11th ACTION 狂宴は続く (覚悟)
ロックが追いかけて走り始めたそのころ、駆け抜けていったCAは走るスピードを上げていき、町長達の一団に向かっていた。
遠巻きにロック達とCAの戦いを見ていた彼らだったが、自分たちに危険が迫ってきている事を察すると、フォロウはまず町長とその客人、そして残っていた庁舎の職員全てをまとめ、自分の部下である団員に皆を守らせながらここから離れるよう指示を出す。
フォロウ自身は逃げる彼らの時間稼ぎのため、四人の団員とこの場に残る事になった。
「みんな、町長達が安全な所へ行くまででいいから何とか足止めをお願いします」
「ふん、あいつらに出来て俺らに出来ない事も無いだろ。向かってくるなら反対に仕留めてやるまでよ」
長身のエネルギーソードを構えたカラス族の団員が自信ありげに声を出すと、他の団員達もそれに賛同するように力強い声を張り上げた。
そんな彼らを頼もしく思いながら、フォロウは自分の本心を隠すことに必死だった。
向こうで戦っている冒険者たちと一緒に遺跡に入ったフォロウは彼らの実力の程を目の当たりにしている。その彼らがてこずっているモノを相手にして自分たちが勝てる保証がどこにもない。
本当はもっと早くみんな一緒に逃げる様にするべきだったが、逃げる様に伝えても町長が中々動いてくれなかった。
ロック達が町長に対して怒りを表していた理由がフォロウには少しわかった気がした。
しかしこの町の住人である彼にとって町長は護衛対象である。言いたいことは飲み込んで、自分の仕事をするしかないのだ。
「来たぞ!!」
団員の声でフォロウは意識をCAに向け直す。
見るとCAはすぐそこまでやってきており、左腕に装備している手甲型の剣を横に抜きながら走りこんでくる。四人の団員もそれぞれの武器を持つとCAに向かって突撃していく。
そして彼らが激突する。自警団達は一斉に武器を上から下に振りかぶって攻撃を行い、エネルギーソードを持ったカラス族の団員はぶつかり合いの隙をついてCAの後ろに回り込んで剣をCAに突き立てようとした。
しかし彼らの作戦通りに事は運ばず、CAは左腕の剣で三人の武器を受け止めると一瞬でそれらを振り払い、三人の団員を弾き飛ばした。
そして三人の後ろから隙を伺っていたカラス族の団員は、弾き飛ばされた彼らに巻き込まれる形で彼らの下敷きになってしまった。
倒れてまだ立ち上がれない団員の一人に向かってゆっくりと近づくCA。
と、その間に割って入るようにフォロウが飛び込んでくる。団員達を背にしてCAの前に立ちはだかると、両手を広げて団員達をかばい出した。
「みんな、早く立って!」
「何してる団長!早くそこから離れろ!」
「私の判断ミスでこれ以上みんなを危険にさらすことは出来ない!早く逃げるんだ!」
フォロウに喝を入れられて団員達は急いで起き上がる。
ほっとフォロウが一息ついたのもつかの間、いつの間にか目の前にはCAが立っており、左腕の剣を引いて突き出す動作を行おうとしている。
反応の遅れたフォロウはその場から逃げることも防御の態勢をとることも出来なかった。
身体に向かって突き出されるCAの剣。その光景を見ることに耐えられないのかフォロウはギュッと両目をつぶる。
しかしその一瞬後に来るであろう痛みが全くやってこない事を彼は疑問に思った。
一瞬で斬られると痛覚を感じることが無いと聞いたことがあるが、身体を刺されれば確実に違和感になるはずだ。そう思ったフォロウは、おずおずと閉じていた目を開いてみる。
彼の目の前には先ほど剣を構えていたCAの姿は無く、白地に青紫色のCAの後ろ姿が映っている。大きく上下に動いていて、肩で息をしているように見えた。
右肩の部分から何かが飛び出ていて左右非対称になっている。その突起に目を向けるとそこで彼は絶句した。
飛び出ていたのは先ほどまで自分に向けられていた剣だった。
CAから突き出たそれは真っ赤な液体で所々が汚れ、その切っ先からはしずくが滴り赤い水たまりを作っていく。
「はんっ!熱いねえアンタ!まあオレも熱くなって、他人をかばって怪我するとか、らしくねえ事しちまったけど!」
目の前のCAから発せられる声。聞き覚えのある声にフォロウが反応しようとしたとき、突然ドン!!と大きな音が前から聞こえてきた。
音の正体を確かめようと彼が身体を動かすより早く、目の前のCAの前に立っていたCAが音を立てながら崩れ落ちていく。
自分が倒したCAの姿をもう一機のCA、ロックはかなり焦燥した表情で眺めていたのだった。