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ホラー小説集

心霊スポットでもない交差点に、花を手向けた結果…

作者: 大浜 英彰

 怪談や都市伝説の大好きな女子小学生だった私は、当時住んでいた町に不満を抱えていました。

 何故なら、歴史が浅いニュータウンなので町にも学校にも怪談や昔話が伝わっていなかったからです。


 地元の怪談に飢えていた私は、「無いなら作れば良い」の精神で、幽霊話をでっち上げる事を考えついたのです。

 ジョギングに託けて早朝に家を抜け出した私は、幹線道路に繋がる交差点へ向かい、そこに花を手向けたのでした。

 定期的に水を換え、時には花を取り替えて。

 そのうち近所の人が、「あの交差点で死亡事故があったらしい。」と噂話をするようになりました。 


 架空の死亡事故の捏造に成功した私は、計画を次の段階へ引き上げました。

 絵の具で作った血糊を顔に塗って夏用の白いワンピースに身を包み、夜明け前の薄暗い交差点へ出没するようになったのです。

 私の姿を見たドライバーや通行人は、「事故死した少女の幽霊を目撃した。」と騒ぐようになりました。

 私がやったとバレないよう、幽霊に化けるのは手頃なタイミングで止めたのですが、件の交差点は心霊スポットとして認知されるようになりました。


 厄介なのは、ここからです。

 怪談よりも恋愛や進学に興味を持ち始めた中2の冬、例の交差点で少女の幽霊を目撃した人達が現れたのです。

 目撃者には真面目な学級委員や風紀指導の先生もいたので、彼らが嘘を言ったとは考えられません。

 かと言って、私は既に足を洗っています。

 何かの偶然と信じたいのですが、その後も幽霊の目撃者は何人も現れました。

 恐ろしくなった私は、高校進学を機会に地元から引っ越し、就職後は一度も帰っていません。 


「書き込み完了!鳳駆露亜(ほうくろあ)さん、喜んでくれるかな?」

 懺悔と自慢の入り混じった気分で、私はお気に入りのオカルトブログにメッセージを送信する。

 だが、オカルトブログの管理人さんの返信は私の背筋を凍て付かせる物だった。


−実体験に基づく面白い怪談、ありがとうございます。件の怪談の幽霊そっくりな少女を、堺県堺市の交差点で目撃した人がいるそうです。


「えっ!」

 返信の続きに書かれた住所を読むと、それは私のマンションの近所だった。

「追ってきたの?まさか…」

 そう言えば、このマンションも交差点に面している。

「うっ!」

 窓のカーテンを開けた事を、私は後悔した。

 マンションの真下の交差点に、白いワンピース姿の少女が立っている。

 街灯の明かりに照らされた血だらけの顔は、少女時代の私と瓜二つだった…

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― 新着の感想 ―
[一言] モノマネしてたらご本人登場! みたいな流れですねw
[良い点] 似たようなことを小学校の頃にやったなあ、結局は子供の嘘泣きの延長だものなあ、と懐かしく思いつつ楽しませて頂きました。 なのできっと「でっち上げ」と分かっている悪友による模造犯だろうな、と。…
[一言] 師匠シリーズでもオチは違いますが、同じような話がありました。「花」というタイトルです。面白いので、読んでみるといいですよ^^
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