第6話 宿屋コロン
「あ、あれ? ログアウトできない? これってまさか……漫画やアニメとかであるお約束のパターンなのか?」
もう一度ログアウトボタンを押す。
先程と同じく、ブブーッと効果音が鳴り、ログアウト出来ません、と聞こえる。
「これは確定だな。帰れる条件はなんだろう?
ラスボスを倒すとか、この世界の秘密を謎解くとかかな? ハニポンも帰っちゃったし……とりあえず、完全に暗くなる前に、帰らなきゃ」
_______
ウガルンダの南側に着いた僕は、泊まれる場所を探して、町の中を歩いていると。
キャンプなどによく使われている、ランタンランプのような灯りが見えたのでそちらの方へ向かう。
その灯りの建物は、レンガと木が器用に使われた、レトロな感じをかもしだす。
建物の大きさは、現実世界の一般的な一軒家より少し大きいくらいだろうか。看板には、『宿屋コロン』と、書かれている。
偶然、宿屋を見つけたのだ。
僕は、宿屋コロンに立ち寄る事にした。
ドアノブに手を当て、声を出しながら扉を開ける。
「すみません、一泊したいのですが、部屋は空いてますか? 初めて利用するのですが」
「いらっしゃいませ、こんばんはー! 宿屋コロンへようこそ! お部屋なら、空いてるですよー!」
出迎えてくれたのは、見た目は小学校低学年くらいの大きさで、綺麗なクリーム色の髪の毛。三つ編みの髪型の可憐な少女だった。
僕を見ると、ニコニコと笑顔を浮かべながら、その少女は話しながら、近づいてくる。
「ご来店ありがとうです。まずはこっちで、受付して欲しいのですよ。その後に食堂とお部屋を案内するですよ」
少女に言われるまま、僕はカウンターへ向かい、メニュー表を確認する。
一泊で、二回のご飯付きで2000D、三泊すると、六回のご飯が付いてきて5000D、七泊で、十五回ご飯を注文する事ができ、10000Dでお得な金額となっている。
まあ、この世界のお金の価値観が分からないので、安いのか高いのかはよくは分からないのだけど。泊まれてご飯も食べれるのであればお得なのだろう。
好きな時にご飯を注文できるみたいなので、お昼は外で食べて朝と夜は、ここで食べるのもありだと思う。
「では、七泊コースでお願いします」
僕の言葉に反応して、少女は嬉しそうに言う。
「七泊コース! ありがとうです! 部屋はどこでもいいです?」
「端っこが空いていれば、端っこの部屋がいいです」
「分かりましたです! では、Dのお部屋にご案内するです」
少女はそんな事を言いながら、部屋の鍵を渡してくれた。少女の案内で、部屋へと向かう。
部屋の前に着くと、案内を終えた少女はお辞儀をして部屋を後にした。
ログアウト出来ないこの状況で、不安もあったが、泊まれる場所を確保できて、一安心している。
ドリーはログインボーナスなどで、まだ余裕はあるので当分、なんとかなりそうだ。
僕は、部屋の中を歩き回り、トイレの場所やお風呂の場所を確認する。
ご飯やお風呂を済ませ、これからの事は明日考えようと思い、すぐにベットの中に潜り込み、眠りについた。
_______
次の日。
僕は目を覚まし、ゲームパッドを確認する。
《ログインボーナス2日目! アイテムゲット! ギフトボックスからお受け取り下さい》
と、ゲーム音が鳴り響く。
僕はログインボーナスを受け取る。
10万D
夢石×1万P
回復薬×10本
MP回復薬×5
素材クエスト用チケット×10枚
レア度4防具交換チケット×2枚
ここの世界では、朝5時以降に、ゲームパッドを確認すると、ログインした事になり、ログインボーナスを貰えるらしい。
2日目もかなりボーナスをもらった。十万ドリーをまた貰えたので、宿泊費も急いで稼がなくてもいいのでほっとする。
鍵を閉め、部屋を後にした。下にある食堂へ向かう。階段の所で、昨日の少女に声をかけられた。
「おはようございますです! 夜はゆっくり休めましたですか?」
「おはようございます。ゆっくりできましたよ。お気遣いありがとうございます」
と、僕は少女に答え、一礼し食堂へと向かった。
周りには朝食を食べ終え、ごちそうさまー! などの声が聞こえてくる。
僕は席に着き朝食のメニューを確認し、注文をしようと声を上げる。
「すみませーん、注文お願いしまーす!」
僕は叫ぶように言うと、厨房から、短髪でクリーム色のガタイのいい、おじさんが出てきた。
「おはよう! 昨日遅くに来たお客さんだね、疲れは取れたかい? 注文は何にする?」
「おはようございます。夜分遅くにすみませんでした。
疲れはおかげさまで取れました。
では、注文を。このオムライスをお願いします」
「あぁ、オムライスだね、少し待っててくれ。すぐに作るよ」
ガタイの良いおじさんは、そういうと厨房へと戻っていった。
数分待っていると。
先程の少女が、料理を持ってきてくれた。
「ご注文のオムライスです! お皿がお熱いのでお気をつけて下さいです」
「ありがとう。君しっかりしてて偉いね、凄いよ」
そう僕が言うと、少女はもじもじしながら。
「お、お、おほ、お褒めにおあ……あずぁ……」
褒められるのは慣れていないのだろうか。照れている。可愛い。
僕は続けて。
「遅くなったけど、僕の名前はトワって言うんだ。これから、色々迷惑をかけると思うけど、よろしくね」
僕が自己紹介を終えると、少女も続けて。
「私の名前は、コロンと言いますです! みなさんの、お役に立てるよう、頑張るです! よろしくお願いしますです」
その声は小さく、弱々しい感じだが、最後には笑顔を見せてくれた。
この歳でしっかりしてて本当にすごいと思う。そして、コロンちゃんは、他のテーブルの食器を持って厨房の方へと戻って行った。
食事をし終えた僕は、食器を下げコロンちゃんに、出かけてくるねと伝え、ギルド会館へと向かった。