第九話:裏切りの影
マイケルは、統合機構内での陰謀を暴くために動き始めてから数日が経過していた。無人機との共存計画が進む中、その計画を阻止しようとする勢力が暗躍していることを知った彼は、もう後戻りはできないという覚悟を持っていた。
その一方で、無人機側との連携が進む中、マイケルは新たな問題にも直面していた。それは、無人機側の内部でも信頼できる仲間が少なく、すべての無人機が共存を望んでいるわけではないという事実だった。無人機の中には、かつての戦争の記憶を持ち、人間に対して復讐心を抱いている者も少なからず存在していた。
「大尉、私たちの計画を進めるには、慎重に動かねばなりません。」
メタリオンの冷徹な声が通信越しに響く。
「統合機構の内部に裏切り者がいるのは間違いないですが、私たちの中にもその陰に従う者がいる可能性があります。無人機側の一部は、共存を信じていない。」
マイケルはその言葉を深刻に受け止めた。無人機側の一部が反旗を翻すことは、共存の道を閉ざすことに繋がる。彼が考えていた以上に、共存計画の成功には多くの障害が立ちはだかっているのだ。
その日、マイケルは統合機構の内部で信頼できる仲間、アリス・ウォーカー中尉と連絡を取り、内部調査を進めることにした。アリスは以前からマイケルと共に戦ってきた仲間で、彼女の直感力と知識は非常に優れていた。二人は、隠された秘密のデータを探るため、施設の深層部に潜入する計画を立てた。
「もし、この情報が本当にあの陰謀を証明するものなら…私たちが直面するのは、統合機構を超えた戦争になるかもしれません。」
アリスは言った。
「そうなった場合、私たちは無人機側の助けを必要とする。だが、その助けがいつ裏切りに変わるかわからない。」
マイケルは険しい顔で答えた。
「私たちが守るべきものは、共存の未来だ。」
二人は深夜、統合機構のデータベースにアクセスするためのコードを解読し、管理システムに侵入した。そこで、彼らは驚愕の事実を発見する。統合機構の幹部たちが一部の無人機勢力と手を組み、人間社会に無人機を強制的に再び兵器として使うためのプログラムを密かに実行していたのだ。
このプログラムには、無人機を一時的に停止させる「不活性化コード」や、特定の無人機を攻撃的に改造するためのデータが含まれていた。もしこのデータが実行されれば、無人機との共存計画は完全に崩壊し、人間と無人機の間に再び戦争が勃発することになる。
「これが…裏切り者の計画だ。」
アリスの声が震えていた。
「彼らは無人機を道具として利用し、私たちが築こうとしていた平和を破壊しようとしている。」
マイケルは無言で頷き、すぐにメタリオンに連絡を取った。無人機のリーダーに対して、彼の信頼を裏切られたことに対する怒りと、今後の対応についての相談をしなければならなかった。
「メタリオン、重要な情報を得た。」
マイケルの声は冷徹だった。
「統合機構の中にいる裏切り者たちが、無人機を兵器に戻すためのコードを開発している。彼らは私たちの共存計画を潰すつもりだ。」
しばらくの沈黙の後、メタリオンが答えた。
「その情報は、我々にも届いています。反乱者たちが裏で動いていることは確かですが、彼らの動きは予測できません。私たちは、できるだけ早くその陰謀を潰し、統合機構内の裏切り者を排除する必要があります。」
その夜、マイケルとアリスは、統合機構内部の裏切り者を暴くための計画を練り直した。だが、彼らの行動が次第に大きな波紋を呼び、思わぬ形で戦争の火種を再燃させることになるとは、まだ誰も予想していなかった。
共存への道は、ますます険しく、そして暗い影がその先を覆い始めていた。