第13話 練習
まだ薄暗い時間。
俺とレインは宿屋で朝食を用意してもらい、それを部屋に持ち込んで食べていた。
ここまで早い時間だと、普通は宿屋では朝食の準備はされない。
だが、昨夜のうちに話をしておき、特別に用意してもらった。
夜のうちに作れる物だが。
ホットドッグのように細長いパンに具材を挟んだ物を、もりもりといただく。
スープは冷めているが、まあ贅沢は言うまい。
この世界のパンは、現代で食べていた物と結構似ている。
きちんと発酵させているので、ふっくらとしているのだ。
ただ、若干の独特の香りがある。
これは、エール酒というビールのような酒の製造過程でできる、澱を利用しているかららしい。
食堂や宿屋によっては無発酵の固いパンだったりするのだが、俺はどっちでもいいか、と思っている。
というのも、小麦を粉にする段階で殻などが混ざるので、雑味はどちらにもあるのだ。
発酵、無発酵よりも、そうした雑味の無いパンが食べたいというのが、一番の願いである。
まあ、今のところはそんな物、見たこともないのだけれど。
普通に街のパン屋にあるのは、そうした雑味のある黒パン。
殻をしっかり取り除いた白パンは、パン屋ですら並んでいるのを見たことがない、幻の存在だった。
そうして、用意してもらった朝食を平らげ、荷物の最終点検。
一つひとつを装備しつつ、具合を確認する。
部屋の中に忘れ物が無いかも確認し、俺たちは宿屋を出た。
東の空は白んできたが、まだ太陽は見えなかった。
鉱山の管理事務所に行くと、すでに建物の前に三人の姿があった。
一人はバルアーゾ。
今回の仕事の隊長で、彼の仕切りで魔物討伐に挑むことになる。
こうした寄せ集めの傭兵は、個人であったり傭兵団を結成していたりと、様々だ。
今回の仕事で集められた者たちも、分類としては傭兵団とも言えるが、こういう場合は『隊』とすることが多い。
理由は簡単で、傭兵団と言うと、自分たちで結成している団のことなのか、仕事で集めた臨時の団のことか区別がつかないからだ。
そのため、傭兵団というのは自分たちで結成したものを差し、仕事で臨時に結成するものは隊と呼称した。
バルアーゾの他には、二人の男。
こちらもどうやら傭兵団を結成しているようで、距離が近い。
もし個人個人で活動しているような者たちなら、離れているはずだ。
だが、この二人は並んで立っていた。
この距離感で待っていたということは、それなりに信頼のおける顔見知りか、本当にお仲間か。
そのどちらかだろう。
その証拠に、バルアーゾとこの二人は距離を空けて立っている。
「来たな。」
バルアーゾが俺たちの方に来ると、金属製の小さな卵のような物を渡してきた。
レインはそれを受け取ると、手のひらの金属卵を興味深げに見ている。
金属卵の上部に付いた長いチェーンを持って、眉を寄せて観察していた。
「金属卵は腰布に落ちないようにつけておくか、ポケットに入れておいてもいいぞ。ただし、絶対に無くすなよ。ペナルティがあるからな。」
「これは、…………何?」
俺がレインに金属卵の説明しようとすると、バルアーゾが号令をかけた。
「それじゃあ、揃ったようだし出発する。」
そうして、バルアーゾが町の奥に向かって歩き出した。
先に来ていた二人も、それに続く。
「他の二人は? 先に行っているのか?」
「ああ。数日前から調査と露払いに出してる。」
どうやら、すでに活動を開始している人がいるらしい。
その人たちは採鉱場の中までは入らず、道中で見かけた魔物を狩ったりしているという。
俺は頷いて、レインにも「付いて行くぞ」と視線を送る。
金属卵の説明は、道中でしていくことにした。
金属卵。
正式名称は、“魔力回収の魔法具”とか言った…………かな?
魔物や魔獣の討伐で、よく貸与される魔法具だ。
鶉の卵のようなサイズの魔法具で、倒した魔物を自動でカウントしてくれる物だ。
何でも魔物や魔獣には魔力があり、倒すとその魔物たちの魔力は自然へと還る。
だが、この金属卵を持っていると、その本来自然に還るはずだった魔力を回収することができるそうだ。
魔物や魔獣の魔力には固有のパターンがあり、これにより種族を特定できる。
また同じ種族でも一体一体違うらしく、頭数までばっちり分かるらしい。
要は、指紋や虹彩のように、個を識別できるという訳だ。
トドメを刺した者の金属卵に回収されるという仕様なので、誰が倒したか、という問題はこれで解決する。
とはいえ、たまにトラブることがある。
近いタイミングで攻撃した二人により、どっちが倒したかで揉めるのだ。
弱点に致命的な一撃を入れても、その瞬間に絶命するとは限らない。
そのため、稀に実感と差が出る結果となる場合があるのだ。
金属卵が、何をもって「トドメを刺した」と、判定するのか分からないからだ。
こうしたトラブルが無い訳ではないのだが、それでも十分に優秀な魔法具だ。
材料に魔物や魔獣が持っている体内器官、『魔石』を使用しているらしく、結構なお値段がする。
なので、あくまで貸与。
無くすと怒られるでは済まない。
ただ、これは隊長の口添えでペナルティを免れることもある。
どうしようもない状況というのがあるからだ。
命からがら逃げている最中に落としたとして、いくら責められようが、さすがに取りに戻るようなことはできない。
ペナルティは、あくまで杜撰な管理で紛失することを防ぐためのもので、罰することが目的ではない。
歩きながら、そうしたことをレインに説明する。
今歩いているのは、採鉱場から敷かれているレールの横だ。
採掘した鉱石を町に運ぶトロッコがあり、その横は多少歩きやすいように整備がされていた。
左側がかなり急な上り斜面で、右側が下り斜面。
レールはその斜面と斜面の間に敷かれている。
「お前たちは、フレイムロープと戦ったことはあるか?」
先頭を歩くバルアーゾが聞いてくる。
俺は首を振ると、逆にバルアーゾに聞き返す。
「いや、俺たちはない。あんたは?」
「俺はここ何週間かで戦ってる。じゃあ、少し練習しておくか。」
先に来ていた二人にはすでに聞いていたらしく、ここにいる五人ではバルアーゾ以外の四人がフレイムロープとの戦闘経験がないらしい。
レインが『練習』というキーワードを聞き、少しほっとした顔になった。
だが、俺はその安心を一撃で粉砕する。
「あからさまにほっとしてんじゃないよ。練習ってのは、採鉱場に入る前に何体か倒すのを任せるってことだぞ?」
「…………任せ、る?」
レインがどんな『練習』を想像していたのか知らないが、厳密には練習でも何でもない。
実地研修やOJTのようなものだ。
『実際に戦って慣れろ。』
その、慣れる機会を先に用意してくれる。
これが、魔物や魔獣の討伐などでよく行われる『練習』の正体だ。
練習の中身がただの実戦でしかないと知り、レインが青くなった。
だが、この場には俺だけでなく、他の傭兵たちもいる。
レインは大騒ぎする訳にもいかず、半泣きみたいな表情で、ひそひそと俺に相談してきた。
「どうしよう……ねえ、どうすればいい?」
間近に迫った魔物との戦闘に、レインが動揺を隠せない。
いくら声を潜めようと、周りの連中にはレインの動揺が丸分かりだろう。
ただ、それでも何か言ってきたりするような輩はいなかったようだ。
明らかな素人につらく当たるタイプの人もいるが、今回は割と寛容な人が多いみたいだ。
もっとも、それで助けてもらえるかと言えば、話は別だ。
むしろ、彼らは寛容というよりは無関心と言った方が、より正確だろう。
素人が一人紛れ込んでいても、そいつが死のうが生きようがどうでもいい。
自分が生き残り、依頼を達成する。
それ以外に関心がないのだ。
そういう意味では、つらく当たるのも別に意地悪でそうしている訳ではない。
いや、中には単に意地の悪いのもいるが。
だが、ほとんどの場合、みんなが必死なのだ。
生き残るために。
素人が一人紛れれば、一人分の戦力がダウンしたことになる。
それどころか、マイナスになると言ってもいい。
それは即ち、自分の生存確率がいくらかは低下したと考えることもできる。
だから怒る。
その素人の代わりに、いくらかでもマシな奴が入っていれば、足を引っ張られないで済むからだ。
俺には他の連中の考えも分かるので、動揺するレインを甘やかすことはしない。
「どうするもこうするも、嫌なら帰れ。足手まといが減って、みんなも喜ぶぞ。」
魔物討伐の依頼を選んだのは自分ではないか。
俺が睨むように冷たく言い放つと、レインは息を詰まらせた。
そうして、気まずい空気のまま鉱山を登っていく。
まあ、気まずいのはレイン一人だけだろうけど。
正直に言えば、俺はレインのことを然程気にかけていなかった。
なぜなら、すでにここは魔物の領域だからだ。
俺だけじゃない。
レイン以外の全員が、最大限に全周警戒して進んでいるのだ。
「待て。」
鋭い、だが大きくはない声で、バルアーゾが指示を出す。
その声に、全員が立ち止まる。
バルアーゾが少し先の、左上の斜面を指さす。
岩の陰から、何か長細い物が見えた。
フレイムロープだ。
それは、ぱっと見は木の枝か蛇に見えるだろう。
しかし、長い。
姿を見せている部分だけで二メートルはありそうだ。
見えない岩陰に本体が隠れているとしたら、全長は一体どれほどになるのか。
「……最低でも、十メートルはあるって話だったか?」
俺がそう呟くと、バルアーゾが頷く。
「絶対に十メートル以下がいないとは言わんが、比較的小さい個体でもそれくらいはある。」
バルアーゾが、先に来ていた二人に視線を送った。
そのうちの一人が地面の石を拾う。
どうやら、その男は投擲が得意なようだ。
「狭い隙間から出てくるぞ。刺激することで他の個体が出て来ないとも限らない。警戒しておいてくれ。」
「分かった。」
左側の上り斜面も、右側の下り斜面も、岩や砂利がごろごろしている。
フレイムロープが潜む場所なら、いくらでもありそうだ。
男が拾った石を投げると、姿を見せていたフレイムロープが躱した。
そうして石の飛んで来た方向、つまりはこちらを見るようにうねうねと動き出した。
「俺からでいいか?」
俺はバルアーゾに確認する。
フレイムロープの攻撃方法や弱点は、領都の傭兵ギルドで聞いていた。
あとは、実際に戦ってみて実感を掴んでおきたかった。
「ああ、気をつけろよ。」
バルアーゾの許可を貰い、俺はレインを見る。
「よく見ておけよ。次はレインだぞ。」
俺がそう言うと、レインは唇を引き結んで、重く頷いた。
俺は周囲を警戒しながら、腰に佩いた短剣を抜いてフレイムロープの方に歩き出した。
フレイムロープもやる気まんまんのようで、斜面の岩陰からずりずりと伸びる。
そうして十メートルほど伸びたところで、ぼとっと落ちてきた。
ざっと、二十メートルほどはありそうだ。
つまり、最初に姿を見せていたのは、ほんの先っぽだけだった、という訳だ。
呆れるくらいに長いな、こいつ。
フレイムロープは蛇のように塒を巻き、鎌首をもたげるように一端を上に伸ばす。
上に伸ばした部分は七メートルくらいか。
ゆらゆらを左右に揺れている。
(……聞いていた通りか。)
この状態が、フレイムロープの戦闘体勢。
全身に炎をまとい、持ち上げた一端で攻撃してきて、巻きつくのだ。
炎をまとっているからと言って、水や冷気が弱点という訳ではない。
水をぶっかけて炎を消しても、普通に巻きついてまた炎をまとうだけらしい。
「弱点を隠しているのも、情報通りだな。」
フレイムロープの弱点。
それは結び目だ。
実際に結び目かは知らないが、丁度中間に位置するあたりに結び目を持つ。
そこを切断するか、ぺちゃんこに潰してやれば倒せる。
それ以外の部分はどこを切ろうと、倒せないらしい。
単に短くなるってだけのようだ。
ちなみに、そうして短くなると、結び目の位置が移動するらしい。
ゆっくりと時間をかけて、中間あたりに。
もしも十メートル以下のフレイムロープがいたら、そいつは誰かに斬られた可能性が高い、という話だった。
魔物のくせに知能があるのか、はたまた本能によるものか、当然ながら弱点は隠されている。
戦闘体勢では、塒の中に結び目がある。
俺はフレイムロープに近づきながら、十メートル以上離れた位置で一旦足を止めた。
そうして、慎重に間合いまで距離を詰める。
間合いと言っても、俺のじゃない。
向こうの間合いだ。
呆れるほどの長さを持つフレイムロープは、当然ながら間合いも長い。
俺はじりじりと距離を詰め、フレイムロープの攻撃を誘う。
(…………九メートル……八……七.五……。)
距離を詰めながら、それでも足元は見えない。
常にフレイムロープの全身を視界に収めるようにする。
こうしている間も、神経を研ぎ澄ませて周囲に気を配る。
他にも潜んでいる可能性が常にあるからだ。
目の前の一体だけを考えていればいい、なんてことはあり得ない。
もっとも、今は『練習』なので、ある程度は後ろで見ている連中が警戒してくれている。
もしも上の方から別の個体が現れたりしたら、教えてくれるはずだ。
そうして間合いを詰めていき、俺との距離が七メートルになったところでフレイムロープが動き出した。
ビュウッ!
空気を割くような音とともに、ゆらゆら揺れていた部分が真っ直ぐに襲いかかってきた。
俺はそれをサイドステップで躱し、短剣で斬り飛ばす。
フレイムロープの先端、一メートル分くらいが地面に落ち、のたうち回る。
斬られた部分はもう炎はまとっていないが、触れれば火傷するくらいには熱い。
気をつけながら戦ってもいいが、俺はフレイムロープが引っ込むのに合わせ、短剣を使って右側の斜面に切れ端を落とした。
(まあ、聞いていた通りだな。)
情報の無い攻撃の可能性は捨てきれないが、分かっている範囲ではこれだけがフレイムロープの攻撃方法だ。
一メートル切れても、塒の中に仕舞っていた余裕分がある。
フレイムロープは再び鎌首をもたげ、高さも先程と変わらない七メートルくらいだった。
あとは同じことの繰り返しだ。
そうして数回斬り飛ばしてやることで、余裕分が無くなる。
結び目を境に一方が十メートル、もう一方が七メートル弱というアンバランスな状態になった。
そこで攻守が入れ替わる。
つまり、これまで塒巻いて部分が上になり、攻撃していた部分で塒を作ろうとした。
(させるかよっ!)
俺は塒が解かれた瞬間にダッシュして、フレイムロープに迫った。
これまでカウンター一辺倒だった俺の突然の動きに、慌てて攻撃して来るフレイムロープを適当に斬り飛ばす。
ザシュッ!
駆け抜けながら、丸見えになった結び目を両断した。
そのままフレイムロープと距離を空ける。
八メートルと七メートル、その他数本に分かれたフレイムロープが、地面をのたうち回った。
これに触れるだけでも火傷は必至。
俺は慎重に、のたうち回るフレイムロープを短剣を使って斜面に落とした。
俺の戦いを見ていたバルアーゾが、笑顔で労う。
「上等、上等。まったく危なげなかったな。」
「まあ、聞いていた通りだったし。一対一ならこんなもんだろ。…………ただ、囲まれては絶対に戦いたくないな。」
俺は、実際に戦ってみた感想を漏らした。
こちらの攻撃が届かない、迎撃一択。
三体にでも囲まれれば、精神的には相当に苦しい戦いを強いられる。
多少の負傷を覚悟で飛び込み、適当に斬って短くしておくなどは、状況として普通に起こりそうだった。
「採鉱場内での戦闘を考えると、十分な距離も取れるとは限らんからな。まあ、初めて戦ってそれだけやれれば十分だ。」
バルアーゾの評に、俺は黙って頷いた。
「思った以上にやるな。」
「これなら背中を預けても大丈夫そうだ。」
それまで、まったく話しかけて来なかった二人組が、俺に拳を突き出して声をかけてきた。
「どうも。」
俺は二人に軽く拳をぶつけた。
戦っている様子を見て、隊の仲間として認められた、といったところか。
そして、レインはなぜか顔を引き攣らせていた。
「……初めて戦う魔物なんじゃないの?」
「初めてだよ。見るのも初めてだ。」
それで普通に戦えることが、信じられないらしい。
「事前に聞いていた通りのことしかしてこなかったからな。動きも特別速い訳じゃないし。問題なのは長さだけだろ。」
事も無げに言う俺に、レインは増々顔を引き攣らせた。
フレイムロープを片付けた俺たちは、再び鉱山を登り始めた。
次に現れたフレイムロープは二体だったため、二人組が同時に戦った。
二人とも、十分に戦い慣れた者の動きだった。
そうして、最後にレインの番。
緊張なのか、恐怖なのか、レインはガチガチだった。
その、あまりにぎこちない動きに、バルアーゾのみならず二人組も呆れていた。
「たあーーーっ!」
ブウンッ!
思いっきりはいいのだが、あまりに大振りな剣は空を切り、フレイムロープのフェイントの動きにもぶんぶん振り回していた。
つーか、おちょくられてんじゃないのか、これ?
(うーむ…………『ぶんぶん丸』か『扇風機』で迷うな。)
俺はそんなレインの戦いぶりを見ながら、新たなあだ名を考えていた。
一応、みんなも周囲を警戒しているのだが、レインのお粗末な戦いぶりに頭痛を覚えているようだ。
二人組の一人が俺の横に来て、声をかけてきた。
「こう言っちゃ何だが…………彼女は帰した方がいいんじゃないか?」
それは意地悪で言っているのではなく、レインのことを心配しての親切からきた言葉だろう。
「そうですね。是非そう言ってやってください。」
俺が笑顔で言うと、男は顔をしかめた。
すでに俺が説得していることに気づいたからだ。
そして、その説得が失敗していることも。
数十回の素振りのうち、数回はフレイムロープを斬ることに成功した。
そうして、攻守が入れ替わるタイミングで弱点を叩ければ良かったのだが、…………失敗した。
再び、ぶんぶん丸が本領を発揮し始めた。
実に、十分以上の時間をかけ、ようやくレインはフレイムロープを倒した。
「……ゼェ……ゼェ……大したことっ……ゼェ……なかったわね……っ。」
「息上がってんぞ。」
一人だけ汗だくになっているレインに、俺は持って来たタオルを投げてやった。
「これから何体出るか知らんが、しばらくレイン一人で倒せな。」
「何でっ!?」
何でじゃねえだろ、何でじゃ。
「練習が必要なのが、お 前 だ け だ か ら だっ!」
「うぐっ……!」
自覚はあったのか、レインは反論して来なかった。
こんな状態で採鉱場の中に行ってみろ。
俺でも見捨てるわ。
つーか、危なくって助太刀もできねえ。
あんな大振りで剣を振り回されたら、こっちの命がいくつあっても足りん。
「バルアーゾ、悪いけどそういうことでいいか?」
俺は少し離れた場所にいたバルアーゾに声をかけた。
俺たちのやり取りを聞いていたようで、即座に頷いた。
というか、二人組と深刻な顔をして、何やら話し合っている。
おそらくだが、このままレインを連れて行っていいものか悩んでいるのだろう。
レインの動きは、本当にひどかった。
それはもう、領都で訓練していた時の比ですらない。
初めての実戦ということで、更に余計な力が入りまくっている。
俺は、レインにそのことをよくよく言い含め、次からの『練習』に活かしてもらうことにした。
…………無駄かもしれないが。




