度試す。

 扉に手を触れた。




 【条件判定中……】

 【旅人レベル:Lv1 ── OK】

 【累計プレイ時間:7,248時間 ── OK】

 【全エリア踏破率:87.2% ── OK(閾値:85%)】

 【旅人NPC友好度・最大到達数:47/47 ── OK】

 【──すべての条件を満たしました】




 扉が、開いた。



 冬夜の目が見開かれた。一年間、開かなかった扉が──。



 踏破率の閾値が85%だった。銀月の草原を100%にしたことで、全体の踏破率が87.2%になり、ようやく条件を超えたのだ。


 扉の先は、小さな部屋だった。暖炉と、古い椅子と、壁一面の地図。



 椅子に、一人の老人が座っていた。



 フードを被り、杖を持っている。銀月の草原の祠にいた老人に似ているが──別人だ。もっと年老いていて、目だけが光っている。



「──来たか」



 老人がゆっくりと立ち上がった。



「待っていたぞ、旅人。長い旅だったろう」



 ネームプレートが表示されていない。通常のNPCには必ず名前が出る。これは──特殊なNPCだ。



「わしの名はグラン。かつて──この世界がまだ若かった頃に、最初に歩いた旅人だ」



 グランは壁の地図を示した。BCOの全体地図だ。だが、通常のマップとは違う箇所がある。地図の端──世界の外縁部に、通常のマップには存在しない場所が描かれていた。



「お前さんに渡すものがある」



 グランが手を差し出した。その手の上に、淡い光を放つコンパスが浮かんでいた。




 【旅人の羅針盤を入手しました】




 アイテム名:【旅人の羅針盤】

 種別:旅人専用アクセサリ。

 公式説明文:旅人の足を、まだ見ぬ道へ導く。

 効果:最も近い未踏エリアの方角を常に指し示す。隠しエリアにも反応する。




「その羅針盤は、まだ歩いていない道を指す。隠された場所も、閉ざされた場所も。お前さんの足が届く限り、羅針盤は導き続ける」


 トワはチャットではなく──初めて、ゲーム内でボイスチャットの入力を開いた。

 だが、何も言わなかった。すぐに閉じた。代わりにチャットを打つ。


「……ありがとう」

「礼はいらん。旅を続けろ」



 グランが壁の地図を指差した。地図の南方──銀月の草原の崖下。



「お前さんが探しているものは、そこにある。霧の底に、旅人だけが見つけられる道がある。──羅針盤が、示すだろう」



 トワは羅針盤を装備した。針が動き始める。


 南──銀月の草原の崖下を、真っ直ぐに指している。


 霧底の森。


 あの崖から見えた、霧に覆われた森。通常のルートでは進入不可と表示されたあの場所に、旅人だけが見つけられる道がある。


 グランの部屋を出た。裏路地に戻ると、扉は再び壁に溶け込んで消えた。


 メッセージボックスを開く。オーレンに一通だけ送った。




 トワ:「新しい地図が増えた」



 返信。




 オーレン:「お前まだ増やすのか」

 トワ:「まだ歩いていない場所がある」

 オーレン:「……行ってこい。お前の旅だ」




 トワは始まりの町を出て、銀月の草原への転送水晶を起動した。

 羅針盤の針が揺れている。南を指して、まだ見ぬ道へ導いている。

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