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追憶の電脳世界〜エタニティ・ドリーム・ワールド〜  作者: 夢達磨
第一章 人工大陸アーティダル ウガルンダ編
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第7話 暗躍する者

挿絵(By みてみん)

       

 ギルド会館に着いた僕は、出迎えてくれたお姉さんに、軽くお辞儀をし、①ーAの窓口へと向かう。


 そして、昨日、面接の話をくれた青髪のお姉さんに話しかける。


「こんにちは! 面接を受けにしました。トワです」


 青髪のお姉さんも、待っていました! と、言わんばかりの勢いで。


「こんにちは! お待ちしておりました。中にある、応接室で、面接を行いますので、こちらへどうぞ!」


 お姉さんに案内されながら、世間話をしつつギルド会館の内部へと進んだ。


 周りを見ていると色んな人が働いているのが分かる。


 事務所には五、六人の女性職員の人が書類を整えたり、パソコンを当たったりしている光景が見える。


 突然、お姉さんが立ち止まり。


「着きました。こちらのお部屋の中に、ギルド会館ウガルンダ支部の、総務部、部長のゴールドさんがおられます。

 基本、優しい方なのですが、少し気難しいところがありまして……。心の準備が出来たら入りましょう」


 それを言われると少し緊張するのだが、僕は待たせまいと、分かりましたと伝え、扉をノックして扉に手をかける。


「失礼します! 本日はアルバイトの面接を受けに……」


 僕が言いかけると。


 ソファーに座っており、年老いた、銀髪なのか白髪なのか、はっきりしない色の女性が僕の言葉を遮り。


「今日、この時間にアルバイトの面接があるのが、知っているからこうして待っていたのです。

 私には時間がありません。手短にいきましょう。お座りください」


 もう少し優しい言い方はないのかと思うのだが……。

 お辞儀をして、ソファーに座る。


「本日はよろしくお願いします」


 部屋の中に入ってきたお姉さんが、ゴールドさんに挨拶すると、僕の隣に座る。


「こちらこそよろしくお願いします。私が、『ウガルンダ支部』の総務部、部長の『マリー・F・ゴールド』です。では、早速。

 ここの支部は、新人冒険者や新人プレイヤーがかなりいらっしゃるので、とても忙しいです。

 そして今、人手不足っていうのは、そこにいるメルさんに聞いていますよね? みんながみんな、心に余裕がある訳ではありません。

 忙しくて、言い方がきつかったり、急かされたりするかと思います。それでも、ここで働いてみたいと思いますか?」


 隣に座った青い髪の女性が、メルさんって人なのか。そういえば、名前を聞いてなかったな。

 

 そんな事を思いつつも、僕の気持ちは変わらない。

  

 目立つのが苦手な、この性格を治したいと言う気持ちもあるが、大変なこの状況でも、みんなの力になりたいっていうのが大きい。


 現実ではアルバイトなんか出来なかった訳だし。僕は決心して口を開く。


「はい、お話は聞いております。僕は目立つのが苦手で、この性格を治したいって言うのもあります。  

 アルバイトをした事がない僕が言うのも変ですし、お役に立てるかは分かりませんが、みなさんのお力に少しでもなれたならなと……」


「分かりました。もういいでしょう。自分を変えたい、ここの人たちの力になりたいと言う強い気持ちは理解できます。実際人手不足ですし。

 それに、君はまだ若い、これからの人生において、良い経験にもなるでしょう。

 ですが、プレイヤーを雇うのは特例です。人手不足が解消されるまでという条件で雇わせて頂きます。

 モンスター退治の依頼や採取の依頼などもこなしてもらいたいので、経験値を稼いでレベルをある程度上げていて下さい」


 途中で話を遮られた時は焦ったけど合格みたいで良かった。

 数日だけでも、社会勉強出来るのはありがたい。


 モンスター退治とかもするんだ。レベルもそうだけど、まずは剣の腕を磨かないとね。


 メルさんは安心したのか、深呼吸して落ち着いているようだった。


「はい! それで、大丈夫です! 不束者ですがよろしくお願いします!」


「こちらこそよろしくお願いしますね。いつから働けますか?」


「いつでも大丈夫です!」


 僕は元気よく返事をした。ゴールドさんはメルさんを見ながら。


「そうですか。では今から少し、館内を見てもらって、場所の確認をしましょうか。

 メルさん。あなたが持ってきた案件です。責任を持ってトワくんを見るように。いいですね?」


 慌てた様子でメルさんは返事をする。


「ひゃ、ひゃい! 私が責任を持ってお世話をしますぅ!」


「では、これで面接は終わります。何か分からない事があれば、メルさんに聞いてみて下さい。

 まだ君のレベルは3。プレイヤーでレベル一桁は、ここ最近では見ないですね。

 戦闘のコツなどが分からなければ、ザーハックさんを頼ると良いですよ。

 これからの活躍に期待していますよ。私は少し用事があるので離れます」


 ゴールドさんはそう言うと、ドアの前で一礼をして外に出た。


「お忙しい中ありがとうございました! 失礼します」


 緊張のあまり、言うのが遅くなりゴールドさんに聞こえてたのかは分からない。

 メルさんが小さな声で。


「ぶ、無事に終わりましたね……良かった……。怒鳴られるかと思いました……。

 これで、トワさんも短期間だと思いますが、ギルド会館ウガルンダ支部のスタッフの一員です! 

 これから一緒に頑張りましょうね! 困った時は、先輩の私に相談してください!」


 メルさんは、鼻下に人差し指を擦りながら当て、ムフッ! と胸を張る。


 そのメルさんが、自分の教育係になるのかと思うと、頼もしくて優しそうだから嬉しい。

 

 学校とは違う、先輩後輩って感じがして新鮮な気持ちになる。


「改めまして、メル先輩よろしくお願いします」


 メルさんは照れながら言う。


「先輩だなんて照れますね。

 私にとって初めての後輩……ますますやる気が湧いてくるってもんです! まずは着替えの為、更衣室に行きましょう」


 部屋を後にした僕たちは、メルさんに更衣室に案内してもらった。


 僕が更衣室で待っていると、メルさんが制服を持ってきてくれた。


「多分、これくらいで丁度いいと思います。これに着替えてもらえますか?」


「分かりました。めっちゃかっこいいですね。僕に似合うかな」


「大丈夫ですよ! ザーハックさんも着た事ありますが、似合ってましたよ。

 今はすぐに、モンスター退治に行けるように、装備を着たまま接客していますが」


 毎回着替えるのも大変だもんな。


 プレイヤーなら、ゲームパッドから装備を変えればその武器や防具を装備できるし、アバターだけだったらすぐに変えることも出来る。

 

 制服を持ったまま立ち止まっていると、メルさんが不思議そうに尋ねてくる。


「着替えないんですか?」


 僕は恥じらいながら……。


「いや、着替えたいとは思うのですが……その……メルさんに見られながら着替えるんですか? 恥ずかしいんですけど」


 すると、メルさんは慌てて。


「……あ! あぁ! そうですよね! 見られていたら着替えにくいですよね! すみません、気がつかなくて! すぐに出ます」


 メルさんは、慌てて更衣室を出ようとするが、物に体をぶつけたり、最後は、躓いて転んでいた。


 意外と天然だったり、ドジっ子属性な人なのかな?


 そんな事を思いながら、僕は着替えを終える。


 ネイビー色のタキシードのような、その制服は上品で、余裕のある大人を演じさせてくれる。


 光沢感がありかっこいいと思う。まあ、背が小さくなければ良かったな。


「メル先輩! お待たせしました! 着替えが終わりました。入ってきてください」


 ガチャッと、ドアが開きメルさんが近づいてくる。


「おぉ! いいじゃないですか! とってもお似合いですよ!」


「ありがとうございます。蝶ネクタイとか普段しないので慣れないですね……」


「いつか慣れますよ! 今日は時間もあんまりないので、見学だけして終わりましょう。案内しますね」


 メルさんと挨拶をしながら、各エリアを案内してもらった。


_____


 数時間たち、日が暮れ出した頃。


「今日はありがとうございました。プレイヤーとアルバイト、両立してみせます」


 そういうとメルさんは笑顔で。


「それは頼もしいですね。私もうかうかしてられないですね。明後日の朝の9時前に①−Aに来てください。

 皆さんに挨拶をして、本格的にアルバイトを始めましょう。それまでは、ゴールドさんに言われていた、プレイヤーレベルを上げをしたりして下さいね。

 私は上に報告をしなければならないので……ではまた……おやすみなさい」


 僕は挨拶をして宿屋コロンに戻り、コロンちゃんたちと少し話したのち、眠りについた。




_______


 とある施設にて。


「彼は無事、アルバイトの面接を合格しました。明後日から、アルバイトを行います。

 いっときは、この町から出ないかと思われます」


「そうですか。報告ありがとうございます。では、そろそろあの子を向かわせるとしましょう。

 あの子が合流するまで、見張っておいて下さい。合流した後の事は彼らに任せるとして。我々も動き出しましょう。ふっふっふっ。では、手筈通りに……頼りにしてますよ。」


「承知しました。マスター」


「御意」



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