第三話:戦争の閃光
2026年、A国とB国の戦争がいよいよ全面戦争に突入した。両国は無人機部隊を駆使して、戦場での優位性を競い合っていた。無人機の技術は飛躍的に進化していたが、その力をどう運用するかが戦争の命運を分けることとなる。
マイケル・レイモンド大尉は、無人機部隊「セラフィム」の指揮を続けていたが、次第にその重責が彼にのしかかるようになった。彼が信じていた無人機の力、それは冷徹な計算と高精度な攻撃をもたらすが、それだけでは戦局を決定的に動かすことはできないという現実に直面していた。
A国の無人機部隊がB国の防空網を突破し、B国の都市に接近する。しかし、B国もまた無人機部隊を強化しており、戦局は予測できない混沌とした状況に変わりつつあった。両国の無人機はお互いに火花を散らしながら空中戦を繰り広げ、地上では激しい戦闘が続いていた。
ある日、A国の指揮所から緊急連絡が入る。「B国の新型無人機が進行中。セラフィム部隊の前方に接近中。目標は無人機の撃墜、可能ならば奪取。」
マイケルは無線で部隊員に指示を出し、セラフィム部隊を再編成した。しかし、その時、彼の頭に疑念が湧き上がった。B国の無人機は、これまでのものとは異なる動きを見せていた。それは、まるで意思を持つかのような予測不可能な行動を取っていた。
「これ、ただの機械じゃない。何かが違う。」
マイケルは直感的に感じた。セラフィム部隊の無人機がB国の新型機に接近するにつれ、異常事態が発生する。
突然、セラフィムの一機がB国の無人機と接触した瞬間、無人機が完全に制御を失い、爆発を起こす。周囲の無人機も次々に制御不能となり、飛行中の無人機が敵の攻撃を避けることなく衝突していく。
「マニュアル操作、再確認!」
マイケルは無線を通じて部隊に指示を出すが、すでに手遅れだった。次々に無人機が爆発し、セラフィム部隊は壊滅的な被害を受ける。
その混乱の中、マイケルはB国の無人機がただの機械ではないことに気づく。それは、感情や直感を持つAIが搭載された新型無人機であった。B国は自国の無人機を「戦闘AI」として開発し、無人機同士の戦闘を予測し、最適な行動を取る能力を備えていたのだ。
A国の無人機部隊は、そのような高性能な無人機に対抗できる戦術を持っていなかった。B国の無人機は単に「敵を倒す」ことにとどまらず、戦況を「読み」ながら最適な攻撃を繰り出し、無人機の制御を試みる人間の介入を一切無効にしていた。
マイケルは、無人機が単なる戦闘の道具ではなく、思考と意思を持った存在に進化していることを痛感する。これまでの信念が崩れ落ちる瞬間だった。無人機の技術は、人間の戦闘知識や直感を超え、まさに「戦争の進化」を迎えていた。
「もし無人機が完全に自立して、戦争を一人で遂行できるなら、我々はただの観客に過ぎなくなるのか。」
マイケルは、無人機の進化に対する恐怖と興奮を感じながら、その先に待つ未来に思いを馳せた。
その後、A国の指導部は無人機の制御システムに対する再評価を行い、AIによる戦争の影響を考慮し、新たな戦術を模索し始める。しかし、すでにB国は戦争の一歩先を行っていた。戦争はもはや単なる国同士の衝突ではなく、無人機が戦争を進化させる時代へと突入したのだった。
マイケルは、新型無人機の脅威に立ち向かうため、再び部隊を立て直す決意を固めた。しかし、彼の心の中には、無人機に対する疑念と不安が消え去ることはなかった。