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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第四話 頂点者達
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8th ACTION 長い一瞬(リカルの一瞬)

 ガーディアンに倒されたロックを管制室に運び入れたリカルは、応急治療用の端末を取り出し、まず彼の状態を調べ出す。その結果ロックは脳震盪を起こしている事が分かった。

 狙撃銃の直撃を受けてそれだけで済んだのは、彼が装備しているメットの性能が良かったためである。

 ひとまず命に別状がない事を確認出来たリカルはほっと一つ溜息をつく。一息ついたがすぐにリカルは端末のシステムを展開させるとロックに応急処置を施し始める。

 狙撃者の相手をし終わったリープが代わりに外の防衛に回っているが状況が不利な事には変わりが無いので、最悪の場合に備えてロックが動けるようにしておかないといけなかった。


 端末を操作しながら出っ張っている部分を手で引くとそこから先端に吸盤の様なものが付いている数本のケーブルが現れる。そのケーブルをロックの身体のいたる所に張り付けていく。

 それが終わると今度は端末につながった4本のアンテナを取り出し、それをそれぞれロックを囲むようにして四隅に立てていく。

 準備が出来た所で端末のスイッチを押して起動をさせると、アンテナからブーンと少し低い音が聞こえ出す。

 それと同時にアンテナで囲ったロックの身体が淡い緑色に変わっていき、彼の髪の毛や服から露出している毛並みがゆっくりと波打つように動き始めた。


 特殊な波動をアンテナで囲った空間の中に発生させ、空間の中にいる生き物の持つ治癒能力を波動で活性化、それと同時に治療効果のある薬剤を気化散布する事で傷や病気を治療する野外用の医療ユニット。

 脳震盪にも効くのかよく分からなかったが、使用してみると苦しそうにしていたロックの表情が目に見えるように落ち着いてきた。

 ロックの容体が安定してきたのを見るとリカルはロックの傍から立ち上がり、先程座っていたコンピュータの前に戻ってきた。これ以上は医療ユニットに任せておけばいいと判断したためである。

 再び席に着くリカルの隣では、先程からフォロウがプログラムのすりぬけに悪戦苦闘していた。待たせた事を謝ると、リカルは席について作業を再開させようとした。


 その時突然、部屋全体に振動が走り、中の者がひっくり返るほどの大きな揺れと衝撃が部屋の中の三人を襲った!

 突然の振動にリカルとフォロウは座っていた席から吹き飛ばされ、それぞれ床に身体を叩きつけられた。ロックはユニットに固定されていたので無事だったが、そのユニットが振動で外れそうになっている。

 何が起きているのか分からないが、外で異変が起きていると踏んだリカルはインカムでリープを呼び出す。


「リープ?リープ!?一体何がどうなっているの!!」

「どんな理由かよくわかんねえけど、ガーディアン達が一斉に柱を殴りつけているんだよ!止めたいけど数が多すぎてさっぱりだ!」


 通信を受けたリープが吠える。その眼前では大量のガーディアン達が階段や踊り場や地面に列を作って並び、規則正しいタイミングで一斉に柱を殴っている光景が繰り広げられていた。

 『管制棟をつぶしてでも侵入者を排除する』という命令プログラムに基づき、管制室への到達が困難と判断した彼らは管制室そのものを物理的に破壊するという行動に打って出た。

 突然の行動変化に驚き、次いで何とか止めようとガーディアンに突っ込んでいったリープだが、交差も出来ない狭い足場に並んで立っている彼らを一気にせん滅する事も出来ず、自分の力ではガーディアンを止める事は不可能だと判断した。


「とにかく早くそっちで強制停止させてくれ。悔しいけど俺の力じゃどうにもなんねえ!」


 泣き言を言って通信を切ったリープに渋い顔をしながら、何とか這って動く事が出来たリカルはそのまま席まで戻ると、席にしがみつきながらなんとか座り直し、座った所で自分の身体を道具入れから取り出したロープでイスに縛り付け、そのまま解析作業を続行した。

 振動を受ける度に手元が狂いそうになるが、その度に根性で正しいキーを無理やり押し、打ち込みがずれたプログラムは何とか修正を行い、自分でしながらどうしてこんな無茶な事が出来るのだろうと不思議がりながらリカルは先へと進んでいく。


 一緒に席から吹き飛ばされたフォロウも、大したけがをすることも無く無事だったが、大揺れする部屋の中でまた席に戻ってリカルの手伝いを行うのは出来そうにないと判断した。

 なので彼は治療を受けているロックの様子を見ていようとして、リカルがしたのと同じに這って移動していった。

 横になっているロックの身体は医療ユニットが固定をしていたので変な所に転がったりはしていなかった。しかし振動でユニットそのものが外れそうになっていたので、フォロウは急いで外れそうになっているユニットのアンテナを押さえつける。

 四本あるアンテナを交互に押さえて地面につけ直す作業は難しく、初めは普通に体を屈めて作業していたフォロウもだんだんとそれが追い付かなくなってきたので、フィールド越しにロックの上に覆いかぶさるように体を放り出すとその態勢のまま作業を続行していった。


 外のリープもただ事態を見ているだけというのは嫌らしく、上から止められないなら、と考えた彼女はもう一度空を飛ぶと通路の外から銃でガーディアンたちを無作為に攻撃し始めていた。

 持ち込んできた手榴弾や重火器を使って攻撃を加えていくとたくさんのガーディアンを巻き込んで倒していく事ができるが、それでも相手の数のほうが圧倒的に多いために決定打とはならない。しかし近づいて攻撃をすれば自分の攻撃で管制室を攻撃するかもしれない。

 そう思うとリープもなかなか思い切った攻撃に移れない。そうしてリープが悩んでいるうちにもガーディアンたちは攻撃の手を緩めることはなかった。


「あ、あ、ああー、やべえよやべえよこのままじゃ。一体どうすりゃいいんだよ!?」


 リープが外でうなっている時、ついに管制室の方で動きがあった。

 管制塔を一斉に攻撃するべく腕を振り上げたガーディアンたちの動きが一斉に止まり、次の瞬間この部屋にいた全てのガーディアンは活動を停止した。

 リカルがついにガーディアンのコントロールを掌握し、全員の機能を停止させることに成功したのだった。突然の出来事が目の前で起き、リープは一瞬何が起きたのかよくわからなかったが、直後に聞こえてきたリカルのミッションコンプリートの声を聞いてようやく状況を理解すると、リープは体全体を使って喜び、柱の周りを飛び始めた。

 作業を終えたリカルも、椅子とのロープを外すと両手を組んで上に上げて体を伸ばし、ややおいてから席を立つ。フォロウも振動がなくなったことに気が付くとやっと助かったことに気付いて、ロックを包んでいる医療フィールドの上で安堵しながらへたり込む。


「ちょっと」


 いきなり下から聞こえてきた声に驚いたフォロウがそっちを見ると、さっきまで眠っていたロックが目を覚ましていた。

 ケガからの回復と起き抜けが重なったのでその目はまだ開ききってはいなかったが、周りを認識することは出来るらしく、よかったと安堵の声を出しているフォロウに向かって言葉を続ける。


「下りて。なんだかよくわからねえけど、男に上に乗ってほしくない」


 予想外の発言にびっくりしながらも言われた通りにロックの上から体を起こすフォロウ。

 軽く引きながらも、ロックが目を覚ましたことをリカルに伝えると、リカルは席からすぐに立ち上がって小走りでロックのもとへとやってくる。

 これであとはお宝を探すだけ、みんながそう思ったその時、突然また管制室全体が揺れだした。突然の事態にリカルが外にいるリープを呼び出してガーディアンが動いているのか確認した。


「ガーディアンじゃねえ、さっきまでの壁殴りで柱がすでにやられていたみたいだ!あちこち亀裂が入りだしてる、すぐにそこから逃げろ!」


 リープの報告を聞いたリカルは、まだ動かせないロックや素人のフォロウを連れて下りることなど出来るはずがないのでリープに助けてもらおうとした。しかしリープが近づくとすぐに部屋の入口が崩れだした。

 リープは上手くそれを支えることに成功したが、そこから部屋に入ることが出来なくなってしまった。

 もうどうにもならないと判断したリカルは、ロックの治療を一時中断してフィールドを解除し、彼を腕に抱えて走り出そうとした。

 フォロウもそれに倣ったが、その瞬間に外壁の亀裂が一気に大きくなり、踏み出した床が抜けだした。

 とっさのことだったのでリープはその場を脱出、上空から柱が崩れていくのをただ見下ろす事しか出来なかった……。

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