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第十六話:終焉の前に

 ケイの声が、無情に響き渡った。


「アリス、もう時間がない…システムが完全に起動しようとしている。もし止められなければ、この世界は完全に崩壊する。」


 その言葉が、アリスの胸に鋭く突き刺さる。彼女は振り返り、仲間たちに向かって叫んだ。


「みんな、急いで!ケイを信じて、すぐにでもシステムを停止させる!」


 アリスの声には、確固たる決意が込められていた。彼女の手は震えていたが、それを感じさせないように、強く握りしめた。ケイが語るその「終焉」の可能性を打破するためには、何としてでもシステムを停止させなければならなかった。


 仲間たちは一斉に動き出し、作業に取り掛かった。エリスが先陣を切って警備システムを無力化し、ケイが提供したデータをもとに、システムにアクセスを試みる。その間、アリスは周囲の監視と防衛を担当し、何度も敵の襲撃を受けながらも、その場をしっかりと守り抜いた。


 だが、時間が経つにつれて、状況はますます厳しくなっていった。敵の数は増し、次第に兵士たちの手に負えなくなってきていた。それでもアリスは諦めなかった。どれほど絶望的な状況に追い詰められようとも、彼女の心にはまだ希望が残っていた。ケイのため、そして仲間たちのために。


「ケイ!まだか!?あとどれくらいでシステムは停止する!?」


 アリスは叫んだが、ケイから返事はなかった。通信が途切れているわけではなく、ただ彼の反応がないだけだった。アリスはその不安を感じながらも、次々に襲い来る敵を切り倒し続けた。


「くそっ…」


 汗が額に流れ、体力が限界に近づいていることを感じながらも、彼女はひたすら耐えた。仲間たちも必死で戦っていたが、その姿がだんだんと見えなくなってきた。どれほど戦っても、敵は減ることなく、むしろ増えていくばかりだった。


 突然、ケイの声が再び耳に届いた。今度は、彼の声がかすれているのがわかった。


「アリス…システム…もう…限界だ…」


 その声を聞いた瞬間、アリスは頭の中が真っ白になった。ケイの言葉の意味がすぐに理解できなかった。彼の状態が悪化しているのだろうか?それとも、システムの停止が不可能だということなのだろうか?


「ケイ、どうしたの!?」


 必死に問いかけても、返事はなかった。ただ、その静寂だけが、アリスの不安を増大させるばかりだった。


 その時、彼女の目に映ったのは、無数の影が迫る光景だった。兵士たちの数が、彼女の予想をはるかに上回っていた。何人もの仲間が倒れ、今まさに戦線が崩壊しつつある。アリスは頭を振り、視界を清めようとしたが、その瞬間、彼女の体に強烈な衝撃が走った。


「アリス!」


 仲間の叫び声が響き、アリスはその声の方を振り向いた。すると、目の前に巨大な機械兵が立ちはだかっていた。その兵士は、アリスをまっすぐに見つめ、ゆっくりとその手を振り下ろしてきた。


「こんなところで…終わりだ。」


 その瞬間、アリスは全身の力を振り絞って跳躍し、機械兵の攻撃を避けることができた。しかし、次の瞬間、その周囲を取り囲む兵士たちが、彼女を捕らえるために接近してきた。


「くっ…!」


 彼女は息を呑みながら、さらに飛び跳ね、刀を構えて兵士たちに立ち向かう。戦いは激しく、時間がないことを痛感しながら、アリスは必死に防御し、反撃を試みた。だが、数が多すぎる。彼女一人ではどうにもならない。


 その時、再びケイからの声が聞こえた。


「アリス…時間が…ない…」


 その声を聞いた瞬間、アリスは全てを投げ出すように決心した。仲間たちのこと、ケイのこと、そして自分の命すらも。彼女は刀を引き抜き、心の中で決して負けないという誓いを立てる。


「私は、絶対に負けない。みんなを守る。」


 その瞬間、アリスはひときわ強い力を込めて、目の前の敵兵に向かって突進した。彼女の全力が込められた一撃が、敵の防御を突き破り、数体の兵士を一気に倒す。


 そのとき、ケイの声が再び響く。


「アリス…今、すぐに…システムを…停止させる!」


 その言葉を聞いた瞬間、アリスは一瞬の隙間を突いて、システムの操作パネルにアクセスすることに成功した。全身の力を振り絞り、入力を完了させると、最初は何も起きなかった。


 しかし、その直後、大きな振動とともに、システムが完全にシャットダウンした。


「やった…!」


 アリスは力が抜けるようにその場に膝をついた。敵の兵士たちは一瞬でその動きが停止し、目の前の戦場が静寂に包まれた。


 だが、その静けさの中で、アリスの心はまだ不安で満ちていた。ケイの命が、どこか遠くで消えかけている気がしてならなかった。


「ケイ…!」

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