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F/A フリーダム/アドベンチャー  作者: 流都
第四話 頂点者達
67/123

4th ACTION ライディング・レース!(熱戦・激戦・フィールド戦線)

 わき上がる歓声、響き渡るエンジン音、肌を焦がす熱気と怒号、ぶつかり合う選手たちの意地と本気!


 途中でアクシデントがあったものの、ロック達は無事に目的地に着く事が出来た。

 ギルドオフィスで聞いた話ではロック達の探している傭兵チーム、エイペックズは今日のメインイベントであるRSの無差別級レースに出場するとの事である。本来ならレーススタート前に関係者に会っておいて話が出来ればよかったのだが、タイミングが合わなかったため、彼らはスタジアムの外にいる。


 このまま待っていればいいのだが、早く会って話をしたいという考えと、どうせ来たのならレースも観戦していきたいという野次馬的思考の元、彼らは競技場の選手入場口にやって来ていた。

 入り口には選手以外が入らない様出入りを見ている警備員が一名。


『御苦労さまでーす!』


 警備員に挨拶をしながら側を通り抜けようとする二人。当然警備員が黙って通す訳が無かった。


「ちょっと君達、ここから先は関係者以外立ち入り禁止だよ」

「あ、ごめんなさい。僕達こういうものです」


 警備員に呼び止められると、すかさず二人は自分達が身に付けているライセンス・リングを見せた。

 ロックの薄緑色とリカルの赤色のそれはアドベンチャラーズギルドが発行しているライセンスであり、冒険者の証である。二人のライセンスを見た警備員は、先程から同じライセンスを見ていたので納得をしてから姿勢を正した。


「エイペックズのブースはどこになりますか?」

「W-3になります。ご健闘を」


 場所を聞いた二人はありがとうと警備員に挨拶をかわすとそそくさとその場を立ち去って行った。

 傭兵であるエイペックズはいわば同じギルドの仲間の様なものであるため、ライセンスを見せられた警備員は二人もエイペックズの関係者だと思ったのだった。とはいえここまで上手くいくとは当の本人達も考えてはいなかったが、ともかくこうして二人は競技場の中に入る事に成功した。


 一方現在レースを行っているエイペックズは、上位争いに食い込むことは出来ているが中々順位を上げる事が出来ていなかった。

 対戦相手達をかわして順位を上げる事が出来ても、すぐに他のライバルに追い抜かれてしまう。しかもそれは一人では無く複数のライバル達が示し合わせるかのように同時に攻めてくる事もある。

 この上位陣の執拗な妨害のためプライドは順位を上げる事が出来ず、またライバル達のその走りをピット側から見ている他のエイペックズメンバー達も冷静でいる事が出来なかった。


 屈強な他のライバル達に比べ体格で差が付けられている少年のプライド。

 ライバルの一人がコースの端に追いつめ、もう一人はプライドの前を走って彼が追い抜きをかける事が出来ない様に追いこんでいる。

 しかし執拗な攻撃を受けてはいたが、プライドはこの位でへこたれるタイプでは無かった。一瞬急ブレーキをかけてSボードの速度を落とし、後ろに重心を乗せるとそのままスライドターン、ライバルの詰め寄りを後ろからかわしコースの内側に戻るとその勢いで出力を全開、自分を妨害してきたライバル二人を抜き去る事に成功した。


 しかし抜かれたライバル達も黙っている訳ではなく、それぞれのボードの出力を上げるとプライドを追いかけはじめる。

 更に彼らから逃げるプライドにとって難関とされるのが、トップとの間にいる他のライバル達の妨害であった。


「やっぱり他のライダー達がプライドの邪魔をしてきているよ!」

「トップの奴、町長の所にいるライダーだよ!大人しいと思っていたらこんな事だったなんて」

「町長め!なにか邪魔をしてくるんじゃないかと思っていたが、よりにもよってレースにズルを仕掛けるだなんて!」


 そのレース展開を見て、レースをしているプライド以上に熱くなっているのが彼の所属しているエイペックズのメンバー達である。彼らにとっても今日のレースは勝利を収めたい大事な一戦、そんな彼らにインチキレースを仕掛けてくる相手達に怒りがこみ上げてくるのは当然の事だった。


「……どうやら取り込み中の様だね」

「そのようねぇ……」


 そんな彼らをブースの入り口から見ている影が二つ、先程建物の中に入って来たロックとリカルである。

 選手入場口から入ってお目当ての場所はすぐに見つかったが、開いている入り口から中を覗いてみると何やらただ事ではない雰囲気に包まれていたため、中の人達に声をかける事が出来なかった。

 仕方が無いので一度出直そうと、その場を離れようとした時、ロック達の肩を後ろから誰かが叩いてきた。

 びっくりして二人が振りかえると、ロック達と同じ年と思われる少年が、二人の事を不審者を見る様な目で見ていた。そのままその場の空気が固まり一瞬そのまま止まっていたかと思うと、少年はおもむろに二人の手首を掴み取り、二人を引き連れてそのままエイペックズ達のブースの中へと入っていった。


「なあ、見慣れないのが二人入り口の所でこの中覗いていたけど、誰かの知り合いか?」


 その一言でブース内の全ての目が二人に向いた。その場の全員が放つ殺気と猜疑の視線を一身に受け、さすがのロック達も曖昧な笑いを浮かべるしか無かった。


「お前ら何だ?関係者だけのブースに入りこんだりして?」


 少年の一人がロック達に声をかける。ロック達と同じ年か少し上くらいの少年で、髪の毛を逆立てて固めていた。

 トリ族の少年だが彼は(ペン)(ギン)系であり、白と黒の羽毛が目立つよう、鮮やかな黄色を基調とした服装でまとめている。

 ひとしきりこちらの様子を見ていた少年は、ロック達の目の前まで近づき、抑揚の無い低い声を作って話しかけてきた。


「まさかお前達、市長の差し金じゃないだろうな?そうだとしたらただじゃおかねえぞ!目的は偵察か!?」


 いきなり訳の分からない言いがかりをつけられ、これにはロック達も言葉を失ってしまった。

 元々この二人も感情の起伏は激しい方なので、文句を言われれば言い返すし相手に掴みかかって乱闘になる事もある。しかし今回ロック達は彼らに仕事を譲ってもらえるよう頼みに来た訳なので、いきなり関係が悪くなる様な行動は取る訳にはいかなかった。

 そのため目の前にいるペンギンの少年に言いたい事を言わせながらも、ロック達はどの様に話を切り出せばよいか判断しかねていた。

 そんな時、別の方から聞こえてきた声が、ロック達にとって全く予想もしていなかった助け舟となったのだ。


「あら、あなた方は。またお会いになるとは思いませんでした」


 声のした方に顔を向けると、そこにいたのは先程車が道の窪みにはまって動けなくなり、困っていた所を助けた少女だった。

 ここにいるということはエイペックズの関係者だったんだとリカルは少女の姿を改めて見つめていた。とはいっても意識して行っていた事では無かったが。


「その人達は大丈夫だから自由にしてあげて」

「リーダー、そんな簡単に決めていいのか?」

「さっき助けてもらった人達だけど、ボクらの素姓を知っていた訳では無い様だから、あのオヤジに雇われているって事ではないでしょ」


 ただの関係者、そういうものでも無い事を知るとリカルは先程以上に驚いていた。

 年端もいかない子供のころからハンターをしている人達も確かにおり、リカル自身も幼いころからハンターとしての修行や簡単な仕事を自分でこなしてきた事はある。

 しかしそれでも明らかに自分より年下の少女が傭兵チームのリーダーとして引っ張っているという事実は驚愕の部類に入る事であった。


 しかしリカルもこの道でかなり生活してきたハンター、驚きはしたがそれからもすぐに立ち直ると、気を取り直してエイペックズのリーダーと称している少女に数歩近付いた。


「久しぶりというべきか初めましてというべきか悩む所ね。とにかく改めまして、アタシはリーンカーラ。ハンターよ」

「世間は狭いという事ですね。ボクはアリシア・スターレイ。傭兵チーム、エイペックズのリーダーをさせてもらっています」

「ホントにね。まあ、そこんところは縁があったという訳で。実はアタシ達、エイペックズにお願いしたい事があってここに来たの」


 それぞれお互いに挨拶を交わし、リカルがそのまま交渉に入る。

 しかし、具体的な内容を話そうとした時、一際大きな歓声が会場から聞こえてきて、次の瞬間ブースにいたエイペックズの隊員達が抗議の声を上げ出した。


「どうしたの!」


 アリシアが声を上げながら外を見ると、彼女の顔色がみるみると変わっていくのが見て取れた。

 リカルも彼女に続いてレース場を見ると、走行中のライダーのSボードから煙が立ち上っているのが見えた。それがエイペックズのライダーだという事は、周りの反応ですぐに分かった。


「次のピットで入れないと。すぐにプライドに連絡して!」


 アリシアの鋭い指示を聞いたオペレーターはすぐにプライドへ連絡を入れる。

 ピットゾーンにはメカニック達が集まりすぐにでも作業が出来るように準備が進められている。

 その中にはリカルが先程出会った、車の中で運転をしていた少年もいたが、今は目先に緊急事態が待ち構えているため彼の事は大して気にも留めなかった。


「ロック、あのボード大丈夫かな?」

「すぐ止まったり、爆発したりはしないだろう。乗り手も相当なレベルらしいからピットまでは帰れるはずだ」


 皆の後ろで小声で会話をしていた二人だが、機械の心得もある二人は話をしながらも同じ事を考えていた。


あのボードはすぐに修理する事は出来ないと……。

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