未来も書いてある本
横断歩道で両親を亡くしたばかりの少女が交通指導員の小林に声をかけられた。
「おはようごさいます」
「おはようございます」
少女は小林に挨拶を返した。
「お久し振りです。何で休んでいたんですか?」
「体調を崩していたんだよ」
「そうだったんですね。復帰してもらえて本当に良かったです」
「ありがとう。そう言ってもらえて嬉しいから、すごい本を見せてあげるよ。読んで」
小林は少女にある本を見せた。少女は本を読んでいるうち、あることに気づいた。
「この本は私の半生記録ですか?」
「少し違う」
「どう違うんですか?」
「高校生編を読んでみて」
「分かりました」
少女は本を読んでいるうちに再びあることに気づいた。
「これって未来のことですか?」
「うん。何て書いてあるか読んでみて」
「“宝くじが当選する”って書いてあります」
「じゃあ、その通りになるよ」
「買う予定がなくてもですか?」
「必ずもらうことになります」
そう言い残し、小林は去った。
小林が去った後、少女は公園から横断歩道へ来た。そこには道を渡れず、困っているおばあさんがいた。少女は横断旗を手にした。
「おばあさん、渡って下さい」
少女はおばあさんと一緒に道を渡った。
「ありがとう。お礼に宝くじをあげる」
おばあさんは少女に宝くじを渡し、横断歩道の目の前の自宅に入った。
「本当にもらえるとは」
少女が驚いていると誰かに話しかけられた。
「ほら、宝くじ、もらっただろ?」
振り返ると小林がいた。
「確かにもらいましたが、本当に当たるんですか?」
「当たるかは明日の朝刊を読んでみてほしいな」
小林は笑顔でそう言った。
翌朝、少女は新聞を読み、結果を知った。
「本当に当たるとは思わなかった」
この時、少女は宝くじが本当に当選することに驚いた。 少女は少し動揺したが、すぐ冷静になり、宝くじをくれたおばあさんの家に向かった。
数分後、少女はおばあさんの家に着き、事情を説明した。
「なるほど、じゃあ、宝くじの当選金の受け取り方を知ってるかしら?」
「知ってので教えます」
少女はおばあさんに当選金の受け取り方を説明した。説明を聞いた後、おばあさんはこう言った。
「じゃあ、あなたは自分の通帳と印鑑、身分証を持ってきて」
「なぜ私のものが必要なんですか?」
「今、あなたが説明したじゃない。受け取るときに必要だって」
「それらが必要なのは受け取るおばあさんのものですよ」
「あなたにあげるので、私は受け取りません」
「なぜくれるんですか?」
「理由は…」
おばあさんは少女に理由を話した。
「それで亡くなった娘さんに似ている私にあげるよう、旦那さんに言われたのですね」
「ええ、彼にね」
そう言っておばあさんはいつの間にか現れた人を見た。少女はその人をを見て驚いた。なぜなら、その人は小林さんだったからだ。
「小林さんっておばあさんの旦那さんなんですか?」
「ええ、そうよ」
「そうだったんですね。じゃあ、宝くじの当選金はありがたくもらいます」
そう言って少女は当選金を受け取り、お世話になっているおじ夫婦に全額渡すことにした。
夕方、少女は帰宅したおじに当選金を受け取った経緯を説明をした。
「ありがたいけど、私たちのことは気にしないで、全て自分のために使いなさい」
「そう言われても、使い道がないよ。どう使えば良い?」
「無理に今すぐ使わなくても良いじゃないか。お金はいくらあっても困らないんだから、取り敢えず貯金するのはどうだろう?」
「分かった」
少女はおじの提案通り、当選金を貯金することにした。
数か月後。
「さて、続きを書くか」
小林さんは偶然自分の予想が当たったため、自宅で未来予想の本の続きを書きたくなり、そう言った。