全力疾走も悪くない。
グラウンドに集まった俺たちは、作戦会議のようなことをしていた。
「それじゃあ最初は蓮さん頼んだよ。気楽に走って大丈夫だからね。俺が最後に追い越してやるから!」
海翔はほんとに心強いな。
追い越されても怒らなそうで良かった。
そろそろスタートということで列に着く。
それにしても人が多い。20グループでリレーなんてよくよく考えたらしたことないな。
あと、周りを見渡すと1、2番目は女の子が多く男の子はほとんどが後半に固まっているらしい。
これで越されたら学生生活が終わるようなものだ。
「女の子多いですね」
そう話しかけてきたのは以外にも後ろの雪姫さんだった。
「そうですね…。越されたらどうしようってそんなことばっかり考えてます」
いきなり話しかけられて緊張で普通のことを言ってしまった。
まあいつでも面白くないことしか言えないわけだが。
「気楽に走ってください。バトンだけしっかりしてくれればこっちは大丈夫ですので」
そう微笑んだ彼女はとても美しく本当に世の中の男はみんなが惚れてしまうほどであった。
そうこうしているうちにそろそろリレーが始まるらしい。
「位置について、よーい──────」
スターターピストルの音と共に20名が走り出す。
中位くらいのいい位置で俺たちのチームの蓮さんは走っていた。
この人数でのリレーだからこそ中位は目立たない。
そう安心して待機位置に着く。
「はぁはぁ、あと…頼んだぁ!……」
そう言って渡されたバトンを受け取り走り出す。
最近走っていなかったせいか足がもたつく。周りはほとんど女の子でたまにいる男の子は割と走れなそうな人が多い印象だ。
このまま現状維持でもいいのだが、さすがに周りが女の子となれば話は変わってくる。
こういうレースになると男ってのは決まってかっこいいところを見せたいと思う生き物だ。
中位で目立たないようにしようという考えより男であることが先行する。
地面を蹴る力、足を動かす速さを一気にあげる。周りが遅くなったかのように自分は全力疾走で上位へ詰める。
気づいた時には前には2、3人残っているだけだった。
バトンを左手に持ちかえる。
前を向くと彼女が待っていた。
「あ……あと、お願いしますっ!」
「任せて。お疲れ様」
そう言って彼女はとびきりの笑顔を見せて走り出していった。
美しいだけではなく可愛さも垣間見えた。
前の人数がいなかっただろうか。いつにもなくよく彼女の顔が見えたししっかり目もあった。
だからこそこの汗も疲労も今日だけは悪くないと思えた。