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発動! 補助魔術(2)

 ここは、一年中降る雪によって閉ざされた最北の地。

 魔物を用いて、世界を侵略していると言われている魔王の住む城である。

 その玉座の間にて、オンダン王国から送られた勇者一行と魔王との戦闘が行われていた。


 と思っていた時もありました……



「はー。おいしいですねー、この『ミ=カン』は」


「そうだな。いくつか食べたが剥きにくいものの方がおいしい気がするな」


「そうかのぉ? どれもあんまり変わらんじゃろ。おんなじくらいじゃ」


「まあ、剥きやすい方が食べやすいですけどね、少し水っぽくないですか?」



 などと話しながらほのぼのと話をする勇者一行と魔王。

 彼ら彼女らは当初の目的を覚えていないのだろうか……。



「って、ちょっと待ってくださいよ! なんで魔王と一緒に『ミ=カン』食べてんですか!」


「はっ! そうだ! 『コ・タツ』の暖かさにほだされるところだった」


「いや、もうほだされとるからな、お主。ふにゃふにゃじゃからな」


「なにをゆうかぁ! 覚悟しろぉ! 魔王よ!」


「回復はー任せてーくださ…… Z Z Z...」


「いや寝ないでくださいよ。しっかりしてください」


「賢者はーきびしいですねー」



 もう戦闘の緊張感もどこへやら。すっかり『コ・タツ』に捕まっている4人であった。

 戦闘の意思はみせるも、言葉にはどうも覇気がない。

 これが『コ・タツ』の恐ろしさなのだろうか。

 そんな時、また一つ補助魔法が発動するのだった。



「またかっ!」


「うわっ!」


「まぶしー」


「ぅくっ!」



 光の治まった机の上にあったのは大小様々な箱(ボードゲーム各種)だった。



「今度はなんじゃ?」


「それぞれの箱にいろんな絵がかいてるな」


「これなんて大きいですねー。これはなんですかー?」


「うわっ! 皆さんでこっち見ないでくださいよ。びっくりするなぁ」



 2度目にして、もうすでに解析役の地位を確立した賢者は3人の視線が生む重圧に負け、渋々とだが、スクロールを再度解析し始めた。



「もっとパッと解析できんもんかのぉ。ひまじゃのぉ」


「解析は専門職だからな。結構難しいらしいぞ?」


「ですねー」


「これは箱じゃし危険もないじゃろ。開けるか」


「まあ、危険な感じはしないな。大丈夫だろ」



 やらせておきながら賢者を待たずに箱を開ける3人。なかなかにひどい。

 とりあえず手頃な大きさのものから開けることにした。



「これは……五目並べというものだな」


「なんじゃ勇者よ。知っておったのか?」


「いや、これに書いているのだ」


「ふむふむ。“説明書”、ですかー」


「ルールまで書いておるのだな。ふむ、なるほど」


「勝負をする気になったそばからこのようなものが出るとは、これで魔王を倒せということだろう。勝負だ、魔王よ!」


「フハハハハハ、受けてたとう勇者よ」



 解析を続ける賢者を置いて話はどんどん進んでいく。

 まさか勇者と魔王の戦いがボードゲームになろうとは。

 人生わからないものである。

 だがしかし、これで勝ち負けが決まったとしてどうするというのか。

 そこまでのことを考える人はここにはいなかった……。いなかったのだ……。




 _______________



 __________



 _____




「そうですね。おそらくこれか……っておいいいいい! なにやってんですかっ!」


「ぐわぁ! そこは盲点じゃった! なしなし、今のなしぃ!」


「フフフ、魔王よ、さっき待った無しといって聞かなかったのはどこのだれかな?」


「くうぅ。この悪魔めっ!」


「ハハハハ、魔王に言われたくはないわ。っと賢者よ、解析は終わったのか」


「あっ、別にー危険はなかったですよーおつかれさまですー」



 解析に集中していた賢者が思考の海から帰ってきた際に見た光景は、ツッコミを入れるにふさわしいものだっただろう。

 人が必死に解析をしている横で、その推定危険物で勝手に遊んでいたのだから。

 人によっては叱りつけるほどの案件である。



「なんで勝手に箱開けてるんですか! どうなるか分かったもんじゃないんですよ!」


「わ、悪かったよ賢者、そう怒るな。中も透けてたし大丈夫だろうと判断したんだ、魔王が」


「おい! 人に責任を擦り付けるでないわ。ほんとに勇者かお主」


「開ける人も止めなかった人も同罪ですよ、聖女様も。まったく、何もなかったからよかったものを」


「うっ。ごめんなさーい」



 3人はおのれに非があることはわかっているため、素直に謝ることにしたようだ。

 その後、クドクドと言い募ることは賢者もする気は無いようで、今回の現象を引き起こした補助魔術の解析結果を話しだした。

 今回の現象は『補助魔術 ボド=ゲ』というものであることが判明した。

 この魔術は異界のボードゲームと呼ばれるものを召喚し、襲い来る“暇”という大敵に打ち勝つための最強兵器であるようだ。しかし、使用するには複数人必要になるため、使用頻度的にはそんなに多くない魔術だという。



「ということです。聞いてましたか? みなさん」


「聞いとる聞いとる。と、ここじゃな」


「そうだぞ。聞いていたとも。む、そう来るか。ならばこうだな」


「まぁー解析待ち中はーめずらしくーヒマにはならなかったですねー」



 賢者の解析結果を聞きつつも勝負を止めない勇者と魔王

 これには賢者のこめかみもピクピクするというもの。

 頑張れ賢者、負けるな賢者、彼ら彼女らがこの拘束魔術から逃れられるのはいつになるのか

 答えは神にもわからないのであった……




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