表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第四話 頂点者達
88/123

11th ACTION 狂宴は続く (再開の宴)

 戦う手段があるのかと聞いてきたリープの言葉に答える代わりに、リカルは背中に背負っている、ピンクとオレンジのツートンカラーのリュック型のラックケースから何かを取り出すと、それをリープに向かって放り投げた。慌ててリープが受け取ったそれは、金属繊維で編み込まれた黒っぽいグローブだった。

 全体は目の細かい編み込みの金属繊維で作られているが、所々にエネルギーの伝導体になる小さな輝石やレフステルの欠片が散らばっており、金属繊維に交じって透明なファイバーケーブル製のエネルギー伝達回路が織り込まれていた。そのグローブと一緒に投げられてきたのは、フックでベルトなどに吊り下げることが出来る小型の発電機だった。


「リンちゃん、これどうやって使うんだ!?」

「利き手にはめて、発電機についているケーブルの端子をグローブ手首のリングに開いている差し込み口に差してから電源入れて!」


 使い方をリカルから教わると、リープは右手にグローブをはめ、右腰の部分を少し変形させるとその中に発電機をはめ込み、グローブの手首にケーブル端子を差し込んだ。

 そして発電機を起動させると、流れてきたエネルギーを受けてケーブルや石が輝きだし、グローブ全体を淡い光で包みだした。


「リンちゃんこれ何?すごいエネルギーが出てるけど!?」

「レフステルのパワーを直接ナックルに伝達させるグローブよ!同質のエネルギーを直接ぶつけるからレフステルも破壊できるはずよ。ただエネルギーの安定化が未完成で長時間使用できないの!気を付けて使って!」


 リープに武器の説明をしながら、彼女はラックケースにもう一度手を入れるとごそごそと中をまさぐり、一つの拳銃を取り出した。

 普段彼女が使う空弾(エアロ)(ガン)魔法(マジック)(ガン)と比べて一回りほど大きく、大柄な体型の彼女でさえ片手で持てない。グリップに小型のマテリアルエンジンを装備しており、それがマガジンとなっている。


 リープに渡したグローブの仲間で、この銃もレフステルのエネルギーを直接弾丸にする高威力の射撃武器だ。ただしこちらも未完成品で、エネルギーの消費量や収束率が安定しないため、一つのレフステルで発射できる弾数は多くない。


「ずいぶんと用意いいな?」

「小遣い稼ぎに作っていたものよ。部品が足りなかったからジャンク屋のぞいて作ろうと思って持ってきたの。まさか未完成品を実戦に使うとは思わなかったけどね」

「そうか。ところでオレには何かないの?」

「ないわよ。この二つしか作ってないもの」

「はは、そこまで都合よくはいかないか。しょうがないな」


 リカルのそっけない返事に苦笑いをすると、ロックは粒子波動刀の発振器を持ち替えると、そのままAPRの後ろ側に開いている粒子の取り込み口に差し込んだ。

 小型の粒子波動エンジンをブレードの発振器に改造したロックの刀は、ロックが使うほかの道具に組み合わせることで性能の強化、変更をすることが出来る。APRに接続することで粒子波動エネルギーを弾丸にする武器に変えると、ロックはエネルギーをチャージし終えたAPRを構える。


「刀身出しっぱなしにするよりはこっちの方がエンジンの負荷が少ないからな」


 そう言いながらロックはリープとリカルの間に立つ。先頭のリープはグローブをはめた手を構えながら翼をおおきくひらき、その後ろでロックとリカルがそれぞれ射撃武器を構えて敵の動きを観察している。


「相手の目を逸らさせるから決めろ。最低でも一体は倒せ」


 ロックの声に了解とほかの二人が答えると、彼は早口でイグニッションスペルを紡いでいく。

 リープが少しずつCAに対して距離を詰めだし、ロックとリカルもリープに合わせて動き出す。CAの一体がロック達の動きに気付くと、そいつはほかのCAに信号を発して体勢を整えだした。


「エクセラレート!」


 CAが動き出したのを見て、呪文を完成させていたロックはドライブスペルを叫んで魔法を発動させる。途端にロックの姿が掻き消え、一瞬おいて彼はCA達の頭上にその姿を現せた。


 風の結界を身体に纏ったのちに風のチカラで一方向に結界を弾き飛ばす。ロックが言っていた様に本来は術者自身に効果を現す緊急離脱、奇襲用の短距離高速移動魔法であるが、応用次第では結界に包んだほかのものを遠くに飛ばすことも出来る。


 直線移動しかできないので、軌道を読まれれば簡単に迎撃されるという弱点を持つが、魔法の発動のさせ方によっては角度を付けて移動することが出来るので、今ロックが行ったように相手の頭上に移動するといった事も可能だ。


 突然目の前にいた人間が一人消えたため、CA達はその姿をさがして右往左往し始めた。その姿を上空から見ているロックは間髪入れずにAPRを構えると、攻撃力と弾速を最大にしてトリガーを引いた。

 粒子波動エンジンで性質が変化した弾丸は高速でCAに迫る。

 上空から突然接近する物体を認識したCA達はそれを危険物と判断してその場から離れようとする。しかし、CAの反応速度より速く飛来してくる弾丸をよけることが出来ず、頭の上から弾丸の雨に打たれてしまった。

 破壊するまでには至らなかったが、粒子波動弾は確実に彼らのボディを削って、身体の内外にかかわらず彼らを傷つけていく。


 CA達がひるんだ瞬間を突いて、地上の二人は地面を蹴って駆けだす。

 リカルは小走りで彼らの集団に近づくと両手で持ったレフステル・ガンを構えて、エンジンを狙ってトリガーを引く。その横をリープが大股で駆け抜け、彼女から見て右端の相手に狙いを定めると一気に懐に飛び込み、エンジンとエネルギー伝達回路の間あたりに右手の突きを埋め込んだ。


 上からの奇襲を受けたCA達は正面からの攻撃に一瞬反応が遅れてしまい、一機は燃料を撃ち抜かれ、砕けたレフステルが散らばった。

 もう一機はエンジンとエネルギーの伝達回路を傷つけられて機能停止、それぞれ行動不能にさせた。

 その勢いのままにリカルは追撃とばかりにトリガーを引き光弾を発射する。それに対して仲間を倒されたCAのリーダー機は、上からの攻撃よりも仲間を破壊した地上の攻撃を危険視し、すぐにほかのCAに信号を送ると、リカルとリープの攻撃を回避することに専念し始めた。


 相手が自分の攻撃を避けることに集中しだして、リカルはすぐに苦しい状況に立たされた。

 助けに入ろうとリープも動くが、彼女の方には接近戦用の武器を構えたスリムな体型のCAが二機、彼女に襲い掛かっていた。

 体型から予想できる、高い機動力と反応速度、そして二機の繰り出す一切の私情のこもっていない合理的な連携の前に、さすがのリカルも苦しめられている。


 自分から攻撃をするよりもリープを支援した方がいいと判断したリカルは弾けるように立っていた場所から移動をして、リープと交戦しているCAに対して発砲をする。

 リープの動きに合わせて弾を撃つリカルの射撃スキルは中々高く、即席ながらも良い連携が取れていた。

 しかし二人がかりで戦っても、結果は一機に浅い攻撃が一、二回当たっただけ。対してリープの方はCAが装備している電磁ナイフに身体の至る所を斬り付けられていた。

 身体を構成するレギオンメタルを制御するためのコアやエンジン部を守るため、肌や服といった表面上の傷は気にしていられない。そのため彼女の身体はあっという間にデコボコだらけのボロボロな姿になってしまった。


 もっとリープに近づこうとリカルが走り出すが、それを阻止するかのように残りのCAが彼女に向かって駆け込んでくる。リカルはリープの元に直接向かうのを止めて、CAに向き直るとレフステル・ガンを構えてトリガーを引く。


 一発、二発と光弾が飛び、一発目は駆け込むCAの足元の地面に当たって弾けるように消滅する。

 その光弾をよけるために少し大きな動作をとったCAに対して、そう動くように誘導したリカルは先読みで二発目を撃っていた。

 それは狙い通りに、初めの光弾をオーバーアクションで避けて態勢を直すことが出来なかったCAの胸部を撃ち抜く。光弾は命中したが、今回は相手との距離が離れていたため胸部の装甲板を溶かすまでに留まって、エンジンの方はほぼ無傷のようだ。


 損傷したCAに対して更に追い打ちをかけようと再びリカルはトリガーを引く。

 しかし銃口からは光弾が発射されず、一瞬銃口が光ったかと思うとその光が弾けて霧消していった。それを見てリカルはすぐにグリップのカバーを開くと、エンジンにセットしていたエネルギー源のレフステルが粉々に砕け散っていた。

 レフステルに内蔵されていたエネルギーを使い果たして弾切れ状態になったが、レフステルまで壊れるとはリカルも考えていなかった。

 やはりまだ改良がいると思いながら、リカルは手持ちのレフステルを取り出してエンジンに再装填をする。


 その間にダメージを受けたCAの代わりに別の機体が二人の間に割り込んで、リカルに向かって全力で疾走してくる。

 レフステル・ガンを再使用出来る様にしてからリカルが銃を構えるがCAの方が一瞬早い。敵CAが手にした長剣を伸ばしてリカルに強烈な突きを繰り出す。

 反応が遅れたリカルはそれをCAの腕装甲で逸らそうとする。だがそんな彼らの衝突よりも早く、上空から飛んできた風の刃がCAの背中を斬り裂いた。


 CAのPRSを使って全員の頭上にまだ浮いていたロックが、ウインドリッパーの魔法で地上のCA達に牽制をかけると同時に、危険状態だったリカルを助けた。

 背後からの攻撃を受け、CAはバランスを崩して走る速度を落とす。その余白を活かしてリカルは銃を撃つ。

 数発の攻撃を受け、その反動で身体をのけぞらせるがそれでも相手は倒れない。少し自分を落ち着かせてから、リカルは狙い直して銃を構える。

 しかし彼女がトリガーを引くより前に、CAは胸部から強烈な光を放ち、そのまま膝から崩れ落ちる様に前のめりに倒れていった。

 彼が倒れた後に立っていたのは、レフステルグローブの一撃で背中ごとCAのエンジンをぶち抜いたリープだった。


 彼女はロックの支援を受けて一瞬自由に動けるようになった時、自分が相手をしていた二機から離れると、リロードの最中で無防備状態をCAに襲われかけたリカルの元に全力で急行、そのままリカルを襲っていたCAを機能停止させた。

 その間にもロックは上空から魔法とAPRを駆使して地上のCAを相手にする。

 リカル達が合流したのを見ると、彼は誘導するようにCA達に攻撃を行い残りのCA達を一か所に集め、自分はリカル達とCA達が一直線に並ぶ場所を選んで着地、自分たちがCAを挟み撃ちにする陣形を取った。


 ロックとリカルが十字砲火になるよう飛び道具を構え、リープは拳を構えていつでもCA達に走り込めるよう姿勢を低くする。

 そうして三人はそれぞれ攻撃を開始しようとするが、一か所に集められた四機のCA達は、ロック達からの集中攻撃を予測すると彼らよりも先に動き出した。


 二手に分かれている三人に向かって二機ずつのCAがやってくる。

 CAの動きを見てリカルの前に飛び込んできたリープが正面から一機のCAの動きを止めると、リカルはもう一機のCAを牽制しながらリープの援護を行う。

 ロックは先頭を切って突っ込んでくる、先ほどリカルが胸部装甲を吹き飛ばしたCAをその場で攻撃しながら、その後ろについてやってくるもう一機の動きに注意を向けていた。

 攻撃が単調にならないようにロックは弾速や威力、弾の種類を変えていって攻撃を仕掛けるが、CAは無表情のままその攻撃をあざ笑うかのようにかわし続けていく。


 ロックとCAの距離が五歩ほどまでに近づいた時、ロックはAPRの構えを解いて格闘の構えに変える。

 そのままロックも歩を進め、あと一歩でぶつかり合う距離まで来た時、突然目の前のCAが地面を踏み切り大きく飛び跳ねた。いきなりの事でロックは反応が遅れてしまい、今度はロックが二機のCAから挟み撃ちされる形になった。

 二番目のCAが来るまで少し余裕があったので、ロックは飛び越えていった初めのCAに目線を送る。すると彼はロックを飛び越えていったあと、こちらには目もくれずにそのままどこかへと走り去っていく。

 そのCAが走っていく方向をみると、ロックの表情は一気に青ざめたものへとなっていった。


 駆け抜けていくCAの先。そこにはなぜか逃げ出していない町長達と、フォロウ達自警団が固まって立っていた。

 どうやらCAは彼らも敵と判断したようで、手ごわいロックより特に何もしてきて来ない方に狙いを変えたようだ。


「なんでまだ残ってるんだよあいつら!?死にたいのかよ!?」


 ロックが言葉と共に振り返って彼らの元に向かおうとした矢先にもう一機のCAが間合いに入り込んできて、手にした電磁ロッドを振り下ろして攻撃してくる。

 だがCAの足音が意外と大きかったため、彼の接近はすぐロックの気付くところとなり、ロックは電磁ロッドの動きに合わせて後ろに少し飛びのいてその攻撃をかわした。

 バックステップで攻撃を回避するともう一度、今度は飛ぶ距離を大きく取りながら身体をひねり、体の向きを前後入れ替えるとそのまま駆け出し攻撃してきたCAから逃げ、飛び越えていったCAを追いかけだした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ