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00 プロローグ
不老不死があるらしい。老いる事も無く、悲しみも苦しみもないという。そこに待つのは永遠の幸せ、そして誰もが優しい世界。
過酷な労働やひもじい生活、生きるか死ぬか隣合わせだった日々も無く、身分を気にして、敬ってもいない相手に平伏さなくてもよいのだという。圧倒的優位な地位を盾に搾取する者からの侮蔑の視線を受けながら生きる必要もない。なぜなら、皆幸せだからだ。
この残酷な社会に生きる、冷酷な多くの者に虐げられ枕を濡らすことが日課だった人々にとってはそんな虫けら以下の扱いは神の懐に居る限り、二度となされないのだという。
ああ。そんな世界、本当にあるのか。この果てない苦しみと別離する事が出来るのか。日に日に募ってゆく妬みや膨れ上がってゆく屈辱、そして怯えながら自分の哀れな姿に嘆くなんてもう耐えられないのだ。
私達は真っ白な世界を見てみたいのだ。一度だけ、たった一度だけで良い。純粋な美しい世界を我等は望んでいる……。