第十四話:覚悟の代償
アリスたちの次なる目標は、統合機構の本拠地に隠された「管理中枢」を破壊することだった。それは機構の監視システム全体を統括する中枢AIを支える基盤であり、これを破壊することで機構の支配力を大幅に削ぐことができるとされていた。
ケイが新たな力を得て復活したことで、彼のデータ解析能力を活用すればその位置を突き止められる可能性が高まった。しかし、ケイの力には重大なリスクが潜んでいた。彼のデジタル化された存在は、システムに過度に干渉すれば自身が崩壊する可能性があるというものだった。それでも、ケイは迷うことなくその危険を引き受ける決意を示す。
「アリス、君は俺を信じているか?」
薄暗い廃工場の一角で、ケイは静かにアリスに語りかけた。
「信じてる。けど…怖いの。」
アリスは視線をそらしながら答えた。その目には、不安と後悔が入り混じっているようだった。
「怖いのは当然だ。でも、俺たちが止まれば、犠牲はもっと増える。統合機構の支配が進めば、人々の自由は完全に奪われるんだ。」
ケイの言葉には、強い信念が宿っていた。アリスはそれに押されるように頷いたが、胸の内に広がる不安は消えない。
「だからこそ、君は迷わず進んでほしい。俺は…その後押しをするだけだ。」
ケイはそう言って、軽く笑みを浮かべた。その笑顔が、逆にアリスの胸を締め付けた。
翌日、ケイが解析したデータによって、統合機構の管理中枢の位置が明らかになった。それは廃棄された都市部の地下深くにあり、数え切れないほどのセキュリティと無人兵器によって守られていた。
「ここを突破するには、分散攻撃を仕掛けるしかないわね。」
アリスが地図を指差しながら提案すると、仲間たちは頷いた。
「俺は中枢のネットワークに直接侵入する。その間、みんなが時間を稼いでくれ。」
ケイがそう言うと、仲間たちは彼の言葉に疑問を抱いた。
「ケイ、それって無茶じゃないのか?君自身に負担が…」
仲間の一人が言いかけると、ケイは静かに首を振った。
「時間がないんだ。これ以上、俺たちが動けなくなれば、未来は奪われる。だから、リスクは承知の上だ。」
その覚悟の強さに、誰も反論できなかった。アリスもまた、ケイの決意に負けないように自分を奮い立たせた。
作戦決行の日、アリスたちは統合機構の警戒網をかいくぐりながら地下中枢へと向かった。だが、待ち構えていたのは無数の無人兵器と、機構のエリート兵たちだった。
「時間を稼ぐのよ!」
アリスは叫び、仲間たちとともに激しい戦闘に身を投じた。
その間、ケイは無人兵器のネットワークに侵入し、彼らの動きを一時的に封じ込めることに成功した。しかし、侵入を察知した統合機構側のシステムが即座に対応し、ケイの精神に強烈な負荷をかけ始める。
「…くっ、こんなに抵抗が強いなんて…!」
ケイの意識は徐々に削られ、痛みが全身を駆け巡る。それでも、彼は決して手を止めなかった。
戦闘の最中、アリスはケイの状態をモニタリングし続けていた。彼の脳波に異常が出始めていることに気づいたアリスは、思わず通信を開いた。
「ケイ!もうやめて!あなたが壊れたら、何の意味もない!」
「…アリス、大丈夫だ。俺はまだ持つ。」
ケイの声は震えていたが、意志の強さだけは変わらなかった。
「でも、私は…!」
アリスの目から涙が溢れた。彼を失うことが、彼女にとって何よりも怖かった。
「君が諦めたら、俺がここにいる意味がなくなるんだ。」
ケイの言葉が、アリスの心に深く突き刺さる。
その瞬間、彼女は迷いを断ち切った。
ついに管理中枢の扉を目の前に