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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第四話 頂点者達
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7th ACTION L.D.C 遺跡調査(罠)

 壁や床に穴が開くとそこから多数のガーディアンが現れる。

 言葉を発する事無い彼らは部屋にやってくると、招かれていない侵入者たちに対し、その身に持つ武器を構えて近づいていく。

 初めは歩きの移動だがその速度は徐々に速くなっていき、十数秒後になると先頭集団は侵入者たちを押しつぶすかのように高速で走り込んできた。


 接近戦用の剣や槍を持ったガーディアンがロック達に飛びかかった時、数条の閃光と轟音が鳴り響き彼らは逆方向へと飛んでいってしまった。ロック達の反撃である。


 強烈な光で目が見えなくなってしまったロックにリカルは声を張り上げると、ロックはすばやく腰から杖を引き出し高速で呪文を唱え、プロントサンダーの魔法を発動させて眼前のガーディアンをなぎ払った。

 リープも目の光学センサーを光でやられてしまったため、代わりに熱源センサーと音響センサーを駆使してガーディアンを察知すると手にした銃を撃ちまくっている。

 一方リカルはエレベーターの仕掛けを見たときに何かしらのトラップがあると感じた為、何かでこちらの動きを封じ込められた場合の事を考えて、とりあえず目と耳を閉じて光と音に対しての防御をしていた。

 防御後に閉じていた目と耳を開くと先程まで無人の部屋に大量のガーディアンが湧き出しており、周りを見ると自分以外の皆はトラップにかかって目を押さえて呻き声を上げていた。


「みんな大丈夫!?ガーディアンが来るよ!迎撃準備して!」


 全員に檄を飛ばすとリカルも銃を構え、チャージユニットを開いて空気を取り込み始める。そしてガーディアンが走り込んできた時を狙うと集団の先頭に向かってトリガーを引いた。


「吹き飛びな!ブラス・トーネード!」


 彼女がトリガーを引くと、チャージされた圧縮空気が渦を巻いて撃ち出された。それは小型の竜巻となり、先頭のガーディアン達を吹き飛ばして更に後ろの連中にも傷を負わせ、一直線に飛んでいった。


 こうして奇襲を受けてしまったがリカル達は何とか戦う事が出来た。ロックは視界を完全に奪われてしまったため初めの魔法以降は目立った事が出来ず、リカルやリープに頼りっきりになっていたが、徐々に閃光から視界を取り戻していくと自分達の状況がやっと見えてきた。

 そして先程から違和感を感じていた右足に目を向けると、視界を奪われたフォロウがうずくまって足にしがみついているのを見つけた。半ば呆れながらもロックは正面に向き直ると、大きな声でフォロウの名前を呼び続けた。


 ロックの声に気がついたフォロウが閉じていた目を開けてみる。強烈な光で奪われた視界も何とか元に戻り、辺りを見渡すとまず目に入って来たのはしがみついていたロックの右足だった。少し気恥ずかしそうにしていたが、先程から聞こえている金属音の方角に目を向けると驚いてその場から飛び起きた。


 ようやく立ち上がったフォロウに三人が口々に声をかけ、それにフォロウも答えていく。

 全員が動けるようになった事を確認してから、リカルはこの場を離れる事を提案してきた。今いるエレベーターが壊されでもしたら帰るのが困難になるからだ。


「でもどこへ行く気だ?この部屋以外を探す時間も無いよ」


 攻撃をしながらも移動のための体勢に身体を持っていくロックがリカルに質問をする。リカルは特に考えるでもなくロックに答える。


「ここはCAの工場みたいだからどこかに管理室があるはずよ。そこからならガーディアン達の動きを止める事が出来ると思うの」


 言われて周りを見渡すと、確かに暗闇の中に作りかけや完成品のCAがたくさん部屋の中に転がっているのが見える。

 説明を聞いた全員はそれを信じてエレベーターから動きだし、スポットライトの中から暗闇に向かってとびだした。

 しかし移動を始めてすぐ、今度はリープが何かの気配に気がついた。それが何かを確認する前に嫌な予感を感じた彼女は、すぐ全員に身を屈めるように叫んだ。

 突然の事に驚いたがそれでも皆が反射的にしゃがむと、その頭の上を何かが高速でかすめていった。それが何かを確認するまでも無く、その場からすぐに走りだしていた。


「まさか狙撃手(スナイパー)まで配備されているなんて!」

「どうするんですか!何とかしないと反撃どころじゃないですよ!」


 フォロウに言われるまでも無いが、撃ってきたと思われる高所を確認してみても何も見えない。そしてそれを嘲笑うかのようにスナイパー達はこちらに攻撃を仕掛けてくる。

 どうやら光の屈折を利用して姿をくらましているらしい。


「姿が見えないんじゃどうにもできないよ!誰か何とかできないの!!」

「リープ、見えるか!?」

「熱センサーで何とか捉える事が出来た。戦う事は出来るがどうするよ?」

「じゃあお願い、倒してきて!アタシ達の方は自分で何とかするから!」


 リカルの指示を受けるとリープは軽く返事をして精神を集中し始めた。身体データのロードを行い、それに合わせてレギオンメタルを変化させ、リープは自分の身体を変身させていく。

 いち早く変化していった場所は背中から生えている翼で、いつものものよりも二周りは大きなものになっていく。

 翼の付け根に近い部分には二門のジェットブースターが新しく作られ、全身も少し大きくなる。手の甲には鋭い爪が生えてきて、指とは独立した形になっている。

 これがリープの戦闘形態の二つ目、空中戦を主体とした近接戦闘スタイルである。


 翼をはばたかせ、背中のブースターに火を入れると、リープの身体は地面から離れて宙に浮きはじめた。飛んでくる弾丸が身体を何度もかすめていくが、そこらの金属より硬い身体と翼の前にはさしたる脅威でも無かった。

 そして予備動作が終了したリープがブースターの出力を全開にすると、彼女の身体は部屋の天井近くまで飛び上がり、部屋を縦横無尽にと駆け抜け出していた。


 光学(ステ)迷彩(ルス)を張って室内上部の作業路から狙撃を行っていたガーディアン達は突然空を飛んだリープに若干の動揺を覚えながらも、その冷静な頭脳をすぐに落ち着けるとターゲットをすぐにリープに変更して彼女に集中砲火を浴びせる。

 相手の動作が見えないリープは、かなりスレスレな避け方をしながら狙いを定めて突進する。途中で2、3発ほど弾丸が身体に当たったが、直撃弾では無かったのでそのまま無視した。

 そしてターゲットにしたガーディアン近くの通路上に乗るとそのままブースターを吹かせたまま直進、若干の動きを付けて相手の狙いをブレさせながら懐に潜り込むと右手を上に振りかざし、左手は下に構えるとそのまま振り下ろしと振り上げを同時に行い、甲部分のツメでガーディアンの身体を切り裂いた。


 片手に四本、計八本のツメにボディを深々とえぐられ、それでも応戦しようと武器を持っていない方の腕を振りかざすが、一瞬動くのが早かったリープが繰り出した右手のストレートで急所を撃ち抜かれると、ガーディアンはその場で機能を停止。ステルスが切れて姿を晒すと同時に仰向けになって地面に崩れ落ちた。


 相手ガーディアンの動きを止めた事を確認するとすぐにリープはセンサーを使って次の目標を探しだした。その時ガーディアン達は意外な事に全員ステルスの機能を停止させ、銃口をリープに向けて発砲を再開し始めた。

 実はステルスは機能を展開させている間はガーディアンの全身からかなりエネルギーを消耗させる。そのためシステムを切る事で全身にエネルギーを回して身体の全能力をスペック値に戻したのだった。


 いきなりの命中精度の上昇や先読みの上手さにリープの被弾数も増えていったが、それでも致命傷は避けながら部屋の中を大きく飛び交い、隙を見ては接近、攻撃を繰り返す。

 元々スペック的にはリープの方が上であるので勝つこと自体に問題は無い。それにこうしてスナイパー達は全てリープに釘付けになっているので彼女の仕事はほぼ完了していると言ってもよかった。それでも後の憂いを断つ意味も込めてリープはスナイパー達との戦いを繰り広げ続けていた。


 一方地面を走っているリカル達はとにかく管理室を探し続けて戦っていた。初めは部屋の端にあるかもしれないとの事で壁際を探していたが、壁伝いに半分以上走った所でそれらしい部屋が見つからず、残りの方を見てもドアなどが確認できなかったので、今は部屋の内側を探して走っている。

 CAの製造ラインや完成品を置いている保管場が細く広く道を作っている部屋の中を三人で行動しているが、実際に戦えるのはロックとリカルだけ、更にガーディアン達は道の奥や曲がり角から現れ、こちらの存在に気が付くとわき目もふらずに襲いかかってくる。

 地上でリカルがフォロウを守りながら戦っている時、ロックは製造ラインのコンベアに飛び乗るとそのまま機械を足場に高い所へ昇っていき、頭上からガーディアン達をAPR(アップル)で撃ち落としていった。


 敵の群れを一つ片づけてから、他の場所からガーディアンがやってこないかロックは辺りを警戒し始めた。

 近くを見渡してから少し遠くに目をやり、部屋の中をぐるりと見渡してみると、一本の部屋の柱が目についた。部屋にある他の柱と見た目は同じだが、その柱には外側を伝って昇っていけるらせん状の階段が付いていた。階段は上にと続いており、途中から無くなっている。


「リカル!あっち!!」


 ロックの呼ぶ声を聞いてリカルが上を見ると、APRで砲撃を行っている彼が自分のシッポで先程見つけた柱を指している姿を見た。

 何かと思ってリカルがシッポの視線を移すと、彼女も彼が言いたい事が分かった。

 リカルは空弾銃で前の通路にやってきたガーディアンを撃ち倒していくと、フォロウの手を引いて走り出す。ロックも高所の足場からコンベアに下りると、二人より高い位置を走り、複雑になっている通路を上から見下ろしてリカルに道を教えていった。


 ロックの案内で何とか三人が柱に近づくと、示し合わせたかのようにガーディアン達が徒党を組んで待ち構えていた。リカルは下から、ロックは機械の上からそれぞれ飛び道具を構えて彼らを攻撃してみるが、当たった何発かで動きを止めてもすぐ別のガーディアンがその穴を埋める様に立ちふさがるため、階段の上り口にたどり着くことさえ出来ない。

 その時突然こっちだとロックが声と身振りで二人に合図を送る。階段の上り口から少し離れ、階段の途中辺りの真下に立つと、ロックは腰を屈めて両手を組んだ。


「こっちだ!こい!!」


 叫ぶロックが何をしようとしているか察したリカルは前を向いたまま大声でフォロウに叫んだ。


「あのまま上の階段に飛び移るわよ!出来る!?」

「飛び移るって、飛び乗る気ですか!?無理無理、私には出来ませんよ!」

「ええい、これだから一般人は!」


 そう言うとリカルはフォロウの少し後ろに下がるとおもむろに彼を足元からすくいあげ、お姫様だっこの要領で抱きかかえた。

 突然の事で混乱するフォロウに暴れないでと一喝すると、リカルはそのまま走る速度を上げていきロックの目の前に駆け込み、組んでいたロックの両手に足をかけるとそのままの勢いで大ジャンプ!

 自分と同じくらいの背丈をしている青年を腕に抱えたまま、リカルは十メートル近く上にある階段の上に飛び移った。


 一方下の方で構えていたロック、二人まとめて打ち上げた腕はさすがに痛かった様で上を見ながら軽く腕をさすっていた。

 二人が無事に上に登った事を確認すると、ロックは右の腰にさげていた拳銃を取り出した。形としてはよく出回っている持ち(グリップ)部分に弾倉(マガジン)をセットするオートマ型に似ているが、この銃の弾倉は上後部にスライドさせて取りつける形になっている。


 銃に装備している弾倉を確認してからロックは銃を天井に向けて引き金を引く。

 銃から放たれた弾丸は真っ直ぐに天井めがけて飛んでいくが、途中で先端が別れるとそのまま数発の弾丸が広い範囲に拡散して飛んでいく。

 その弾丸が天井に届くと、磁力線を持つ特殊なモリ型の弾は天井に食い込んだ。その弾にはワイヤーが付けられており、ロックの拳銃に付けられている弾倉と繋がっている。

 弾丸が天井に付いた事を確認すると、ロックは引き金の隣に付いているスイッチを押した。銃内部のモーターが回りだし、ワイヤーを高速で巻き取りだすと、ワイヤーのもう片方を持っているロックの身体を宙に浮かびあがらせた。


 下からジャンプで飛び上がり、階段に綺麗に着地したリカルは抱えていたフォロウを素早く地面に下ろす。そして早く上に上がるよう急がせる。それと同時にすぐ隣から「お先に」と言うロックの声が聞こえた。

 不意をつかれたリカルが驚いて階段の外に目を向けると、ロックが上に登っていく姿を見た。あんな事も出来るんだ、そう思っていたリカルの耳にまた別の音が聞こえてくる。金属質の物同士がぶつかり合う音のようだった。


 ゆっくりしすぎた!そう感じたリカルがフォロウを急かしてコントロールルームへと向かって走り出したのと同時に階段の下からガーディアン達が上がって来た。

 階段を上がるだけならフォロウも早く、ガーディアン達は意外に昇りの動作が苦手らしいので二人はすぐに距離を離す事ができた。そのまま柱に沿ってらせん状になっている階段を何段も何段も駆けあがっていき、ついに最上階までたどり着く事が出来た。


 最上階には柱をそのままくりぬいて作られた様な部屋があり、たくさんのガラス窓がはめ込まれていた。

 扉を開けてその部屋に飛び込むと、そこには先程ワイヤーで二人より一足先に昇っていったロックが先客として部屋の中に立っていた。


「お早いお着きで、随分楽してきたみたいね?」


 皮肉たっぷりなリカルの言葉に声を掛けにくいといった曖昧(あいまい)な笑みを浮かべると、ロックはそのまま二人の方に歩き出し、二人の側を通り抜けようとしていった。


「表を見張っているからここはお願いね」

「しっかり守ってよ。ガーディアンはなるべく早く止めて見せるから」


 ロックを送り出すと、リカルはフォロウについてくるよう声をかけながらオペレーター席の一つに腰をかけ、目の前のコンピュータを睨みつける。


「フォロウ。あなたコンピュータ扱える?」

「自分のコンピュータも持っていますから、少しは出来ます」

「じゃ、こっち手伝って。アタシの隣の席使って」


 リカルの言葉に従うと、フォロウもオペレート席に座り机のコンソールに目を配った。作業を始めた二人を見てから表に出ようとして、ロックは思い出したかのようにリカルに声をかけた。


「さっきのリカルはすごかったニャー。CAやサポートマシンを使わないで同じくらいの背丈の人間抱えてあの高さまでジャンプするなんて、オレでも簡単ニャ真似出来ないよ」

「鍛えているからね。見た目以上に筋肉あるから、ロックを抱える事も出来るわよ。今度してあげましょうか?」

「ハハハ、そのうち機会があったらな」

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