発動! 補助魔術(4)
ここは、一年中降る雪によって閉ざされた最北の地。
魔物を用いて、世界を侵略していると言われている魔王の住む城である。
その玉座の間にて、オンダン王国から送られた勇者一行と魔王との戦闘が……
っていうか楽しく遊んどるやないかい!
「5、6、7っと。やたー、ごーるですー」
「かー! やられたのー。まさかあそこで振り出しに戻されるとは」
「それっ! ああっ! あと1足りないぃぃ」
「皆さんすっかり楽しんでますね」
元から大分打ち解けていた勇者・聖女・魔王に続いて賢者までもが『ボド=ゲ』で楽しむようになっていた。
敵対関係すらもほぐしてしまう『コ・タツ』恐るべし。
しかし、いつまでこの空気が続くのだろうか……
「いやーけんじゃさまもーやっとゴール出来ましたねー」
「すごい待ったがの」
「うるさいですよ。みんなして妨害してきたくせに」
「まぁまぁ、そうカリカリするな賢者よ。ゴール出来て良かったじゃないか」
終わらせども終わらせども、また新たなゲームが召喚される現状。
『コ・タツ』に入る4人は暇になることなく、また新たなゲームをしていた。
そんなゲームの連戦を止めたのは魔王の一言からだった。
「ふぅー。いろいろとやってきたが、そろそろ腹が減ったのぉ」
「む? 確かにそうだな。細かく食べてはいたがもうこんな時間だ」
「こんな状況に合う補助魔術はーないのですかねー」
「それならば解析した中に確かあっ――」
そう賢者が言い終える前にまた4人を光が包む。
「あーはいはい。これじゃこれじゃ」
「次は何が来るのだろうか」
「やはりーごはん系ですかねー」
「まあ、十中八九そうでしょうね」
光が治まった後、4人が見たものは……
見慣れぬ機材 と 食材と思われるものたち であった。
「うーむ。ごはん系のものが来るとは思うとったが、これは……」
「あっ……ああ。そうだな。まさか調理前とは……」
「どうすればーいいのでしょうかー?」
「いやいや、みなさん。調理するしかないでしょう。」
「できるわけがなかろうが! 我は魔王ぞ!」
「知っているとは思うが私は勇者のスキル構成をしている。だから料理には振ってないんだ」
「まーわかってますよねーけんじゃさまー」
「はぁー。女性が3人もいながら……」
不用意に発した賢者のその一言は、3対1の構図を実現するのに大いなる貢献を果たした。
その結果、賢者は孤立無援の劣勢に立たされることになったのだ。
「ほほう? その発言は女性差別か? いかんのぉ。今の時代じゃ一発アウトじゃぞ」
「まったくだな。料理がでっ……ニガテな女性だっているのだ」
「そんなことをおっしゃられるのならーけんじゃさまがー調理して来てくださいよー」
「そうじゃそうじゃ! 行ってくるがよい。厨房はここを出て左に曲がって3つ目の角を右じゃ」
「痛い痛い、痛いですよ。中で押さないでください。いきますってば」
「では頼んだよ、賢者」
見事に地雷を踏みぬいた賢者は追い出されるように『コ・タツ』から出て、厨房へと向かうのだった。
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『コ・タツ』からでた(追い出された)賢者は魔王から言われた道を通り、厨房へと向かっていた。
「くそー。こんな追い出すようにしなくてもいいじゃないか。『コ・タツ』に入っていたいのはわかりますけど……ん? ちょっと待て! なんで僕たちは魔王と一緒にこれを食べようとしてたんだ!?」
ようやくあの場所の異常性に気づいた賢者。
『コ・タツ』から少し離れただけで我を取り戻せたのは、やはり賢者の持つ魔法抵抗値の高さゆえか。それとも……
「このまま戻るか? はっきり言ってこれは異常だ。『コ・タツ』に入って考え……っとダメだダメだ! 勇者様や魔王の魔法抵抗値ですら耐えれていないのに、無策で戻ってもまた取り込まれるだけだ。いったいどうすれば……」
と、考えつつも厨房へとたどり着いた賢者は『オナ=ベ』によって召喚された食材を使って料理を作っていくのだった。
頭の中では『コ・タツ』から本当に逃れる方法を探しつつ……
勇者一行は果たして、この魔術から逃れられるのか。賢者は脱出の鍵になるのだろうか。