10.レシピノートをつくる(4)
ごはんの風景で思い浮かぶのは、実家の細長いテーブルいっぱいに置かれたたくさんのお皿。
いつでも5品以上のおかずがあって、ごはんと味噌汁がつく。おかずは小皿に取り分けて食べる。
母は毎日1時間ほどかけて夕飯をつくっていた。私はキッチンのそばに座って、足をぶらぶらさせながら、とりとめもなく今日の出来事を話したり「ごはんまだ?」と聞いたりしていた。
母はなんという大変な作業を毎日していたのだろう。私は夫と自分の洗いものだけで済むけれど、家族4人分の食器を手洗いして、拭いて、片づける。あれだけでも1時間近くかかっていたのではないだろうか。
家族のだれも手伝おうとしなかった。私たちは家事が地味で大変なものであるということも、当たり前でほめられないからやる気を維持するのがむずかしいことも知らなかった。
家事は、だれかをサポートするためのものだ。自分のために時間を使う勉強とは違う。
実家で手作り以外の食事が出てくることはほとんどなかった。月に何度か、土曜日のお昼ごはんにだけ出てくるインスタントラーメン。それから、大晦日の昼食のカップラーメン。それだけだ。
はじめて冷凍食品を食べたのは、冬吾と付き合うようになってから。コンビニ弁当も食べたことがなかったし、お惣菜も買ったことがなかった。
私の中には「手作り」という概念しかなかったのだ。
実際に食べてみると、冷凍食品は驚くほど手軽でおいしい。働きはじめてすぐは毎日お弁当をつくっていたけれど、人間関係が悪くなってから徐々になにもしたくなってやめた。
そうしてコンビニを多用するようになったけれど、いつも罪悪感があったように思う。
ただ、栄養面の知識がなかった当時の私には、それだけを食べるのはとても抵抗があった。もちろん、手作りしたものとくらべると味つけがやや濃かったり、添加物が入っていたりはするけれど、工夫して栄養を意識することはできたはずだった。
たとえば冷凍チャーハンにレンジで加熱した卵を乗せるとか、カット済みのサラダを買うとか。それでも気になるなら、スープだけを手作りしてみる。
そんなふうに、既製品と手作りをバランスよく混ぜていく。そうすれば、あんなにも大変に感じることはなかったはずなのだ。
それでも手作りという枠を外すことは長いことできなかった。
そしてこの頃、私はレシピの管理方法を真剣に考えていくことになる。失敗した、おいしくないと言われた料理はもう作りたくない。
おいしくなくても、自分の時間を削ってがんばったものだ。否定されたくはなかった。
「レシピを分けてみたらどうだろう?」
ふと思いついた。
「これから作ってみたいレシピと、作ってみておいしかったレシピに分ける。まだ挑戦していないものは、わざわざ紙に書かない。
何度もくり返し作っていきたいレシピだから『リピートレシピ』。これだけをちゃんと記録していく。」
これはひらめきの種で、レシピノートの原型が完成するのはこの何年もあとのことだった。
でも、この考え方は私のノート作りにある影響を与えることになる。それは情報を分けることだ。
すべてを一冊にまとめるのではなくて、適した場所に配置していく。情報にはきっと種類があって、さらにそこに自分の環境や性格をかけ合わせることで、はじめて最適な場所が導き出されていくはずだ、と。
私のレシピノートの完成形は、こちら。
「魔法の手料理ノート」
http://365kaji.blog.jp/archives/20181126.html
記事で紹介しているのは一部のページでしかありませんが、リピートレシピだけをまとめていきます。
これから作ってみたいレシピは、LINEのグループ機能を使って管理します。
「LINEでつくるレシピデータベース」
http://365kaji.blog.jp/archives/20200102.html
リピートレシピもノート機能やアルバム機能などにルールを決めて登録すると、ノート不要またはノート下書きとして活用できます。
スマホが壊れたのをきっかけに、この記事のやり方から少し変わりました。またいつかそちらについても書いてみたいです。
なお、この時期は、未挑戦レシピもリピートレシピもEvernoteで管理していくことになります。通勤電車の中でレシピ検索することが多かったので、スマホで完結するようにしました。