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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第四話 頂点者達
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7th ACTION L.D.C 遺跡調査(危機)

 部屋から外に出たロックは、ガーディアン達を迎え撃つ準備を始めた。

 ポーチの中から小さめのボトルを取り出すと、少し階段を下っていく。

 階段は柱に沿ったらせん状になっており、柱の角の部分は踊り場になっている。階段を下りて二つ目の踊り場に来ると、ロックはボトルの中身を踊り場に垂れ流し始めた。

 ボトルの中には少し粘度のある液体が入っており、それが垂らした場所から踊り場全体にまんべんなく広がっていく。


 中身を撒き終えたロックが上に戻ろうとした時、急に足音の間隔が早くなり音も大きくなる。ロックが下を見るとすでにすぐ下の踊り場までガーディアン達が登って来ていた!

 慌ててロックが上に戻ると先頭を登っていたガーディアンが階段を駆け上がってくる。

 駆け込んで踊り場を曲がろうとしたその時、ガーディアンは先程ロックが撒いた液体に足を滑らせ、勢いがついたまま防護用の柵に激突。その勢いに耐えられなかった柵は根元から折れてしまいガーディアンもろとも下へ落下していった。

 先頭のすぐ後ろを走っていたガーディアン達の何体かも液体に足を滑らせ、壊れた柵の場所から階段の外へと落ちていく。


 前方の仲間を見て危険を察した後続のガーディアンは走るのを止め、ゆっくりと踊り場を踏みしめて登ってこようとする。

 しかしそこに、一つ上の踊り場でAPRを構えて待っていたロックが射撃。二発のプラズマ弾が踊り場に着弾する。ガーディアンは攻撃が外れたと認識したが、異変は直後に起きた。

 なんと、踊り場が火の海になったのである。炎の熱は意外なほどに高温に達し、千度近い温度に耐えられるガーディアンの装甲を溶かし始めた。

 高温を感知したガーディアンは逃げようとしたが、すでに彼の内部部品は高温によって致命的なダメージを負ってしまい満足に動く事が出来なかった。


 そのガーディアンに向かってロックが攻撃を加える。何とかしようとするガーディアンは残った力を振り絞って動こうとするが、もがいている内に足を滑らせ、彼は前の仲間たちとは違い、階段の下側に向かって転げ落ちていった。

 突然の事に何体かのガーディアンが巻き込まれていき、更に階段を上ってくる数を減らしていった。

 ロックが踊り場に撒いたのは、先史文明の特殊金属を錬成するための炉に使う、冒険者特製の油だった。

 油なので床に撒けば滑りやすくなるのはもちろん、一度火が付くと数千度の高温を発して燃え上がる。最低でも二千度以上の火に入れなければ溶けない金属達を鍛えるための炎を作るための火種なので、その効果はバツグンだった。


 ロックはその油を昇ってくる途中の階段にもばら撒き、今立っている踊り場にも撒くと上に駆けのぼり階段の上で方向転換、階段の下に向かって構えていた。

 一方ガーディアン達もただ黙って炎を見ていた訳ではない。先頭のガーディアンが手にしている武器を振るって必死に消火活動を試みるが、燃えているのが液体のため火元を直接取り除くには効果が薄く、目に見える結果は出なかった。

 その時消火活動をしていたガーディアンに後ろの方から何かが届いた。それはガーディアン達が使う盾だった。耐熱処理も施されているその盾を踊り場に置き、その上を歩く事で彼らは何とか前進することが出来た。


 こうして行進が再開されたが、階段に撒かれた油に足を取られるため、その速度は早くなかった。滑って転んでその場で突っ伏すガーディアンもいるが、そんな彼らを後続の者は足場の代わりとして上から踏みつけ前進を続ける。その行進の音を聞いていると、さすがのロックも落ち着いてはいられなくなっていた。


 逃げ場のない狭い一本道。仲間のいる部屋への入り口を守っているため敵を通さないように必ず倒していかなくてはならない。

 その思いがロックの中でプレッシャーとなっていき、シッポを無意識に大きく左右に振っていた。

 壁際に立って状況に構えていたので、振っているシッポで壁を叩く形になっている。そしてその音は壁を伝って部屋の中へと響いていく。


 落ち着かないロックが表でじりじりとした時を過ごしている時、部屋の中ではリカル達がコンピュータを前に悪戦苦闘を繰り広げていた。

 リカルの推察通りここにガーディアンの制御システムがあったが、さすがに重要な防衛システムのため、データの中に入る事が出来なかった。

 今リカルは関連する別ファイルを経由してシステムに侵入を試みている。フォロウも何とかリカルのサポートに回っているが、彼はここまで難しいデータを扱った事が無かったため、リカルよりも作業速度が遅かった。

 それでも触り続けた事により、データのパターンや組み方の癖を理解してきて速度を順調に早くしていく事が出来たのは本人の才能によるものだろう。


 先程から聞こえ始めた壁をトントンと規則正しく打つ音、表でロックが出している音に心理的に急かされ、リカル達も余裕が無い中での作業を強いられる。

 関連ファイルの中からデータを解析し、これと思われる物の中に入り込む。説明は簡単だが不正方法での調査のためいつセキュリティにかかるか分からない。そんなデータの確認作業を数十回と繰り返す。

 十分経ったか二十分経ったか、ハッキリとした時間の分からない中総当たりの作業を黙々と繰り返し行っていく中、ついにリカルがガーディアンの指揮系統に関するファイルにたどり着く事が出来た。


「あった!ここから入りこむ事が出来れば……。フォロウ!ルートを送るからこのファイルに入ってきて!」


 目的のファイルを見つけ歓喜の声を上げるリカル。すぐにフォロウが使っているコンピュータにデータを送信を行い彼をファイルへと誘導をすると、フォロウにサポートを頼みリカルはファイルの中へと進んでいった。

 結構時間がかかったため、外で戦っている二人の事が気になってくる、その不安に駆られる想いがキーボードを叩く指に力を入れさせる。

 そうしてリカルがデータの解析を半分近くまで進めた頃、彼女のインカムから通信が入った事を伝えるアラームが聞こえてきた。呼び出しに出ると通信の主はロックだった。


「こちらロック!リカル、そっちの進み具合はどうなってる!?」

「ロック?こちらはそろそろ六割まで進行する所よ。そっちはどうなっているの?」

「どんどん昇ってきてヤバい!一本道だから対処は簡単だけどそんなに長くは(さば)けない!リープは近くにいると思うけど、どうなっているかはきちんと確認出来ない!とにかく急いで!」

「そんなに急かさないでよ!!手伝ってもらっているけどこっちはセキュリティのすりぬけが大変でどうしたって時間がかかるんだから」


 金属と金属がぶつかり合う甲高い音。銃撃の轟音、床を踏みつけ、走る足音。

 ロックの言葉に混ざって聞こえる無秩序な音はさながら狂想曲(カプリッチオ)の様に、部屋の外の世界を彩っている。

 急ぐ必要のない状況ならむしろその音を聞きながら高みの見物としゃれこんでみるのも粋なものだろうが、さすがに今はそんな事やっていられないので、リカルも気持ち指を動かす速度を上げ出した。


「もういい加減打ち止めに……」


 何かを呟いたロックだったが、その声が最後までリカルに聞こえる事は無かった。

 ガンと、激しく何かがぶつかる音がインカムから聞こえたかと思うと、今度は壁とインカムからドン、と何かが打ちつけられた様な大きな音が聞こえてきた。

 そして、その音を境にロックの声がインカムから聞こえてこなくなった。


「ロック?ロック!?ごめんフォロウ、外の様子見てくるからここお願い!」


 ただ事ではない事を察したリカルは席を立つとすぐにドアを開けて外に出る。外にでてすぐ目についたのは、正面を向きながら壁に不自然な格好でもたれかかっているロックの姿と、そのロックに向かって剣を振りかぶっているガーディアンの姿だった。


 それを見たリカルは、まるで何かに弾き飛ばされた様に動きだした。

 腰のホルスターから空弾銃を引き抜くと、ガーディアンの剣、腕、腕と胴をつなぐ関節を正確に打ち抜く。

 剣と腕への突然の攻撃を受けガーディアンが体勢を崩したのを見るとそのまま走り込み、姿勢を低くしての体当たり。ガーディアンを階段の下に突き落とすとさらに追撃とばかりに手榴弾を放り投げた。

 落ちてきたガーディアンと手榴弾の爆発に巻き込まれた後続のガーディアン達が階段を登れないのを確認すると、リカルはすぐにロックの側まで近づいた。

 ピクリとも動かないでいるが、ロックの顔に耳を近づけると、うう、とか細い呻き声とペースの乱れた荒い呼吸音が聞こえてきた。とりあえず生きている事を確認したリカルはロックの背面に回り込むと彼の脇に腕を回し上半身を抱え起こすとそのまま後ろ向きに引きずりだした。


 ロックをその場から動かした直後、大きく咳き込んだかと思うと彼は口から胃の中身を吐き戻し、自分の胸元に嘔吐物をぶちまけた。

 驚くリカルが足を止めようとした時、どこかから風を切る大きな音が聞こえてきたかと思うと目の前を光の弾丸がかすめていくのをリカルは見た。

 どこか見当違いの方向へ飛んでいったが、明らかに攻撃である。ロックの事も気がかりだがこの場に留まる事の危険を感じたリカルは、ロックに申し訳なく思いながらも移動速度を上げて部屋の中へと急いで戻っていくのだった。

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